北尾吉孝日記

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今週月曜日の琉球新報社説「65歳雇用義務化 失策の責任転嫁許されない」にも下記記述がありますが、私に言わせれば「企業に対し、希望する人、全員を65歳まで雇用するよう義務づける」法律によって問題解決を図ろうなどというのは全くナンセンスであると思いますし(※1)、企業活性化を齎す上で最も重要な要素の一つである「自由」を蔑ろにするような考え方をするからこそ所謂「企業維新」、言い方を変えればイノベーションというものが日本では起こってこないのだと思うのです。

『厚生労働省は年金の支給開始年齢引き上げに伴い、希望する従業員全員について65歳までの継続雇用を企業に義務付けるべきだとする報告書の原案を労働政策審議会の部会に提出した。
60歳の定年後、無収入になるのを防ぐのが狙い。趣旨は理解できるが、経済界は企業に新たな負担を強いるものと警戒しており、実現は容易ではなかろう。
(中略)今でも企業には定年延長や継続雇用制度の導入などが義務付けられている。ただ、労使合意があれば働く意思や能力などの基準を設け、企業が継続雇用する従業員を選ぶことを認めている。
一方的に企業が従業員を選別しているかと言えば、そうではない。厚労省が10月にまとめた「高年齢者の雇用状況」調査によると、今年6月までの1年間で定年に達した従業員43万5千人のうち継続雇用は7割を占める。再雇用を希望したが、条件を満たさず離職した人は1・8%にすぎない。』

勿論、企業というのは社会の中の一つの大きな存在でありますし、そしてまた社会に適合するからこそ存続し得るわけですから、社会に対してそれなりの貢献をして行くというのは当たり前のことです。
しかしながら、その限りにおいて企業に対し「65歳雇用義務化」ということを押し付けるならば、多くの企業の収益がどんどん上がらなくなり倒産の憂き目に遭うということになった場合に日本の国ごと駄目になってしまうわけです。
では、未だ十分働くことが出来る沢山の高齢者達をどうすれば良いのかと言いますと、まずはその人達自身が「どういうふうにしたいのか。どういうことなら出来るのか」や「残る余生で如何に社会貢献したいのか。そしてまた、それが如何に国益になるのか」といったことを真剣に考えねばならないと思います。
過去に色々な経験をし様々な知識もある65歳以上の人達は何をしたいか、何が出来るのかというのを自ら見出し得るはずですから、その上で政府としてはそうした声を真摯に受け止め、その人達をサポートして行くというようにすべきではないかと思っています。
片方で当該問題に対し企業がどう向き合うべきかについては今後も企業毎に夫々検討し続けて行かねばならないことですが、私どもの最近の取り組みについて簡単に御紹介しますと、若い人達については新入社員として入って貰い、高齢者については例えば海外で10年以上の居住経験があり、ある国における豊富な人脈や経験を有しているといったような人を65歳以上であっても採用していくという方針を決めました。
但し、その人の働き具合を見ながら一年毎に延長を決定するというように契約社員としての採用であって、そのような形で高齢者が有するものを活用して行こうと考えているわけですが、同時にそうした中で若い人達が年寄りの経験や知識から学び、そしてまた年寄りが若い人達から時代の感性を学んで行くというようにもなっています。
また別の観点から言えば、日本のメーカーで0.01ミリの誤差も無いようなものを作り上げる技術を身に付けた匠のような人はある意味世界中で求められている人材ですから、そうした技術を教えて欲しいと思っている企業は中国をはじめとして世界中にあるわけです。
例えば韓国は今でこそ半導体産業分野で世界トップクラスになっていますが、それは嘗て株式会社日立製作所や株式会社東芝を定年退職した技術者をサムスン電子が高額でどんどん採用し、その人達が日本で培った技術を教え当該分野を育てて行ったからこそのことなのです。
従って、仮に日本での採用が叶わないといった場合でも海外で働くことを考えれば良いのであって、そうした中で技術の伝播や匠の技の継承といったことがなされて行くということにもなるわけです。
併せて上述の琉球新報社説にも「若者の就業機会を含め雇用環境全体に悪影響を及ぼさぬよう目配りも必要」とありますが、「65歳雇用義務化」となれば企業は新卒採用が困難になりますから今の新卒の就職難という状況は一層深刻化して行くことになりましょう。
何故私が若者の雇用状況を特に問題視するのかと言えば、高齢者というのはそれなりのお金を持ち退職金も貰って何とか生活をして行けるわけですが、その一方で若い人達というのはそうは行きませんから、彼らに仕事が回ってこないような状況にするのは社会の不安定化を齎す最も大きな要因となるからです。
例えば、今回政変が起きたチュニジアの若年層の就職状況というのが一体どうであったのかは今年1月のブログ『MENA地域の情勢をどう見るべきか』でも指摘した通りですが、「65歳雇用義務化」などというのは全くの愚策と言わざるを得ないと思っています。

参考
※1:65歳雇用義務化 法案来年提出へ





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  1. 毎回ここの頁にたどり着くのが大変。慣れるまで時間がか​かりそう。

  2. こんばんは。実力があり、働く意志のある方に定年退職を義務づけるべきではないと考えると同時に、65歳までの雇用を義務化することにも大きな抵抗を感じています。ここ数年、政府行政vs国民といった、まるで身分差でもあるかのような露骨な政策が目立ってきていると感じるところです。



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