北尾吉孝日記

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本ブログでは一昨年より毎年取り上げている元モルガン・スタンレーの著名ストラテジストで、現在はブラックストーン・アドバイザリー・パートナーズ副会長を務めるバイロン・ウィーン(Byron R. Wien)の「びっくり10大予想」について、まずはコメントしたいと思います(参考:Byron Wien Announces The Ten Surprises for 2012)。
今月3日の「ウィーン氏の10大予想:原油85ドル、S&P500種は1400超に」という記事でも「同氏が示した昨年の経済・株式予想は、楽観的過ぎる結果に終わった」として下記のように指摘されていますが、今年再び彼の予想を取り上げることに余り意味はないのかもしれません。

『ウィーン氏は2011年1月、経済成長見通しに加え、10年物国債利回りが5%に迫ると予想、S&P500種が1500に接近すると予想していた。エコノミストの予想中間値では2011年の経済成長率は1.8%となっており、10年債利回りは3.77%がピークだった。S&P500種は1363.61が期間内での最高値だった。ウィーン氏の予想が的中したのは、米失業率の低下と金・原油の値上がりだった。』

唯、今年の10大予想の中で下記5点については私も基本的には彼と同じように考えており、「中国、インド、ブラジルの株価指数が15-20%上昇」に関しては20%を超えて上昇する国もあるのではないかというふうに思っています。

『◎S&P500種は1400超え◎米実質GDP成長率は3%超、失業率は8%未満に低下◎大統領選はバラック・オバマ氏対ミット・ロムニー氏に民主党は下院で勝利するが、上院では敗北(中略)◎シリアのアサド大統領が更迭◎中国、インド、ブラジルの株価指数が15-20%上昇』(上記記事より抜粋)

恐らくこの2012年は債券から株式へお金が動いて行く時代になるのではないかというふうに捉えており、それは昨年6月に『歴史・哲学の重要性』と題したブログでも下記指摘しましたが、やはり永続するであろう将来のインフレに備えるという意味でも株式への資金流入が起こってくるのではないかと考えているからです。

【世界における趨勢から言えば、基本的には金利は上昇して行きますし、世界的にインフレ傾向が増勢してくるというように私は見ています。
何故ならリーマンショック以後、米国は輪転機を回し続け膨大な量のドルをばら撒いたわけで、当然のことながら世界的に過剰流動性が存在しているからです。
これまでの状況というのは、その過剰流動性資金がコモディティに流入し、金をはじめ様々なコモディティ価格が高騰してきたというものです。
所謂「コストプッシュインフレ」というのは、嘗ては大体賃金に因るものでしたが、今は上述したような資源インフレが出てきていると見ており、これは他の様々な部分に影響を及ぼして行くことになると思っています。
唯、コモディティ価格についても行き着く所まで行けば上昇して行くことはありませんし、仮に上述したようなインフレが進行して行くならば、ある面株価にとっては良いわけです。】

そして日本株においても今後相場は好転して行くのではないかと私は考えているわけですが、それについては先月8日のブログ『見直されるか日本株』でも指摘したように様々な観点から説明し得ることであり、例えば情報誌『選択』(2012年1月号)の『高まる「日本株再評価」の機運 「買い」に群がるヘッジファンド』という記事では「日本株の魅力」について下記の通り述べられています。

『有名なタイ在住でスイス出身の株式投資名人マーク・ファーバー氏(中略)が指摘する「買う理由」はこうだ。①二十年以上の長期低迷で〇三年、〇八年、一一年と三回株安だったが、底値はみえた②割安。とくに株価純資産倍率が一倍以下と世界で最も低い③米国も欧州も「日本化」で不況とデフレが長期化する。日本はもう経験済み、など。
ファーバー氏は「政治的不安定や高齢化は確かに深刻な問題だが、グローバルな強みを持っている日本企業は必ず再評価される」と断言する。先般、初来日を果たしたウォーレン・バフェット氏も同様な発言をしている。
加えて(中略)前記したファンドマネジャーは言う。
(中略)第一に、「日本は欧州の危機で最も打撃が少ない」。日本はユーロ問題国の国債保有も少なく、輸出市場としての比重も相対的に軽い。第二に、3・11の大震災とその後の福島第一原発事故、タイの洪水などの打撃で落ち込んだ企業収益が一二年には急回復し、世界でトップの増益率になる。
(中略)そして第三に、その増益をまだ株価が織り込んでいない。株価収益率は十二倍。世界のどこと比べても、過去の歴史に照らしても、とにかく割安だ。』

従って、2008年9月のリーマンショック以後、株式会社SBI証券も大変厳しい事業環境の中で色々な知恵を絞りながら収益源の多様化を図り様々な形での収益確保に努めてきたわけですが、この2012年、特に後半については比較的労せずして利益を出して行けるのではないかというふうに思っています。
また新興国投資についてもアセットの値段が非常に下がったということだけではなく円も強くなっているような絶好のタイミングですから、そういう意味では所謂「ドットコムバブル」期に多額の資金を集め当該バブル崩壊後に原価で投資を実行し大変なパフォーマンスを上げた経験がありますが、今正にそれと同じようなことが投資対象のアジア諸国において起きるのではないかというふうに期待を寄せています(下記参照:a.2011年6月8日北尾吉孝日記『「ドットコムバブル」再来か』、及びb.2011年4月4日北尾吉孝日記『2011年度入社式訓示』より抜粋)。

a.【嘗て米国は1995年頃から所謂「ドットコムバブル」期へと入って行きましたが、(中略)この時期におけるインターネット企業というのは売上や利益といったものが殆ど無くともコンセプトIPO、即ちビジネスモデルのコンセプトのみで公開をし、それに対して異常な値が付くというような極めて可笑しな状況でした。
従って、そうした異常なバブルは当然破裂することになるわけで、ナスダック総合指数で見ると、2000年3月10日の5048.62をピークに急落して行くことになりました(ナスダック総合指数推移:終値―対前年比上昇率・・・1995/3/10:802.22―1.66%、1996/3/11:1080.5―34.69%、1997/3/10:1322.72―22.42%、1998/3/10:1748.51―32.19%、1999/3/10:2406―37.60%、2000/3/10:5048.62―109.83%、2001/3/9:2052.78―-59.34%)。】
b.【2000年頃に私は1500億円を集めることを決心し、インターネットの世界だけに投資をするインターネットファンドを創設しました。
これに関して嘗ての野村證券の同僚は「北尾君、投資の世界しかもプライベートエクイティに投資をするようなビジネスというのは千三つの世界(1000件に3件程度しか成功しないような世界)なのだから、一つのインダストリーだけにそれだけの資金を投じれば損をするのは目に見えている。そんな馬鹿なことは止めておいた方が良い」と話していました。
その結果がどうであったのかと言えば、我々は創業後8年目にして日本一のベンチャーキャピタルになり、片や野村ホールディングスは大赤字で大変な状況が2、3年間も続いてきたのです(※1)。
何故両社のパフォーマンスにこれ程圧倒的な差が付くのかと言えば、その答えは非常に簡単で時代の潮流に乗っていたかどうかということに尽きるのです。
我々は時代の潮流に乗っていましたが、他は中国に全てを奪われて行くようなインダストリーに投資をしていたというだけのことであり、時代を読めない人は滅びて行くしかないのです。】

最後に「番外編」としてバイロンが「1トロイオンス1800ドルまで回復する」と予想している2012年の金価格についても言及しておきます(※2)。
日本経済新聞の読者アンケート「2012年に投資したい金融商品」において「金(ETF含む)」は日本株に続き第2位であったわけですが、長期的にではなく2012年ということで申し上げるならば、私はそれ程上昇しないのではないかというふうに見ています。
欧州経済についてはやはり当面悪い状況が続いて行くことになるでしょうが、その一方で中国を中心とする新興国や「実質GDP成長率は3%超」になると予想される米国、あるいは震災復興という大義の下で多額の公的資金が「真水」として出て行く日本といった国を考慮しますと、世界経済全体としては2011年に比べて少し持ち上がるような状況になってくるでしょう(参考:2012年1月11日北尾吉孝日記『ユーロ圏の将来4』、及び2012年1月10日ウォール・ストリート・ジャーナル日本版『ソロス氏:世界経済は「悪性」のデフレ循環に直面』、及び2011年12月8日北尾吉孝日記『見直されるか日本株』)。
そうした中で金をはじめ様々なコモディティ価格の上昇が見られるとは思いますが、それ程爆発的に上がるというようなことは2012年中には起こり得ないと考えており、金も株も共に上昇するといったことにはならないのではないかと私は見ています。
要するにお金というのは一つの所にまずはどんどんシフトして行くものであって、今は金等で利食い売りが起こり株に流入してくるという局面ですから、やはりエクイティ志向というものが世界中で発現してくるのではないでしょうか。
株価と金価格の相関関係を歴史的に調査したわけではありませんが、約40年間に亘り株式市場、債券市場、金利市場など世界中のマーケットを見続けてきた経験から申し上げれば、上述したような動きをとるのではないかというふうに感覚的に思っています。

参考
※1:野村グループ 決算関連情報 | 決算短信・説明資料
※2:日経ヴェリタス第200号




 

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