北尾吉孝日記

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今朝のウォール・ストリート・ジャーナル日本版記事「エルピーダ、会社更生法申請-製造業では最大規模の破綻」にも下記の通りチップを巡る覇権の推移が指摘されていますが、そのような変遷の中で日本は業界連合で当該分野にトライをし、その後「2009年に産業活力再生特別措置法(産活法)の適用第1号となり、公的資金300億円が注入されたほか、政府保証の融資100億円」も受け、結果として昨日破綻したわけです(※1)。

『DRAM市場は当初、米国が支配していたが、1980年代には量と低価格を武器にした日本メーカー勢が席巻した。エルピーダの破綻は、韓国と台湾のライバルが日本勢を凌駕するなど、その後の市場がいかに劇的に変貌したかを端的に示している。
日本勢は当初、製造技術開発で資金を節約するため、NECと日立製作所が事業統合して1999年にエルピーダを設立した(その後、三菱電機のDRAM事業が合流)。
(中略)半導体事業は2008年に始まった金融危機の打撃を受けた。エルピーダはスマートフォン(多機能携帯電話)向けのDRAMチップに集中することでハイエンド(高級仕様)市場に傾斜しようとした。パソコン向けの利益率の低い製品の生産は台湾子会社に移した。しかし円高のあおりで利益が上がらなかった。』

エルピーダに限らずどういう形であれ、やはりこれからも既に駄目になった産業の再起を図るのは大変難しく、時代の流れに棹さすものというふうに私は認識していますが、上記半導体とりわけメモリーチップの覇権について言えば今度は中国に移って行くと考えています。
例えば鉄鋼業界について述べますと、ブリティッシュスチールからUSスチール、そして新日本製鐵株式会社へと覇権が移る中で、何度合併を繰り返してみても世界NO.1という地位は段々と維持出来なくなってくるわけです。
一層進化した高張力鋼板を生産出来るというようにどれだけ技術開発力があったとしても、時代の潮流という観点から言えば、鉄の需要たる自動車や家電の工場、あるいは建設というものは日本からどんどん消えて行ってしまうでしょう。中国特需で潤ったのは一時期ありましたし、「復興特需」が生じてくるのも事実でしょうが、基本的には少子高齢化の中で民主党の言葉で形容すれば「鉄から人へ」とも言い得るような方向で世の中は変わって行こうとしているわけですから、日本において鉄鋼業の将来性というのが本当に輝かしいものなのかということです。

本ブログで幾度となく指摘し続けていることですが、今回のように所謂「ポスト・インダストリアル・ソサエティ(脱工業化社会)」に相応しくない産業に血税を大量に費やして行くというのは全く以てナンセンスです。
そうではなく、ポスト・インダストリアル・ソサエティにおける日本の産業構造というものを模索し、時代に相応しい産業を興して行くといった方向性が非常に大事なのであって、例えばエルピーダに投下された上記公的資金がiPS細胞(新型万能細胞)の分野に流れていたならば、どのような成果がそこに現れてくるのかといった楽しみを常に持つことが出来ていたことでしょう。
エルピーダについては時間の問題で何れ破綻するであろうと多くの人が考えていたわけで、私も坂本幸雄社長を存じ上げていますが坂本社長であったからこそ、ここまで踏ん張ることが出来たのであり、他の人であればもっと早くに破綻していたことでしょう。
「エルピーダ経営破綻」の報道を見ていて、今回の出来事というのは正に時代の潮流というものを認識させる象徴的なニュースであるというふうに感じた次第です。

参考
※1:2012年2月27日ロイター「エルピーダ破たん、公的負担280億円発生で問われる産業政策





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  1. [...] | 北尾吉孝日記 投稿日: 2012年2月29日 | コメントする http://www.sbi-com.jp/kitao_diary/archives/201202284920.html Share this:TwitterFacebookLike this:Like一番乗りで「Like」しませんか。 [...]



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