北尾吉孝日記

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「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版(以下、WSJJ)」にも「フェイスブック上場へ」というトピックスがありましたが、今週金曜日に予定される「米IT企業最大規模の新規公開となるフェイスブック上場」を前に当該企業の品定めが昨今数多く為されています(※1)。
『全般に「買い推奨」が多く、仮条件を上回る目標株価を提示している証券会社も少なくない』ようですが、例えば「13日付の米投資情報週刊紙バロンズ」などは「フェイスブックを通じて友人とつながるのはいいが、株からは距離を置くべき」とか、「フェイスブックは現代の最も偉大な企業の1つだが、それは必ずしも最も偉大な銘柄の1つであることを意味するものではない」といった形で「フェイスブックの新規株式公開(IPO)への参加は見送るべきだとの見方」を示しているようです(※2/※3)。
要するに株として見た場合、「グーグルやアップルの方がはるかに株価バリュエーションが低く、多額のキャッシュを保有している」といったことが一部で盛んに指摘されているわけです(※3)。
私自身は、今のフェイスブックというのはグーグル等と比してどうこう議論するような段階ではないというふうに考えており、フェイスブックのスタートというのは正にこれからではないかと思っています。
今回のIPOによる調達額は「150億ドルを超える」とも言われていますが、そのプロシーズを如何に使って行くのかが今後のフェイスブックを占う上での大事なポイントの一つになってくるというふうに私は見ています(※4)。
例えば、「シリコンバレー起業家に一獲千金への期待 相次ぐ巨額のM&A受け」というWSJJ記事でも詳述されている通り、フェイスブックは今年に入って「シリコンバレーでM&Aに最もどん欲なインターネット検索大手グーグルに匹敵するペース」で買収を続けているわけですが、恐らく今回プロシーズとして入ってくる資金の多くは何らかの形で買収に使われるのではないかと考えています。
では、フェイスブックがどういう会社を買収するのかと言えば、私として幾つかの企業を想定していますが、例えばナスダックに公開している『中国の2大SNSサイトのひとつ「人人網」』を運営する人人といった企業の買収は一つあり得るのではないかと思ったりもしています(※5/※6)。
仮にそうした企業買収が実現するとなれば、中国という大きなマーケットで既にグーグルは勢力を失ってしまっていますから、投資し中国で自由に活動できるまで待っておいたら将来大きな差別化になるかもしれません。長期株式投資としてみても、かなりのパフォーマンスがあがるかもしれないです。
今回調達する資金がずっと銀行に寝かせられるとなれば、恐らく上記記事で述べられているような結論が現実のものとなるのかもしれませんが、そうならないようにフェイスブック経営陣は今必死になってプロシーズの使い道というものを考えているのではないでしょうか。
と言いますのも、仮に私がフェイスブックのCEOであれば、グーグルやアップルといった将来の様々な仮想敵国を想定しながら、どうすればそれらに勝ち得るのかという戦略を必死になって考えると思うからです。
「次なるソーシャルネットワーキングの展開というのは一体何なのか。そして誰がそれをクリエイトして行くのか」というように、もう世の中は「フェイスブックの次」を模索し始めています。
勿論、フェイスブックもその一つになり得るでしょうし、グーグルやアップルもその一つになるのかもしれませんが、そういう中で今後のフェイスブックの戦略として私は次の二つを想定しています。
第一にフェイスブックの現事業での世界制覇をより確実なものとし、世界最大のマーケットになるであろう中国を如何に攻略して行くのかということです。中国語を話す人口を握るということは世界の津々浦々に住む華僑・華人を取り込むことにもある意味繋がって行きますから、所謂「グレーターチャイナ」(香港、台湾はもちろんシンガポール、マレーシア等々の中国人も含む)を意識してどう次の戦略を練って行くのかが先ず一つあると思います。
そしてもう一つは、フェイスブックが圧倒的な人口を世界中で握った後、それを土台としてザッカーバーグが次の戦略を如何に考え得るのかということです。ソーシャルネットワーキングの次の展開に向けて、今回プロシーズとして入ってくる資金をどのように使い何をして行くのかが、フェイスブックの将来の全てを決めることになると思っています。

参考
※1:2012年5月15日サーチナ「フェイスブック上場を前に―米国経済の底力を考える―=村上尚己
※2:2012年5月13日日経ヴェリタス「フェイスブックは救世主か、米IT最大の上場に期待、先行組の明暗に懸念」
※3:2012年5月14日ロイター「フェイスブック、長期的な投資妙味はグーグルなどに見劣り=バロンズ
※4:2012年5月16日ロイター「米フェイスブックが公開株式数拡大、調達額150億ドルに=関係筋
※5:2012年5月9日INTERNET Watch『【山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿】 楽天中国版「楽酷天」、ヤフー&淘宝網に続き中国から撤退 ほか ~2012年4月
※6:2011年6月8日北尾吉孝日記『「ドットコムバブル」再来か




 

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