北尾吉孝日記

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日経ヴェリタス220号でも下記のように指摘されていますが、ギリシャがユーロを離脱することになれば、恐らく嘗てのアルゼンチンと同じような事態に陥って行くと私は考えています。

『預金流出、債務不履行(デフォルト)、ポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭……。今のギリシャと似た現象が10年前、通貨危機に見舞われたアルゼンチンで起きた。
(中略)タイバーツの急落を皮切りに、インドネシアや韓国にも波及したアジア通貨危機の場合、その後はアルゼンチンと同様、各国とも自国通貨安をテコに輸出を伸ばし、早い期間のうちに経済を立て直した。
ただギリシャの場合、ユーロを離脱し、通貨価値が下落しても、主要産業は観光で、輸出できる製品は乏しい。』

即ち、ギリシャの新通貨は非常に弱くなり物価は高騰すると思いますから、結果として国民は今より遥かに過酷な生活を強いられるようになるでしょう。
「通貨安で経済を立て直せるか」について言えば、公務員が総人口の約1割(日本:約3%)、100万人を超えているような公務員大国・ギリシャというのは、GDPの7割を観光産業が占める観光立国で1700年以上前の所謂「ギリシャ・ローマ時代」の遺産だけで食べてきたような国です(※1/※2/※3/※4)。
その一方でアルゼンチンは何と言っても食糧大国であり、況して世界人口の爆発的増加、及び新興諸国の飛躍的成長の中で資源と食料は必ず枯渇して行くと言われていますから、そういう意味でもギリシャとは月と鼈とも言い得るわけです(※5)。
そして来月17日に実施される再選挙を控え、ポピュリズムに乗っかった何も実現し得ない主張を展開する愚かな政党を支持するギリシャの大衆というのは、まさに日本の2009年夏の政権交代時に民主党に投票した人と同じようなものとも言えましょう。
あの時多くの人は「自民党が駄目だから一度民主党に政権を担わせて見れば良い」というある種の期待感を持って民主党に投票したのでしょうから、厳密に言うとギリシャにおける現況とは少し違うのかもしれません(※6)。
唯、民主党政権の此の4年間というのは結局マニフェストに「書いてあることは命懸けで実行」せずマニフェストに書いていないことを一生懸命実現しようとしてきたわけで、樹立されるギリシャの新政権もそうした形で国民との約束を守らなければ、政治的危機や経済的混乱は更なる広がりを見せることになるでしょう(※6/※7)。『論語』にあるように「信なくんば立たず」です。
これから後、相当レベルの胆が据わっている人物が新政権の指導者となって、ポピュリズムに走ることなく不退転の決意で事を為して行くならば、ギリシャにも僅かながらの望みは未だあるのかもしれません(※8)。
唯、私見を述べるならば、近づく悲劇を回避する術はギリシャには最早残されておらず、時間の問題で悲劇が訪れることになるのではないかと思っています。
ギリシャというのは「ギリシャ・ローマ時代」から眠り続けてきた国であって、悲劇の足音を聞いても今尚目を覚ますことが出来ないわけですから、数千年前の世界に向かって永遠に眠り続けるのかもしれないとすら感じています。

参考
※1:2012年5月27日日経ヴェリタス『「ドラクマ復活」狂騒曲――10年前に通貨危機…アルゼンチンはどうなった?』
※2:2010年11月17日北尾吉孝日記『国際通貨体制の行方
※3:2010年5月7日北尾吉孝日記『ギリシャ問題の行方
※4:アサヒビール株式会社 レシピ・楽しむ・学ぶ「ワインより下等な扱いだったギリシャ・ローマ時代のビール
※5:2010年3月16日北尾吉孝日記『モンゴル資源開発会社への出資について
※6:2012年5月7日北尾吉孝日記『今後の政局と消費増税・TPP
※7:2012年5月26日ウォール・ストリート・ジャーナル日本版「ギリシャ、観光客の予約件数落ち込む 経済に一段の打撃へ
※8:2011年11月29日北尾吉孝日記『ユーロ崩壊は時間の問題か




 

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