北尾吉孝日記

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今回の小沢氏による「離党騒動」については、主要メディアが挙ってネガティブな見解を示しているというのが現況です。
勿論、主要メディアがそうした形になるということを小沢氏自身もある意味分かっていたとは思いますが、分かっていたにも拘らず敢えてその道を選んだという彼の純粋さのようなものに今回私は驚きました。
小沢氏というのは「権力の亡者」であるかのようにマスコミ通じて喧伝され続けていますが、例えば自民党に所属していれば疾うの昔に総裁・総理になることが出来ていたにも拘らず、彼は敢えてそれを蹴飛ばしたような人物です。
要するに「権力の亡者」であるならば、普通は今回のような離党劇を演じることはないわけで、必ずしも権力だけを追及するような人物ではなく、寧ろ非常に純な人ではないかと思います。
そして彼が何に対して純かと言えば、自分自身の信念に対して非常に純な人なのであろうという気が私はしています。
小沢氏は毀誉褒貶の激しい人物であり、例えば2010年10月に検察審査会が2度目の「起訴議決」を下す前に行われた民主党代表選の時にも丁度悪い噂が流れたわけですが、今回も「妻の離縁状」とされるコピーが投票日近くに国会議員等にばら撒かれたように何か極めて恣意的なものを感じています(※1)。
今回我々が見たものは官に追随する民自公の連中と小沢一郎という政治家との戦であったというふうに私は捉えていますが、その戦いの結末が如何なるものかと言えば民主党という政党が終焉を迎えたということなのだろうと思います。
民主党は分裂したものの衆議院での「議席は251となり、与党での単独過半数は維持され」、参議院でも「議席は92となり、自民党などの会派の86議席を上回り、第一党を維持できる」というのは勿論事実ではあります(※2)。
唯、49名の議員が一挙に党を割り、その上『首相が政治生命をかける法案に異を唱えた「離党予備軍」』として反対票を投じたものの離党届を提出しなかった20名、及び欠席・棄権した15名が未だ党内に残っているわけですから、野田総理の政権基盤は著しく弱体化したということなのだろうと思います(※3)。
振り返って見ますと、民主党政権というのは「自民党では駄目ですから一度政権を担わせてください!」と国民に熱心に訴え掛け2009年夏に誕生したものの、結局はマニフェストに「書いてあることは命懸けで実行」せず、消費税増税等のマニフェストに書いていないことを一生懸命実現しようとしてきたわけです(※4)。
そして、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革についても全く以て一体改革の体を成しておらず、そうした状況の中で終焉を迎えてしまったということで、この信を完全に失った民主党という政党に対しては今後党首が誰に代わろうとも国民は二度と与党としないことでしょう。
『論語』の「顔淵第十二の七」にも政治の要諦に関して「信なくんば立たず」と述べられていますが、やはり先ずは国民との約束をきちっと一つ一つ履行するのが政権にとって最も大事なことであると思います。消費税増税については実施しないと彼らのマニフェストでも鳩山元総理も国民に言ってきたわけです(※4)。
では自民党が次期衆院選で勝ち得るのかと言えば、野党としても駄目という烙印を押された政党に対して民意が集まるというふうには考え難く、小沢氏も「オリーブの木みたいな形でやればいい」と最近言い出していますが、恐らくどの政党も大きな票を獲得出来ないという状況が生じるのではないかと思います(※5/※6)。
そういうふうに小沢氏自身も考えているからこそ、今回先ずは50人程度を固め出来るだけ多くの人間が次の選挙で勝ち抜いて行けるようにすべく、嘗ての選挙でも小沢氏が見せたある種のポピュリズムを利用しながら、それに上手く乗っかる形で数を維持して行こうとしているのでしょう。
これから後、小沢・橋下の連携という展開もあり得るかもしれませんが、小沢氏は橋下氏を橋下氏は小沢氏を夫々利用すれば良いと思いますし、2人が手を組めば一つの革新が生まれるのではないかという気もします。
即ち、今の日本を救うのは大幅な規制緩和による構造改革以外にないと私は考えており、民主党政権では為し得なかった政官財及びマスコミといったものの癒着構造を叩き潰すということ、あるいは私がずっと指摘し続けている「農地法」(法令番号:昭和二十七年七月十五日法律第二百二十九号)等の戦後直ぐに作られたような法律の抜本的な改正といったことも含め、革新が生まれるのではないかというふうに思うのです(※7)。
今回の小沢氏の一連の言動について賛否両論あるとは思いますが、メディアにおける逆風が吹き荒れる中で党を割ったということで「小沢には信がある」というふうに見た人も結構いたのではないでしょうか。
少なくとも自身の主義主張を簡単に曲げてマニフェストに書いてあることは実行せず、何も書いていないことを政治生命を掛けて実現しようなどという人間よりも、小沢一郎という人物の方が評価が出来ると私は考えています。

参考
※1:Yahoo!ニュース「民主党・小沢元代表の政治資金問題
※2:2012年7月2日ニューズウィーク日本版「小沢氏ら50人が離党届、民主党分裂
※3:2012年7月3日日本経済新聞「小沢系、対応分かれる 山田元農相ら離党届出さず
※4:2012年5月7日北尾吉孝日記『今後の政局と消費増税・TPP
※5:2012年4月17日北尾吉孝日記『トップの資質
※6:2012年7月1日YOMIURI ONLINE「小沢新党との連携、石原氏・維新は否定的
※7:2011年8月23日北尾吉孝日記『民主党代表選と小沢一郎





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  1. 同意です。昔から小沢さんは好きでは無いですが、スジを通す方は他にはいないですね。
    それよりも驚いたのは、貴兄のお考えを初めて知りました。反省するばかりです。
    竹田

  2. 今回も小沢氏は、権力争いに敗れ党を追い出されたというのが、どう取り繕おうと国民の目に映る姿です。小沢新党と橋下大阪維新の会の連携は絶対にありません。何故かというと、大阪維新の会の支持者の大部分が、小沢と組むのなら維新も応援しないという人々だからです。小沢氏が「オリーブの木みたいな形でやればいい」と最近言い出しているのは、他党との連携を拒否されているからです。小沢氏の不人気ぶりはそれほど凄まじく、他党も抱きつかれて一緒に沈没したくないと言うのが本音でしょう。結局、小沢新党の衆院議員は次の選挙で全滅の大惨敗になるです。

  3. すばらしい です

    北尾先生は ホリエモンのときも 眼光するどく
    又今日の お話も 背中からす~と入ってくる 自然をかんじさせていただきました

    強い 存在 が強い存在に共鳴した 文章に出会え 感激しました
    ありがとうございました

  4. マスコミにネガティブなイメージをあれだけ長期間に渡って刷り込まれ続ければ、
    多くの人が小沢氏について悪い印象を持つのは当然だと思います。
    でも小沢さんがどういう人格であれ、能力が米中一目置く非凡な政治家であることは立証済みで、
    そんな能力を葬り続けてきたマスコミには大きな疑問を感じて始めています。
    そういう意味で北尾さんの今回のお話は、
    素直な目で見、自分の頭で考えることの大切さを教えられた気がします。

  5. ときどき書店で、書籍をちら見するていどで、かぶやさん(失礼)というくらいの認識しか持ち合わせておりませんでした。
    小沢氏の政治家としての姿勢、マスコミなどの報道について、普通の客観的な目で、見られていると思います。正直、見直しました。

  6. 「小沢一郎を叩くこと」が流行している、今の日本で、北尾さんの論評はとても勇気があると思いました。

    狂人のような目つきで小沢一郎を非難しているコメンテーターやそれに扇動されている国民が多数いる中、小沢一郎を評価するコメントには、少なからず感動しました。

    道ばたで、大勢からたたかれている人を見ると、次のようなタイプの人と
    1) 知らんぷり
    2) 面白おかしくく見物する
    3) 火事場泥棒的に落し物を拾う
    4) 一緒になって罵声を浴びせる
    5) 一緒になって殴る

    正義感と義憤から、たたかれている人を助けるという人に分かれると思う。

    日本社会のためも、後者の人間が増えていけばいいと思います。

  7. 北尾吉孝 様

    貴殿の小沢一郎氏に対する正鵠をえた評価と見識に敬意を表します。
    ネットメディア「阿修羅」でも大きく支持されています。ご参考までに・・。

    http://www.asyura2.com/12/senkyo132/msg/534.html

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