北尾吉孝日記

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野田総理はあれだけギリシャのようになると言って歩き回り「政治生命をかけて」消費税増税に向けて散々大騒ぎしていますが、今マーケットを見れば新発10年物国債利回りが一層低下し、そして円が対ドル、対ユーロで益々強くなっています(※1/※2)。
そして上記状況下で何が起こってきているのかと言えば、例えばシャープ株式会社が4~6月期決算で「1千億円規模の最終赤字になる見通しである」とか、あるいは日経平均株価が大きく低迷し「1か月半ぶり終値8500円割れ」になるといった具合です(※3/※4)。
私に言わせれば、正にマーケットが「今、消費税増税法案を通すことが日本にとって本当に良いのですか」ということを問うているのだと思います。
「日本の公的な借金は(中略)国内総生産(GDP)の二倍と先進国で突出しており、財政破綻にひんするギリシャの一・五倍を上回る」といった指摘も未だにありますが、国民が十分な資産を保有し国債の93%を自国民が購入している日本について世界中で誰一人としてギリシャのようになるとは考えてはいないのです(※1/※5)。
世界的に見て相対的立場が遥かに優れている日本という国が、今というタイミングにおいて消費税を上げる必要性など全くないわけで、長期金利一つを見ても寧ろ0.7%を割るぐらいにどんどん低下して行っているという事実を野田総理以下、現政府首脳はきちんと認識すべきです。
更に今の状況で言えば、消費税率を引き上げたところで税収は結局減少するという可能性がいよいよ強くなってきているというふうに私は見ています。
あれだけ擦った揉んだして「社会保障と税の一体改革」と称して実現に動いてみたところで、「社会保障支出を賄い、財政健全化を成し遂げること」は難しいと思います。巨額の財源を掠め取るいわゆる「白蟻退治」をしなければ焼け石に水なのです(※6/※7)。
野田総理は「消費増税だけでなく行革にも同時に不退転の決意で取り組む」と述べているようですが、実際は野党時代にあれだけ声高に主張し「民主党の政権政策Manifesto2009」に明記した「天下り、渡りのあっせんを全面的に禁止」する「不退転の決意」など全くなく、消費税増税等のマニフェストに書いていないことを「不退転の決意」で実現しようとしているわけです(※8/※9/※10)。
また世界に目を向ければ、ユーロ圏の問題は全く解決しておらず、その一方で米国もよたよたしてきましたが、そうした中で米国の10年物国債の利回りが過去最低を更新しドルがどんどん強くなっているのは、今欧州の国状というのがそれぐらい悪くなっているということを示唆しているのでしょう(※11/※12)。
しかし野田総理にはそうした状況認識もなければ今後益々欧州情勢が悪化して行くであろうという認識もありませんから、あれ程までに消費税に対して強い拘りを持って極楽蜻蛉のように消費税増税と言い続けているわけです。
世界経済の現況を考慮せず消費税増税に無理にでも踏み切ろうとするのは結構ですが、日本の長期金利はどんどん低下して円は益々強くなり、日本の輸出企業の業績が益々悪化して景気が更に悪くなり、そして結局のところ税収が大きく減って全て帳消し以上になるということを実際に経験しなければ野田総理以下、現政府首脳は理解出来ないのかもしれません。
今年2月のブログ『日本経済のサステナビリティ問題について』等でずっと指摘している通り、サステナビリティ問題を解決する一手段としての消費税増税を私は一概に否定するものではありませんが、将来のアジェンダであっても今は言及すらしてはいけないタイミングでありましょう。
株式市場が低迷を続ける中、仮に年金を支払い得ないとなった場合、それをまた国が補填するのかというわけで、全く以て一体改革の体を成していない「社会保障と税の一体改革」に無駄な政治的コストを掛け続ける野田内閣は全くナンセンスであると言わざるを得ません。
今、消費税増税を実施せねば国益を損なうのかと言えば決してそうではなく、寧ろ将来の国益を担保する上でより重要な課題は、TPPや独立行政法人といった問題ではないかと思います(※13)。
先ずそれらを「不退転の決意」で実現しようとしなかったが故に野田内閣は何の成果も残せずに終焉を迎え、そしてまた今日本が一層厳しい状況に直面しているということなのだろうと私は考えています。

参考
※1:2012年6月12日北尾吉孝日記『山田方谷に学ぶ財政改革の在り方
※2:2012年7月23日時事ドットコム「長期金利も低下=0.720%-東京債券市場
※3:2012年7月24日Yomiuri Online「日経平均続落、1か月半ぶり終値8500円割れ
※4:2012年7月24日MSN産経ニュース「シャープ、4-6月期は1千億円規模の最終赤字に 追加リストラ検討
※5:2012年6月27日中日新聞『「逆風だ」「仕方ない」 消費増税衆院通過 北陸経済界で交錯
※6:2012年1月25日北尾吉孝日記『「民主党の政権政策」とは何か
※7:2011年12月16日北尾吉孝日記『少子高齢化時代における社会保障制度の在り方
※8:2012年7月8日高知新聞『【府省庁版仕分け】もっと「身を切る改革」を
※9:2009年7月27日時事ドットコム「◎民主マニフェストの要旨
※10:2012年7月3日北尾吉孝日記『小沢一郎の離党と今後の政局について
※11:2012年7月23日日本経済新聞「米長期金利、過去最低を更新 一時1.39%前後
※12:2012年7月24日ブルームバーグ「NY外為:ユーロが対円で11年ぶり安値-欧州懸念が強まる
※13:2012年5月7日北尾吉孝日記『今後の政局と消費増税・TPP




 

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