北尾吉孝日記

この記事をシェアする

昨今所謂「オスプレイ配備問題」が頻繁に報道されていますが、イラクからもアフガニスタンからも手を引いてきている米国に、中国と東南アジア諸国が領有権を争う南沙諸島や日本と中国の間で緊迫の度合いが増している尖閣諸島において、一旦事が起こった時に本当に他国のために中国と事を構える意思があるのでしょうか(※1/※2)。
私が一貫して主張し続けていることですが、21世紀はアジアの時代であり、他方でパックス・アメリカーナの終焉の時であり、事実米国一極集中体制が崩れ、米国の影響力が次第に弱まって行くという状況になってきています(※1/※3)。
政治・経済・軍事といったもので全面的に力を失いつつある米国には、最早他の国の面倒までを見ている余裕などないと思われ、恐らく実質的には中国に対する軍事行動を取らないのではないかと思っています(※1)。
片や中国は国家経費をどんどんと防衛分野に注ぎ込んできて軍事力増強のスピードと規模は大変な状況であるのは御承知の通りですが、その中国では今『尖閣諸島をめぐり「軍事力使用」という穏やかでない言葉も使われ始めて』おり『「軍事手段の採用」を「支持する」とする声が9割を超えるなど、事態は緊迫化して』いるようです(※4/※5)。
そうした状況下、日本では森本防衛相自らが『都の上陸許可申請をめぐる国の対応について、「必要な目的がはっきり付されれば、受け入れるのが適切な処置だ」と述べ、申請があれば許可すべきだとの考えを示した』わけですが、歴史を紐解けばこうしたものが積もり積もって戦争となり得るわけで発言には相当慎重になるべきではないかと思います(※6/※7)。
また北朝鮮情勢についても不透明感が更に強まっており、例えば今月15日に突如として「李英鎬(リ・ヨンホ)朝鮮人民軍総参謀長を、中央委員会政治局常務委員会委員、政治局員、中央軍事委員会副委員長などのすべての職務から解任することを決定した」わけですが、「健康上の理由」であるはずもなく今後若い金正恩が本当に国家を統治し得るのかと訝しく思っています(※8/※9/※10)。
このように今日の世界政治・経済情勢は大変難しい局面にあります。
過去の状況を見ると、例えば第一次世界大戦、第二次世界大戦というのは正に資本主義の景気変動において世界的景気変動の悪化を招いた時に勃発しており、結果として戦争によって生産と消費の矛盾を解消し経済停滞を克服してきたというわけです(※11)。
先々月のブログ『「尖閣諸島購入騒動」について』等でも御紹介したように嘗て鄧小平は後世に領土問題というものの解決を委ねたわけですが、中国の次期最高指導者への就任が確実視される習近平副主席は領有権がどちらにあるのか白黒をはっきりつけようという感じになってきており、鄧小平のような考え方に立った「先延ばし」戦略を今日の中国で実践して行くのは難しい状況のようです。
その一方で先週火曜日のMSN産経ニュース記事『明の上奏文に「尖閣は琉球」と明記 中国主張の根拠崩れる』の冒頭でも下記指摘されている通り、「中国が尖閣を領有していたとする史料がどこにもないことは判明していたが、さらに少なくとも大正島を琉球だと認識した史料もあったことが分かり、中国の主張に歴史的根拠がないことがいっそう明白に」なりました。

『尖閣諸島(沖縄県石垣市)のひとつ、大正島について、中国・明から1561年に琉球王朝(沖縄)へ派遣された使節、郭汝霖(かく・じょりん)が皇帝に提出した上奏文に「琉球」と明記されていたことが、石井望・長崎純心大准教授(漢文学)の調査で分かった。中国は尖閣諸島を「明代から中国の領土で台湾の付属島嶼(とうしょ)だった」と主張しているが、根拠が大きく崩れることになる。』

日本としてはこうした状況変化を捉えて、「当時の明朝が否定しているにも拘らず、明代から自国の領土であったはずはないでしょう」といった主張を中国側に展開し、あらゆる歴史的事実を通じて世界に訴え掛けて行くべきでありましょう。
今言われているような「実効支配強化」を進めるというやり方はある意味非常に危険であり、例えば日本が周辺に飛ばすであろう海上自衛隊の哨戒機「P3C」と中国人民解放軍の軍事兵器との間で何らかのアクシンデントが起こり得る可能性は非常に高くなるわけです(※12)。
そうしたエスカレーションの果てに最終戦争というものが待っているわけで、日本は憲法改正に踏み切ってでも自らの力によって「日本固有の領土」を断固死守するという覚悟を決め得ないのであれば、「実効支配強化」などとは言わず先に述べたような歴史的根拠を基に日本の正しさを世界に表明して行くべきではないかというふうに私は思っています(※13)。

参考
※1:2011年7月12日北尾吉孝日記『現実化してきたパックス・アメリカーナの終焉
※2:2012年7月16日MSN産経ニュース「玄葉外相「南沙は国際法で解決」 尖閣に飛び火懸念
※3:2012年4月5日北尾吉孝日記『多極化世界における東洋思想の重要性
※4:2010年2月4日北尾吉孝日記『東アジアの軍事バランスと普天間基地の移設問題
※5:2012年7月20日J-CASTニュース『中国国民の9割が「軍事行動に賛成」 尖閣諸島領有めぐり事態は緊迫化
※6:2012年7月22日Yomiuri Online「都の尖閣上陸、政府内で容認論…国有化に影響も
※7:2010年10月22日北尾吉孝日記『「尖閣問題」にどう対処すべきか
※8:2012年7月16日中央日報「北朝鮮の李英鎬人民軍総参謀長、全職務を解任
※9:2011年12月21日北尾吉孝日記『金正日後の北朝鮮
※10:2012年6月8日北尾吉孝日記『「盛衰の期限」について
※11:2011年3月17日北尾吉孝日記『「東北地方太平洋沖地震」の経済的影響
※12:2012年7月16日MSN産経ニュース『尖閣国有化 実効統治強化を促す産経 「日中は向き合え」と朝日
※13:2012年5月7日北尾吉孝日記『「尖閣諸島購入騒動」について




 

(任意/公開)
(任意/非公開)



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.