北尾吉孝日記

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昨年12月に『「65歳雇用義務化」は是か非か』というブログを書きましたが、その後「60歳以上の雇用継続を義務づける」高年齢者雇用安定法改正案が国会に提出され、今は「審議日程は不透明」という状況です(※1/※2)。
益々増えてくる高齢者に対して、全くの愚策と言わざるを得ない上記改正案が通った場合、一番の問題点となるのは若者達と競合してしまうということです。
高齢者というのはそれなりのお金を持ち退職金も貰って何とか生活をして行けるわけですが、その一方で若い人達というのはそうは行かず、彼らに仕事が回ってこないような状況にするのは社会の不安定化を齎す最も大きな要因となってしまいます(※3)。
今、世界を見れば様々な所で仕事のない若者のエネルギーが爆発しており、その最たるものが『北アフリカのチュニジアで発生した反政府デモに端を発し,中東・北アフリカ諸国に拡大した「アラブの春」』であろうと思います(※4)。
所謂「ジャスミン革命」と称される民主化運動により政変が起きたチュニジアにおいて、若年層の就職状況が一体どうであったのかは、昨年1月のブログ『MENA地域の情勢をどう見るべきか』でも指摘した通りです。
また昨今の例で言えば「債務危機に見舞われている欧州では、25歳未満の失業率は経済協力開発機構(OECD)が統計を開始して以来最高に達し(中略)ギリシャやスペインでは若者の2人に1人が失業し、サウジアラビアやイタリアの若年失業率は国全体の失業率の4倍に上る」といった状況です(※5)。
こうした状況が続くと最悪の場合は暴動等が起きる危険性が非常に高くなっていることを意味します。
従って高齢者は高齢者で仕事があった方が良いのは勿論ですが、やはり高齢者が大企業で更に長く勤め得るといった政策よりも若者が大企業できちんと働き得る環境整備を図る政策の方が寧ろ大事ではないかと思います。
では、未だ十分に働き得る沢山の高齢者達はどうすれば良いのかと言いますと、過去に色々な経験をし様々な知識もある高齢者達は「何をしたいか、何が出来るのか」というのを自ら見出し得るはずですから、先ずはその人達自身が「残る余生で如何に社会貢献したいのか。そしてまた、それが如何に国益になるのか」といったことを真剣に考えるべきでしょう(※3)。
その上で政府としてはそうした声を真摯に受け止め、その人達をサポートして行くというようにすべきではないかと思いますが、私見を述べるならば、その人達の今までの経験や技術といったものを活かし得るような仕組みを構築して行かねばならないというふうに思っています。
例えば嘗てサムスン電子は、株式会社日立製作所や株式会社東芝を定年退職した技術者を高額でどんどん採用し、その人達が日本で培った技術を教え半導体産業を育てて行きました(※3)。
そういう中で韓国の半導体産業の隆盛を招き、延いては日本の半導体産業の凋落というものが起こってきたわけですが、当該分野において韓国を世界トップクラスたらしめた技術というのは元をたどれば正に日本から持って行ったものなのです(※6)。
このように匠の技のような日本人独特のものづくりに関する様々な技術の承継といったことが日本の若者に十分になされてない問題に対し、世界中で求められている匠のような人達が彼らの一つの役目として彼らの技の承継を行う「技術伝承施設」のような学校を政府は様々な分野で創設すべきではないかと思います。
それからもう一つ、自身が高齢になって初めて高齢者にとって何が本当に必要かというのが分かる部分もあるでしょうから、高齢者ならではの着想による高齢者用のものづくりを育てて行ってはどうかと考えています。
例えば、年をとり階段を一段ずつ上がるのが非常に大変になったから上の段と下の段の間にもう一つ箱のようなものを置いて上がり易くするといった工夫等々、高齢者が生きて行く上で有益となり得るちょっとした何かを作って行くということです。
そうすれば、高齢者が自身に必要となるアイデア商品を購入することになりましょうし、あるいは子供達の中でも「これを買ってあげたら、おじいちゃん喜ぶかな」といった話になるかもしれないわけです。
従って上記はシルバーインダストリーと言えばその一つと言えますが、高齢者のために高齢者自身が高齢者ならではのものを作って行けるよう、政府は体制整備に取り組んで行くべきではないかというふうに私は思っています。

参考
※1:2012年6月29日SankeiBiz「NTT 攻めの雇用転換 65歳まで雇用延長、過去の“禍根”断つ
※2:2012年7月2日株式会社ニッセイ基礎研究所 レポート「高年齢者雇用安定法改正案と今後の課題
※3:2011年12月22日北尾吉孝日記『「65歳雇用義務化」は是か非か
※4:2012年6月8日北尾吉孝日記『「盛衰の期限」について
※5:2012年7月3日日本経済新聞『[FT]急増する若年失業がむしばむ中長期経済成長
※6:2012年7月20日北尾吉孝日記『成長資金活用に関する日韓の相違点




 

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