北尾吉孝日記

『相場というもの』

2012年8月10日 17:49
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今の20歳ぐらいの若者達というのは、言ってみれば日本経済の悪い時しか知りません。
89年の大納会に日経平均株価が3万8915円を付け、そして翌年「12月、不動産バブルは頂点に達する」わけですが、基調としてはそこからずっと右肩下がりが続いています(※1/※2)。
現在61歳の私などは、あのバブルの絶頂期も知っていますし、野村證券株式会社に74年に入社して以来退職するまで、良い時も悪い時も色々なことがありましたが、どちらかと言えば右肩上がりの時代を経験し今日に至ります。
勿論そうした右肩上がりの状況においても上下するのがマーケットであって、当時を振り返ってみますと兎に角様々なことを経験したように思います。
例えば、私にとって大変印象深いのは「85年9月22日、米国ニューヨーク市のプラザホテルで行われたG5」による「プラザ合意」です(※3)。
あの時、会議自体は根回しがありましたから半時間ぐらいで終わったわけですが、その後の円高を齎す上での第一の契機になって行きました。
合意の翌日には1日で20円程度の円高進行が起こり、僅か「1年で235円/$から150円/$台となった」わけですが、あの時「もう日本は潰れるか」とまで言われた「日本経済は、1986年11月を景気の谷として景気回復過程に入り、1991年2月まで51ヶ月間にも及ぶバブル景気を経験」することになりました(※3/※4)。
あるいは87年10月19日、ダウ30種平均が1日で508ドル、22.6%も下落した、あの「ブラックマンデー」も非常に印象的です(※5)。
22.6%という下落率は、「全世界の殆どの資本主義国家を巻き込んだ世界恐慌の始まり」の日とも言われる「ブラックサーズデー(29年10月24日)」のそれよりも約10%も高かったわけですが、私はそうした状況というのも経験してきました(※6)。
そして更には、73年に第一次オイルショック、74年の戦後初めてのマイナス成長(-1.2%)、79年に第二次オイルショックが起こり、第一次オイルショックにおいては所謂「狂乱物価」も重なってトイレットペーパーが無くなるなどと大騒ぎした酷い時もありました(※7)。
また第二次オイルショックの影響により「1970年代後半から1980年代初頭にかけて世界経済は(中略)成長の停滞とインフレーションに悩まされていた」わけです。
そういう中で日本の株式市場はと言えば、89年まではずっと基調として右肩上がり、90年についても前年「並みの2割前後の上昇率を予想する声がほとんど」で、評論家や市場関係者の殆ど全てが「4万円は簡単に行くでしょう」などとコメントをしていたわけです(※1)。
しかしながら、実際の日経平均株価は1989年末の3万8915円87銭をピークに1990年に入ると下がり、10月には暴落したわけで、約40年間に亘り株式市場、債券市場、金利市場など世界中のマーケットを見続けてきた私の経験から言えば、相場というものは大方の人が予想するようには動いていないということです(※1)。
相場格言の一つに「人の行く裏に道あり、花の山」というのがあるように、大体「山高ければ谷深し、谷深ければ山高し」で相場は動いて行くものです。
また、「強気相場は悲観の中に生まれ懐疑の中で育ち楽観の中で成熟し幸福感の中で消えていく」という有名な格言もありますが、要するに相場というものは必ず上がり下がりを繰り返して行くということです。
「資産運用会社米ピムコの共同創業者で共同最高投資責任者(CIO)であるビル・グロス氏」は「株式は死につつある、債券投資も難しい」と述べているようですが、大変な過剰流動性が齎されている現況においては時間の問題でインフレになって行くと思われ、どこかの時点で必ず株価は上昇して行くというふうに私自身の経験から考えています。

参考
※1:2010年10月1日ダイヤモンド「株バブルは1989年末、日経平均3万8915円で頂点に現代日本とは正反対の超楽観的だった時代
※2:2010年9月17日ダイヤモンド「空室率0.2%から一転、供給過剰の大パニックに!1990年、オフィスビル・バブルの頂点で見えた崩壊の縁
※3:2011年10月財務省「シリーズ 日本経済を考える⑮ プラザ合意と円高、バブル景気
※4:住友電気工業株式会社 SEI WORLD2012年05月号「社長メッセージ
※5:2012年4月23日日経BPネット『ブラックマンデー「前夜」に「日本はずるい」と言い放った米CBS名物キャスターの想い出
※6:立命館国際研究 21巻(2008年度)3号「1929年アメリカ大恐慌とアーサー・ミラー─ 2008年のアメリカ発金融危機との関連から ─
※7:2008年5月22日北尾吉孝日記『オイルダラーの還流問題




 

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