北尾吉孝日記

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先週様々なメディアで報じられていたように「日銀が保有する長期国債の残高が初めて銀行券(紙幣)の発行残高を上回った」わけですが、皆さんは本件をどのように捉えられたでしょうか(※1)。
当の日銀はと言うと、「資産買入等の基金」による『国債買い入れを「デフレ脱却のための例外措置」とし』、『日銀が長期国債保有額を日銀券発行額の限度内に収めるという、通称「日銀券ルール」』には抵触していないといった立場のようです(※2/※3)。
私見を述べるならば、日銀が示している見解が妥当であるというふうに私も捉えており、一体何故に日銀の現況というものをネガティブに考える論者がいるのか、率直に言って私には理解出来ません。
「金融緩和のための国債購入・保有増が、財政規律を失った政府の債務を中央銀行が紙幣増刷で埋め合わせ」ハイパーインフレを誘発して行くといった説を唱える人も中にはいますが、今回の場合は無制限に日銀券を刷って財政支出をファイナンスして行くというわけではありません(※4/※5)。
要するに今積み上がっている財政赤字というのが、循環的なものなのか、あるいは構造的なものなのかと考えた場合、私は現時点における判断として循環的なものであると捉えており、日本経済が回復してくれば必ず税収が増え当該赤字も縮小してくるというふうに考えています。
即ち、構造的な問題として恒常的に日銀券が無制限に発行されて行くというものではなく、現下の経済状況を改善するために一時的に手立てを講じてきた循環的なものであるということです。
従って、今というタイミングは経済成長を如何に成し遂げるのかを最優先課題として、様々な施策を徹底的に講ずべき時ではないかと思うのですが、増税というものだけに政治生命を掛ける国会議員達が為すべきを為さずにいるがため、かえって日本経済は駄目になってしまうのではないかと私は一貫して主張し続けているわけです。
端的に言えば、ギリシャのような構造的状況であれば大問題ではありますが、今の日本の状況においては「日銀券ルール」など考慮せず、日銀は日本や世界経済の動向を注視し、節度を持ち国債購入に踏み切れば良いというふうに思います。
仮に上記「資産買入等の基金」といったものが上手く機能しなければ、取り分け運用対象が無く国債漬けとなっている地方金融機関などは大変な状況に陥って、場合によっては預金金利をマイナスにし預金を断らねばならないといった事態も生じ得るわけです。
国民が十分な資産を保有し、国債の93%を自国民が購入し、「火力発電燃料の輸入急増で貿易赤字が急激に膨らんだ」中で国際収支の経常収支が未だに黒字を維持出来ている日本という国において、今中央銀行の置かれた現況の一体何を懸念する必要があるのか、私には理解し難い部分があるということです(※6/※7)。

参考
※1:2012年8月14日日本経済新聞「日銀の長期国債保有残高80兆円 初めて発行銀行券を上回る
※2:2012年8月15日MSN産経ニュース『日銀の国債保有、自主ルール「限界」 買い入れの多様化必要
※3:2009年4月20日PHP Biz Online 衆知『「日銀券ルール」の誤謬
※4:2012年3月22日ダイヤモンド「日銀引き受けによる国債発行はインフレをもたらすか?
※5:2012年8月14日ブルームバーグ「日銀の長期国債保有額、銀行券残高を超える-10日時点・市場静観(2)
※6:2012年8月7日北尾吉孝日記『今国民は消費増税を望んでいるのか
※7:2012年8月8日時事ドットコム「上期の経常黒字、過去最少=45%減-燃料輸入急増響く




 

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