北尾吉孝日記

『戦後教育と日本人』

2012年8月31日 16:23
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日本を創った男たち はじめにまず“志”ありき』(致知出版社)という本の「1 渋沢栄一 士魂商才の人」において、著者の北康利氏は「年を追うごとに日本人のスケールが小さくなってきていると感じているのは筆者だけではないだろう」と述べています。
先日もある人とそうした点について議論をしていたのですが、やはり日本の教育体制の在り方自体が、オリジナリティや歴史観といったものを養い、物の見方・考え方を育てるようなものになっていない、というところに根本的な問題があるのではないかと思います(※1)。
これまでも日本の小中高を通じての所謂「暗記教育」に対して私は批判的見解を度々述べてきましたが、丸暗記というのを一概に否定するものではなく、要するに暗記とテクニックで高得点を稼ぎ得る英国社数理中心のペーパー試験偏重体制に大きな疑問を感じています(※2/※3/※4)。
即ち、ある意味答えのない問題に対して如何に答えを出して行くのかという所で、その人の思考力や知恵といったものが最も顕れるのですが、答えのあるペーパー試験というのは所詮その殆どが知識をベースとした暗記中心のものであり、その人自らがどれだけのことを考えているのかというところが余り見えないわけです。
そして更には、例えば初代ドイツ帝国宰相のビスマルクも「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言っていますが、そういう歴史を学び一つの大きな歴史観を持ってものを考えて行くという姿勢が、学校教育の中で等閑になってきたのではないかと思っています(※5/※6)。
例えばあの東日本大震災を考える上でも、やはり歴史というものの中には様々な教訓が記されているように思われ、その辺りの話については昨年6月にも『歴史・哲学の重要性』と題したブログで述べた通りです(※7)。
現在のようなオリジナリティや歴史観といったものを殆ど養い得ず、教科書を絶対的基準として教科書の記載事項を暗記するだけで大体点数が取れるという画一化した教育から、日本は一刻も早く脱しなければなりません。
オリジナリティを啓発するような教育が今後も為されないようであれば、日本人の思考力や知恵といったものが発揮されて行くことはないでしょうし、あるいは大きなビジョン、もっと言えば100年後に日本は一体どうあるべきか、というような「国家百年の大計」は生み出されてはこないでしょう(※8/※9)。
『論語』の「学而第一の八」に「君子、重からざれば則ち威あらず(君子は軽々しいと威厳がない)」という言葉もありますが、今の「重からざる」政治家達の中に、きちっとした歴史観を持ち大局的見地から事を為し得る人物は、誰一人としていません(※10/※11)。
従って、現役の政治家の口からは「国家百年の計」が全く発せられませんし、自民党にしても民主党にしても、時の政権与党が「国家百年の計」を大いに謳いそれに邁進するなどというのは、ここ数年見られないわけです(※9)。
事程左様に今の教育の中で何か大きなものが失われてきたのではないかという気が私はしており、やはり今後日本が先ず以て為すべきは「国家百年の計」を構想出来る人物を育てるような教育体制を早急に確立して行くということではないかと思う次第です(※9)。

参考
※1:2011年7月11日北尾吉孝日記『日本教育再考
※2:2011年12月6日北尾吉孝日記『岡潔著「日本民族の危機」について
※3:2009年9月11日北尾吉孝日記『医学教育の在り方
※4:2009年5月20日北尾吉孝日記『言語教育の在り方
※5:2011年4月20日『日本人の底力』(PHP研究所)
※6:2008年12月5日北尾吉孝日記『誰が次の世界覇権を取るか
※7:2011年6月13日北尾吉孝日記『読書の在り方
※8:2010年12月6日北尾吉孝日記『個人と大衆
※9:2010年8月20日北尾吉孝日記『中国の一人当たりGDPから見えるもの
※10:2012年2月23日北尾吉孝日記『指導者たる資質とは何か
※11:2012年8月10日『仕事の迷いにはすべて「論語」が答えてくれる』(朝日新聞出版)





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  1. 必ずしも北尾さんの意見すべてを肯定するわけではありませんし、戦後教育はそれなりの役目を果たしてきたとは思っていますが、暗記主義の教育手法(実は明治以来続くものだと思っています)がもはや通じないことは明白です。発展の途上にあって限られた教育資源で国民の知的水準のボトムアップを図るには効率的であったし、大量生産主義の工業化路線には適していたのかもしれません。でも、弊害もたくさん生み出してしまいましたし、かつての欧米のように模倣すべきものがない現代にあってはもはや時代遅れです。一定水準の平等性を確保しつつ、キャッチアップ型ではない教育をどう構築していくか、ここが正念場だと思います。ゆとり教育の検証(私見では理念はよかったのに運用で失敗したと思っています)を含めてしっかりとした、しかも大胆な改革が求められていると思います。

  2. 戦前の学校教育に有って、戦後学校教育に欠落したものはなんでしょうか?

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