北尾吉孝日記

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御存知の通り、京都大学の山中伸弥教授はiPS細胞(新型万能細胞)の作製、即ち「体細胞のリプログラミング(初期化)による多能性獲得の発見」を理由に、ノーベル生理学・医学賞を授与されたわけですが、その快挙に対して心から敬意を表したいと思います(※1)。
また、「初期化の実現の可能性を最初に示した」共同受賞者のジョン・ガードン博士も、我が母校である英国ケンブリッジ大学の教授であり、初期化分野における二人の受賞について私は非常に喜んでいるところです(※2)。
今回の受賞によって、我が民族の科学技術面における一つの才というものが再び世界に示されたわけですが、初期化の分野は正に次の創薬に繋がるものですし、また食料等々の医療以外の分野においても、様々な形で広く利用されて行くものであり人類に大きな貢献が出来るというふうに確信しています。
今週木曜日にはノーベル文学賞受賞者が発表されるわけですが、有力候補の村上春樹氏は神戸高校の先輩で私の兄貴と同窓でもあり、兄弟揃ってのファンということで「山中先生に続いて、今年こそはノーベル賞を取れないかなぁ」と心密かに思っています(※3)。
医学・生理学の世界においては、ノーベル賞受賞者(1962年)のジェームズ・ワトソンがDNAの二重螺旋構造を解明する前は、細胞内のミトコンドリアについての研究が世界的な主流でしたが、その解明以来ミトコンドリアの研究者達の殆どはDNAの方に研究の主軸を移して行ったという歴史があります(※4)。
そういう中で遺伝子の世界において大変な技術進歩が起こり、正に今現在の頂点は山中教授が世界に先駆けて作製したiPS細胞ということだろうと思いますが、もう一方の人類の課題は細胞の老化防止ということであり、DNA一辺倒であった研究状況をもう一度細胞レベルにまで及ばせる必要があるのではないかと私は考えています(※4)。
例えば「染色体の末端に付いているキャップのようなもので、らせん状になっている大切な遺伝情報を保護する役目を担っている」テロメアが長くなれば平均寿命が延びるとか、あるいはサーチュイン遺伝子の働きを強めることで「肌、血管、脳など様々な器官が若く保たれ、寿命が延びる」といったように様々なことが言われていますが、何れ死を迎える人間の老化防止に対して大きく貢献するのは、細胞を如何に活性化出来るのかということです(※5/※6)。
この辺りの話については、先日御紹介した慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科の伊藤裕教授の四部作、『からだに、ありがとう 1億人のための健康学講座』(PHP研究所)、『臓器は若返る メタボリックドミノの真実』(朝日新聞出版)、『腸! いい話』(朝日新聞出版)、『健康は「内臓さん」で決まる』(サンマーク出版)でも詳述されていますが、植物においてミトコンドリアに相当する葉緑体を活性化し、光合成を促進して生長増進効果があると言われるように、人類においては細胞内のミトコンドリアを活性化することが若さを保つ上で非常に大切であるようです。この点で大変注目が集まってきているのが「ALA(5-アミノレブリン酸の略称)」という物質です(※7)。
例えば、以前BS-TBSで取り上げられた際、ALAというのは「農業、医療、美容、そして環境問題… 無限の可能性を秘めた物質」として紹介されていましたが、来月マドリードで行われる「第7回世界糖尿病予防会議(7th World Congress on Prevention of Diabetes and its Complications)」では前記の伊藤先生がChairを務める「Session 1.1.1.」において、私どもの関係者も参加して発言する予定となっています(※8)。

参考
※1:2012年10月8日Yomiuri Online「山中・京大教授にノーベル賞…iPS細胞作製
※2:2012年10月8日日本経済新聞「山中・京大教授にノーベル賞 iPS細胞の作製
※3:2012年10月8日MSN産経ニュース「ノーベル文学賞は11日発表
※4:2010年11月22日北尾吉孝日記『今後の医学の流れに関する私の考え方
※5:2009年10月6日AFPBB News「ノーベル医学賞、寿命をつかさどるテロメアとテロメラーゼ酵素とは?
※6:2011年6月12日NHKオンライン「NHKスペシャル|あなたの寿命は延ばせる ~発見!長寿遺伝子~
※7:2012年9月14日北尾吉孝日記『健康で長生きするために
※8:2010年12月5日BS-TBS『「神様からの宿題」~無限の可能性を秘めた“ALA”にかける男達~





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  1. 山中教授の受賞は、研究費を含め厳しい研究環境の中で地道に仕事を重ね研究とした成果と思いますが、己一人の功績とせず国や関わる人々のものとのコメントは印象深い。
    iPS細胞は神経系の疾病を持つ方々にとって福音となる事を期待します。命は寿命の長さではなくその質に価値があるのなら、アルツハイマー、パーキンソン、ALSなど壊れていく自分と向き合わざるを得ない方々の助けとなってほしい。
    村上春樹さんは残念でした。EUは期待値でしょうか。



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