北尾吉孝日記

この記事をシェアする

今月3日付の英ファイナンシャル・タイムズ記事「限りない経済成長の時代は終わったのか」では、「2000年代の情報革命のインパクトは、多くが魅力的な情報通信端末を介してもたらされた。これはどれくらい重要なのか?」とか、あるいは「我々が今体験しているのは、技術の重要な一分野における強力だが狭いイノベーション(技術革新)だ。これは重要か?」といった表現で、「デジタル情報革命」の重要性について時間軸の中で相対的に低い評価を下しています。
デジタル情報革命というのは、嘗て私がソフトバンク株式会社に在籍していた時、孫さんが「全社を挙げてあらゆる経営資源をインターネットに」と言われて取り組み始めたものですが、その推進に当たって私が彼と共有していた考え方というのは、次のようなものです。

『「農業革命」とは、人類が自然に生育している木の実や他の植物そして動物を捕獲して食べるだけであった時代から耕作し始めて自ら食料を生産する時代に入ったことをいいます。しかも、それは一つの共同体組織の中で共同生産する時代に入ったということでもある。鉄で出来た鋤や鍬、あるいは脱穀や製粉における水力というように、さらに時が進んで人類は様々な農機具等を利用しながら農業生産の飛躍的拡大を可能にした。
次の「産業革命」は、正に動力というものを使い、人間の筋肉を機械に置き換えることで、急激な生産増大を齎した。
そして今、「デジタル情報革命」の一体何が画期的かと言えば、これまでのように人間の筋肉に作用するのではなく、脳の役割に対して革新的変化を及ぼして行くということである。』(※1)

凡そ2年半前のブログ『Googleについて』でも述べたように、デジタル情報革命によって脳自体は勿論変わりませんし、あらゆる情報の中から情報を選択し、判断して行くというプロセスもありますので、当然ながら人間の思考の全てを置き換えるということを直接的には意味していません。
唯、記憶ということを一つ考えてみても、例えば「今のICチップの中に一体どれだけの情報が集積出来るようになったか」とか、あるいは「我々が仕事をする上でどれだけの効率性が実現されたか」というふうに、デジタル情報革命というものが如何に飛躍的に様々なものを効率化し得る可能性を齎したのかは、今更言うまでもないでしょう。
そして、デジタル情報革命のインパクトの極大化というのは、特にインターネットという技術基盤と既存の様々な技術が結合されて行く中で起こってくるでしょうし、21世紀における大きなイノベーションは、やはりインフォメーションテクノロジーをキーとして生まれてくるのではないかと私は考えています(※2)。
例えば、人間のヒトゲノムの解析がこれだけ短期間に為されたという事実は、取りも直さずインターネットの進展に拠るものであり、インフォメーションテクノロジーとバイオテクノロジーとが結合したバイオインフォマティクスという学問的・技術的領域の急速な進展が齎した成果に拠るものです(※2)。
また、あの3.11に福島で起きた大災害の後、今日的な話題になっている次世代送電網「スマートグリッド」についても、これまたインフォメーションテクノロジー、取り分けクラウドコンピューティングとエネルギーマネジメントの二つの技術を結合した領域です(※2)。
そして更には、エレクトロニクスがインフォメーションテクノロジーと結合する中で、ユビキタスネットワーク社会の具現化が可能になって行くということであろうと思います(※2)。
こうした時代を画する技術革新の例は他にも沢山ありますが、要するに私が何を言いたいかと言えば、「デジタル情報革命」というのは大革命であって過去の産業革命等と比して矮小化するようなものではなく、その革命自体も未だ緒に就いたばかりであり今後大変な広がりを見せて行くということです。

参考
※1:2010年3月5日北尾吉孝日記『Googleについて
※2:2012年8月17日北尾吉孝日記『上海儀電集団との情報産業ファンド共同設立の調印式で話したこと




 

(任意/公開)
(任意/非公開)

  • 小
  • 中
  • 大



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.