北尾吉孝日記

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所謂「安倍ノミクス」についてはネット上でも激しい論戦が繰り広げられていますが、私見を述べるならば、円安誘導のきっかけを多少作るという意味や民主党政権とは「次元の違う」チェンジを強調するという意味で、あの程度であれば許容範囲ではないかと思っています(※1)。
唯、実際問題としてある意味「日銀の独立性」を損なうことになるといった発言を余りにも繰り返していますと、ある程度経済が分かるオピニオンリーダーとなるような知識層が相手しなくなりますから、どこかで軌道修正が必要になるのではないかというふうに見てました。
そういう中で昨日、火消しの役目も果たしたような形で自民党政権公約が発表され、一応の軌道修正が為されたわけですが、私もインフレ目標については1%より2%の方が良いと思う一方、無制限の通貨発行や建設国債の日銀全額買取りまで言及するとなると、所謂「ハイパーインフレーション」の怖さを知る人達が安倍氏に懐疑的にならざるを得ないのは理解出来ます(※2)。
安倍氏が自身のフェイスブック上で紹介していたように、金融論で著名なイェール大学の浜田宏一教授も応援演説をしていたようですが、そもそも政策というものは金融経済情勢を見ながら臨機応変に考えて行くべきであり、例えば先述のインフレ目標を2%に設定するといったある程度の大まかなものは良いとは思いますが、建設国債の日銀引き受けというようなところまでは現況の中で余り言及すべきではありません(※3)。
来月16日の総選挙を経て形成される議会バランスの下、新しい内閣総理大臣が指名されポスト白川に向けて日銀も新体制が構築されて行くわけですが、そういう中で様々な情勢を考えながらその時々としてベストな金融経済政策を考えて行くべきであって、今のタイミングで日銀法の改正を掲げ政府・日銀は同方向に動いて行くというような発言は慎むべきでしょう(※4)。
安倍氏は昨日、「建設国債の日銀の買い切りオペによる日銀の買い取りを行うことも検討」とフェイスブック上で述べていましたが、次期政権の中で此の施策が必要であると判断する場合、現行制度において行い得ることですからそれはそれで実施すれば良く、今の議論を否定する必要は全くありませんし、余りにも「ハイパーインフレ!ハイパーインフレ!」と大騒ぎする必要もないと思います(※3)。
では何故に安倍氏の一連の発言が問題かと言えば、之を制度的に固定化し法改正を行うといったことを発信するからであり、夫々のタイミングにおいて政策を適宜判断し、きちっと実行して行く中で一刻も早いデフレ脱却を目指して行かねばならないことに違いはありません。
先月も『財務大臣・日銀総裁の適格性を考える』というブログで「日銀の歴代総裁というのは、どうも実体経済から乖離し金融政策は全て後手後手というような感がして」いると私は指摘しましたが、米国QE3(量的緩和第三弾)への追随を例に見ても分かるように本来的には日銀が先に動くべきものが、これまで非常に遅れてきた上、思い切ったことをやらなかったという面があるのも事実です。すなわち、”too late too little”でした。
次期日銀総裁ポストには、ひょっとしたら竹中平蔵氏が就くのではないかという感もしていますが、何れにせよ新しい日銀総裁には、研ぎ澄まされた洞察力を身に付け卓越した先見力を備えた、より実体経済に明るい人物に就任して貰い、寧ろ独立性を確立する中でまともな政策を胆識を持ち政策的リーダーシップを発揮して遂行して貰いたいというふうに思う次第です(※4)。

参考
※1:2012年11月21日一般社団法人 共同通信社「建設国債の日銀引き受け修正 安倍氏、インフレ目標もダウン
※2:2012年11月21日朝鮮日報「衆院選:安倍・自民党総裁の経済政策に高まる批判
※3:2012年11月21日安倍 晋三– Facebook
※4:2012年10月25日北尾吉孝日記『財務大臣・日銀総裁の適格性を考える




 

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