北尾吉孝日記

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連日各党から様々な「公約」が発表されていますが、今焦点が当たっているものは先週木曜日のブログでも取り上げた所謂「安倍ノミクス」や本ブログで時々指摘し続けてきた消費税等の金融経済政策に加え、大きく言って原発、TPP、国防軍(憲法改正)といった類のものです。
外交安保という観点からは更に、日本が抱える領土問題において今起こっている事態に如何に処して行くのか、あるいは米軍基地問題に対してどういうふうに対応して行くのか、ということも挙げられるのかもしれません。
上記争点に対する私の考え方を端的に述べるならば、先ず原発政策については「脱原発」やら「卒原発」やらと不明瞭な形で次々に語られていますが、基本的には今後とも此のフィールドにおいては科学技術の進歩があるわけですから、やはり一概に「我々は未来永劫こうして行くのです!」と現時点で決めるのも難しい部分があると思います。
例えば、高レベル放射性廃棄物の処理問題などは地中深くに埋めると言って見ても、実際問題として今どの都道府県も拒否反応を示し中々引き取り手がないというのが現況ですから、そうした問題の解決方法等も含む形で今後も継続的に相当の議論を積んで行かねばなりません。
それから原発の安全性という観点から述べますと、先ず以て活断層の上にある原発の再稼動などというのは論外ですが、当該問題については活断層であることを否定出来ないという学者がいる以上、疑わしきは全停止するという姿勢が大事であると私は考えています(※1)。
では活断層が確実に存在しないといった場合はどう考えるべきかということですが、あの3.11に福島で問題化したような40年も前の陳腐化した技術で建設された原発であれば永久停止が妥当であると思いますが、10年~20年程度の比較的新しいものであり尚且つ科学的検証を重ねた結果、マグニチュード8クラスの地震が頻繁し得る日本という国において、妥当性を有する安全性基準を満たしているという判断を下すのであれば、それはそれで稼動させるという選択もあり得ることではないかと思います(※1)。
唯、そうした場合においても高レベル放射性廃棄物の処理問題に対してどう処するのかという十分な回答を得ていない中では、稼動自体が如何なものかという問題は依然として付き纏うことに違いありません。
しかしながら今回その部分について、福島原発事故に因る放射能汚染は人体上殆ど影響ないというような結果が出ており、あの特別地域の子供や乳幼児の発癌状況については今後もチェックして行かねばなりませんが、余りにもヒステリックになる必要性はないというふうに思います。
従って原発政策については、今後再び3.11級の地震や津波が起こり得るという前提に立って、先ずは活断層の有無も含め大規模な天災に応じ得るかといった面から安全性を確認し、そしてまた高濃度の放射性廃棄物に対する処理の仕方に関して具体的結論を得る前には安易に再稼動出来ないことを根本で考えるべきでありましょう。
次にTPPについて述べますと、先ずTPP参加の是非を判断する上では日本の食料自給率に対する考慮を大前提としながら、世界の将来推計人口による食料確保の必要性やTPP参加に関する経済的な諸影響、更には世界的な食の高度化の進行や日本における農業者の高齢化の問題等を複合的に考えねばなりません(※2)。
そういう中で、例えば自民党は何時も「国益が守られれば、交渉していくのは当然」というような言い方をしますが、私に言わせればTPPに参加しないこと自体が国益に反することですから、本質的には不参加という選択肢はそもそもあり得ないと考えています(※3)。
FTA(自由貿易協定:Free Trade Agreement)全盛時代を迎える中で仮に日本がTPPに参加しないという場合、例えば日本の製造業は海外拠点の更なる拡張を推進し、TPP参加国で生産活動を行いTPP参加国にどんどん輸出をして行くようになるでしょうが、自民党は日本の輸出が益々凋落して行くことまで考えた上で上記方針を示しているのか、私には甚だ疑問です(※4)。
国益というのは短期的に見るのか中長期的に見るのかで常に変わってくるものであり、上述の考え方では中長期的に見てTPPのような世界的枠組みに参加しないということ自体が国益を損なうということであり、今はもう「日本の農業が壊滅する」などと言っているような時代ではなく、グローバリゼーションという既成事実の中で農業の生き方を摸索して行く時代であるときちっと認識すべきです(※5)。
私見を述べますとTPP参加と並行し、如何に農業の生産性を向上させ自給率を高めて行くかを数値化により厳密に管理すべく、例えば日本で唯一広大な土地が未だあり平野が多く温暖化して行くであろう北海道において、大農法による生産性の高い米国的農業を国策として実施して行くべきではないかと思います(※6)。
また今年7月のブログ『「長寿企業大国にっぽん」のこれまでとこれから』でも述べた通り、例えば単に米を作るということではなく加工して米のパンを作るとか、あるいは先進性を有する日本の缶詰技術を用いて付加価値を加えて行くといったように、加工製品を新たに創り出し世界に市場を求めて行く努力をするということが一つの解決策に繋がって行くのであろうと考えています。
それからもう一つ、日本は未だ以てTPP「交渉参加に向けた米国との事前協議」を行っているそうですが、此れについても私は2年前から主張している通り参加の意思表示を行った後に情報収集等々何でもすれば良いわけで、日本は物事の進め方が順序として全く逆であると思っています(※2/※7)。
事実、関係各国は参加の意思表示を行ってから時間を掛けて交渉しているのですから、日本も先ずは参加の意思表示を行ってルール作成の決定過程に参画し、そして時間を掛けて調査・交渉をした上で、結果として中長期的にみても日本の国益にならないと判断すれば辞退するといった結論に至っても良いのではないかということです。今のところ私はそのような結論は導かれないと考えています(※2)。
最後に日本の領土問題という観点から外交安保政策について考えますと、先ず現在の状況というのは中国に対して「尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない」と言いながら、片一方で韓国に対しては「竹島問題を国際司法裁判所に合意付託すること」を提案するものの、当の韓国は竹島をめぐる領有権問題は存在しないと主張しているというものです(※8/※9)。
先月5日にも『2013年の政治経済展望』というブログで橋下氏が主張する「国際司法裁判所での法による解決」の不毛性を批評しましたが、結局相手がある中で相手が提訴に応じなければこれまた何の解決方法にもなりませんから、現在の延長線上において最早為す術なしと言わざるを得ないということです。
それ故に過去の問題を一先ず解決する最大のチャンスになり得る今、即ち日・中・韓で新指導者が誕生してくるタイミングを何とか生かすべく、それぞれの国における新政権発足後にこれまでとは少し違う角度で領土問題を話し合って見なければならないのではないかというふうに私は捉えています(※10)。
そしてまた尖閣諸島問題の影で今余り表立って出てはいませんが、日露間には所謂「北方領土問題」が未だ残っており相変わらず膠着状態が続いているわけで、中韓との難局と共に日本にとって大変重要な問題の一つであるという認識はきちっと持っておく必要がありましょう(※11)。
此の領土問題の行方に関してこれから予想されるのは、次期首相と目される安倍晋三氏も目論むヘリポートや船着き場、あるいは灯台を尖閣諸島に作るといったことですが、仮に日本がそれを実行に移した時には日中間での武力衝突もあり得、中国が如何なる対応を見せると考えた上でそうした発言をしているのか、私には理解出来ません。
例えば竹島問題について言うと、韓国は「独島」を実効支配するために警備隊を派遣し灯台を設置する等してきましたが、島根県の一部であるとあれだけ主張する日本は自国領が占領されているにも拘らずそうした状況を放置し続け、そして最早韓国の実効支配を完全なものにされてしまっているというわけです(※12)。
あの時に日本として相当な抵抗をすべきではなかったのかと思うわけですが、何れにせよ嘗て韓国が竹島で行ったことを今度は日本が尖閣で行おうという場合、中国は日本のように指をくわえて見ているはずもなく、直ぐにでも戦艦を向けて来るであろうことは肝に銘ずるべきではないかと思います。

参考
※1:2012年3月21日北尾吉孝日記『思考の三原則~原発問題の考え方~
※2:2010年11月10日北尾吉孝日記『TPP参加における基本的な考え方2
※3:2012年11月21日時事ドットコム『「国益守れるなら交渉」=TPPで自民総裁【12衆院選】
※4:2011年7月20日北尾吉孝日記『岐路に立つ日本
※5:2012年11月27日ロイター『コラム:日本がおびえる「TPPおばけ」=山下一仁氏
※6:2010年11月4日北尾吉孝日記『TPP参加における基本的な考え方
※7:2012年11月21日毎日jp『日米首脳会談:TPP交渉参加、野田首相「協議加速」 衆院解散が翻弄、筋書きご破算
※8:外務省:日中関係(尖閣諸島をめぐる情勢)
※9:外務省:竹島問題
※10:2012年10月5日北尾吉孝日記『2013年の政治経済展望
※11:2012年9月28日北尾吉孝日記『NHKドラマ「吉田茂」と日本の領土問題~愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ~
※12:2012年8月17日北尾吉孝日記『日本の領土問題に思う




 

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