北尾吉孝日記

『2013年の中国経済』

2012年12月21日 18:05
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昨今、各種メディアでは「中国経済は来年どうなるか」といったテーマで様々報じられていますが、私の認識の根底にあるのは、中国経済が世界第二の経済大国になったと言って見ても実際問題として外需依存が強いが為に、基本的には米国経済や欧州経済等の影響を強く受けるということです。
そういう意味では欧米の経済状況がどうなって行くのか、そしてまた日中間の領土問題が如何なる展開を見せるのか、といったことも13年の中国経済を洞察する上では、やはり非常に大事なことであると思っています。
例えば直近の統計数字を見ても、本年「9月に沖縄県・尖閣諸島を巡り日中関係が悪化し、大規模な反日デモが発生」した影響もあって、日本の対中直接投資は10月に前年同期比3割減と大幅に落ち込み、1~11月累計(同11・3%増)で見ても「同50%増を記録した昨年に比べると、鈍化傾向が鮮明になって」きています(※1/※2)。
之はやはり日本の経営者の多くが、所謂「中国リスク」を再び考え始めASEANへのシフトを一層進めているということであって、中国にとっても「対中投資全体が鈍化傾向にある」中で日本との領土問題を今以上に深刻化させる方向で動くのは賢明ではないということです(※1/※3)。
中国の12年実質GDP成長率の推移を見れば、「1~3月期8.1%、4~6月期7.6%、7~9月期7.4%」と最早「保八(8%成長を守れ)」は難しく脱落してしまいましたが、結局のところ中国は少なくともその位の成長率を達成せねば、政治が不安定化するリスクを孕んでいるわけです(※3/※4)。
これから中国が「保八」を実現する上で非常に大事になってくるのは、その経済体質を如何にして外需依存型から内需依存型へと転換して行くか、取り分け都市部と農村部の所得格差(※5)、沿岸部と内陸部の所得格差(※6)、そして同地域内における所得格差(※7)が非常に大きくなっていますから、内陸部に向かっての投資というものを如何に活性化して行くかということです(※8)。
例えば08年9月の「リーマンショック」の後、中国は世界恐慌を未然に防ぐべく内陸部分に重きを置いた内需拡大のために4兆元という金を使い、今度また「農村部の都市化」に向けた流れの中で1兆元超を投ずるとも言われていますが、此の都市化を何とかして急速に推し進め社会不安に繋がるリスクというものを大幅に減らして行かねば、政治面における大きな問題が次々と顕在化してくるのではないかと思われます(※9/※10/※11/※12)。
そして政治面で問題が生じてくるとなれば、特に中国という国では賄賂や腐敗が蔓延っており、更には五十超の民族を抱える多民族国家でありチベット等の少数民族が宗教面において入ってくる要素もあるわけで、高度成長を持続出来ない場合に中国としては様々な意味で非常に難しい状況に陥ってしまう可能性があるということです(※6/※13)。
高度成長を遂げている中では格差の歪といったものは表面化してはきませんから、中国における当面の重要戦略となるのは先ず以て経済を成長させることに全力を挙げ、その成長によって内需拡大に力を入れながら内陸部の所得水準の上昇を図り、そして総人口に対する都市人口の割合を2030年に70%に持って行くとされるものを前倒しで実現して行く、ということではないかと私は考えています(※6/※10)。
今週水曜日、世界銀行は「2013年の中国の経済成長率を8.4%とし、従来予測の8.1%から上昇修正した」わけですが、私が見るに中国経済は一応の底を付いたと思いますから、その位の数字と考えるのが妥当ではないかと捉えています(※14)。
唯、それというのは米国において所謂「財政の崖」から転落せずに差し当たっての妥協点が見出され、そしてまた「欧州ソブリン危機」が小康状態を保っているという前提の中では十分に達成出来るといった話であり、中国においても上述したような喫緊の政策課題に大変な注意を払い、きちっとした取り組みが為されて行かねばならないというふうに思います(※15/※16/※17)。

参考
※1:2012年12月18日日本経済新聞「11月の対中直接投資、6カ月連続で前年割れ
※2:2012年12月18日MSN産経ニュース「中国に“誤算”?外資の対中直接投資5・4%減 11月
※3:2012年12月4日株式会社日本総合研究所「前年を上回る成長率となる2013年のアジア」(向山 英彦)
※4:2012年7月10日北尾吉孝日記『中国の景気減速を如何に考えるべきか
※5:2012年3月JILPT 中国「都市と農村の所得格差、2年連続で縮小―2011年、それでも3.13倍
※6:2011年12月22日北尾吉孝日記『米誌タイムの今年の人「プロテスター」について
※7:2012年12月11日日本経済新聞「中国、所得格差は危険域 暴動頻発の背景に ジニ係数、世界平均を大きく上回る
※8:2012年10月2日株式会社野村総合研究所「中国が進める経済・社会の構造改革-日本企業の事業機会はどこにあるのか-」(松野 豊)
※9:2011年2月2日北尾吉孝日記『中国の今後最大の課題
※10:2012年12月17日日本経済新聞「中国、内需主導に転換 7%超の成長持続 新指導部、来年の経済政策
※11:2012年12月17日朝日新聞「中国、1兆元以上をインフラ整備に投資、経済成長を刺激
※12:2012年9月19日北尾吉孝日記『QE3前後における世界経済の情勢認識
※13:2008年12月5日北尾吉孝日記『誰が次の世界覇権を取るか
※14:2012年12月19日ロイター「2013年の中国経済成長率予測を8.1%から8.4%に修正=世銀
※15:2012年11月2日北尾吉孝日記『迫り来る「財政の崖」
※16:2012年11月9日北尾吉孝日記『オバマ再選後の米国と習近平体制発足後の中国
※17:2012年10月5日北尾吉孝日記『2013年の政治経済展望




 

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