北尾吉孝日記

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「六験八観」(文末A.及びB.参照)というのは、安岡正篤先生が述べたというものでも必ずしもありませんが、『呂氏春秋』という本に「人間観察、人間鑑定の武器」として書かれていることです(※1)。
此の人物評価については中国明代の著名な思想家である呂新吾の『呻吟語』の中にも沢山出ていることであって、昨年3月の『人物を得る』というブログでも下記述べた通り、之も一つ大事なことです。

【呂新吾が何を述べているのかと言えば、まずは「大事難事に擔當(たんとう)を看る」ということです。
即ち、事が起こればその担当官の問題への対応能力を見るということ、そしてそれに併せて、仮にそのような事において自分自身はどのように処するのかということを常に主体的に考えるということです。
次に述べていることは「逆境順境に襟度を看る」ということ、即ち襟度の「襟」というのは「心」を指しており「度量の深さを見る」ということであります。
世の中というものは良い時が来れば悪い時も必ず来るわけで、万物全て平衡の理に従って動いており、そのような時に襟度を見ると言っています。
更には「臨喜臨怒に涵養を看る」と書いてあり、「臨喜」というのは喜びに臨んだ時に恬淡としているか、「臨怒」というのは怒りに臨んだ時に悠揚としているかというようなところに涵養を見ると述べているわけです。
そして最後に「郡行郡止に識見を看る」ということ、つまりは大勢の人(群行群止)の中で人を見るというように書かれています。
その人が大勢の中で大衆的愚昧を同じようにしているのか、それとも識見ある言動をとっているのかということを見る中で人を見抜いて行くということです。】

そして、『論語』の「為政第二の十」では次のように述べられていますが、孔子というのは人を見抜く基本的な方法として「視・観・察」の三つを挙げています。

 書き下し文『子曰く、其の以(な)す所を視、其の由(よ)る所を観、其の安(あん)ずる所を察すれば、人焉(いずく)んぞ廋(かく)さんや、人焉んぞ廋さんや。』
 現代語訳『孔子がおっしゃった。「人の一挙一動を見て、これまでの行為を詳しく観察し、その行為の動機が何なのか分析する。そして、その人の安んずるところ、つまり、どんな目的を達すれば満足するのかまで察する。そうすればその人の本性は隠しおおせられるだろうか?決して隠せおおせないものなのだよ。』

要するに人物の見極め方としては、その人が一体如何なる動機で以て如何なる行為をとり、そしてどういうふうにその目的が達成され、その時にその人はどうしているのか、という上記『論語』の考え方に尽きると私は思っています(※2)。
そしてまた例えば、「喜ばせて、楽しませて、怒らせて、恐れさせて、悲しませて、苦しませて」何を見るのかと言えば、その全てはその人物が恒常心をどれだけ保ち得るかということです。
それから更に「出世したら、豊かになったら、善いことを聞いたら、習熟したら、一人前になったら、貧乏になったら、落ちぶれたら、昇進したら」如何に人間が変わるのかというのも、やはり環境変化における恒の心、「恒心(常に定まったぶれない正しい心)」を見ているではないかと思います(※3)。
このように人物の見極め方としては色々ありますが、恒の心がどうなのかの一点こそが急所であると言え、此の恒心を維持出来る人が君子であるということです。

A.【六験】(※4):
①之を喜ばしめて、もってその守を験(ため)す→喜ばせて、節操の有無をはかる
②之を楽しましめて、もってその僻を験す→楽しませて、偏った性癖をはかる
③之を怒らしめて、もってその節を験す→怒らせて、節度の有無をはかる
④之を懼(おそ)れしめて、もってその特(独)を験す→恐れさせて、自主性の有無をはかる
⑤之を哀しましめて、もってその人を験す→悲しませて、人格をはかる
⑥之を苦しましめて、もってその志を験す→苦しませて、志を放棄するかどうかをはかる
B.【八観】(※4):
①貴(たか)ければ、その進むる所を観る→出世したら、どんな人間と交わるかを観る
②富めば、その養う所を観る→豊かになったら、どんな人間を養うかを観る
③聴けば、その行なう所を観る→善いことを聞いたら、それを実行するかを観る
④習えば、その言う所を観る→習熟したら、発言を観る
⑤止(いた)れば、その好む所を観る→一人前になったら、何を好むかを観る
⑥窮すれば、その受けざる所を観る→貧乏になったら、何を受け取らないかを観る
⑦賤(せん)なれば、その為さざる所を観る→落ちぶれたら、何をしないかを観る
⑧通ずれば、その礼する所を観る→昇進したら、お礼を仕事で返すかどうかを観る

参考
※1:Google ブックス「人間の品格: 安岡正篤先生に学ぶ
※2:ベンチャー通信Online 著名起業家「“野心”ではなく、”志”を持ってほしい」(北尾 吉孝)
※3:2012年7月20日北尾吉孝日記『恒心を保つ
※4:Google ブックス「図解安岡正篤の人間学: 人間のあるべき姿と真の成功とは




 

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