北尾吉孝日記

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あの巨大バブル崩壊後の90年代以来続いている「日本病」は、08年リーマンショックの後に段々と世界中に病原菌を撒き散らし、結果として米国も日本病に汚染されてき、欧州についてもユーロという枠組みが抱える根本的矛盾と相俟って大変な状況になってきているわけですが、そうした中で世界の主要な中央銀行の何れもが金利をゼロに近付け大幅な量的緩和を実施して行くということになってきています(※1)。
例えば、「バーナンキFRB議長は資産買い入れにより過去数年間で約2兆5000億ドルの資金を市場に供給してきた」上、今月のFOMCでは「失業率が6.5%程度で安定するまで事実上のゼロ金利を継続する方針」も表明し、また「ドラギ現ECB総裁は(中略)金融市場にことし1兆ユーロ以上の潤沢な資金を供給し、ユーロ圏防衛のために無制限に国債を買い入れると約束している」というわけです(※2/※3)。
先週金曜日のロイター記事にも「焦点:インフレ抑制一辺倒を再考する世界の中央銀行」というのがありましたが、嘗て世界中の中央銀行のある意味での最大の課題であったどうインフレと対峙し如何にして未然に防ぐかというのが、今は寧ろインフレターゲットをどのように引き如何にして世界経済全体を浮揚させ得るかというふうになってきています。
長期に亘るゼロ金利と幾多の量的緩和を実施してきたにも拘らず、今尚デフレから脱却出来ていない日本が嘗て使った手を今世界各国も使い始めてきたという状況の下、日銀を始め世界の中央銀行のスタンスが嘗てとはある意味大きく変わってきたということだと私は捉えています(※1)。
当面振り子の針がそちらの方向に振れる中で疲弊した各国経済における政権の新たな担い手が生まれてくるという局面を迎え、取り分け日本においてはこれまで続いてきた此の深刻な現況を一刻も早く脱すべく、財政出動と共に相当なところまでインフレを齎し得る金融政策を更なる量的緩和も含めて採って行くということになるでしょう。
日本においてデフレからの脱却こそが第一主眼ということに対してさえ、様々な経済学者でも甲論乙駁している状況ではありますが、取り敢えずは政治的な要素も加わって此の眼前の不況克服といったことに主眼が置かれざるを得ないような状況であるということかと思います。
仮にインフレターゲットを2%に設定したとして、そこまで持って行くという形でのコントロールが上手く為されないとなれば、世界中が過剰流動性に陥り最悪の場合はハイパーインフレ的な著しく高率なインフレになるということにもなりかねず、その匙加減は困難を極める状況にあるというふうに理解しています。
先日の「NHKスペシャル|日本国債」の中でもあったように国債の価格暴落の話もまた出始めてきているわけですが、インフレ状況下において金利がゼロのまま留まるということはあり得ませんから当然金利も上昇して行き、そうなると国債漬けになっている日本の金融機関、取り分け運用対象が無く国債漬けとなっている地方金融機関等が壊滅的打撃を受けることにもなりかねず、今度は日本金融のシステミックリスクが危ぶまれる状況にもなり得るということです(※4)。
此の辺りの匙加減を誤るととんでもない結果が生じるかもしれないということを現在の経営政策の任に当たる自民党はよく認識して行かねばなりませんし、此の非常に難しい匙加減が本当に出来る有能な日銀マンや政策立案に関与する政府の役人が今正に求められているわけです。
一方向に揺れるとなれば極端な方向に進み易く大変な問題にもなり得ますから、今夜発足予定の安倍内閣や経済政策に関わる審議会等おいては、バランスが取れた形での人選を行うべく必ず相対する意見を持つような者を選出するという中で、双方の意見を聞きながら中庸の政策を採って行くということが大変重要であると思います。
勿論、現段階においてはカンフル注射が必要だという意見も理解出来ますが、要するにそれをどの辺りでどういうふうにバランスを利かせながら切り替えて行くか、といった形で塩梅を調節し得るような状況にして置くことが非常に大事だと思います。

参考
※1:2012年10月5日北尾吉孝日記『2013年の政治経済展望
※2:2012年12月21日ロイター「焦点:インフレ抑制一辺倒を再考する世界の中央銀行
※3:2012年12月13日日本経済新聞「FOMC、量的緩和策強化を決定 失業率目標を導入 米長期債買い入れ、ゼロ金利継続も
※4:2012年10月25日北尾吉孝日記『「貿易赤字過去最大」を受けて




 

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