北尾吉孝日記

『教養人たる3つの条件』

2013年3月13日 14:57
この記事をシェアする

教養とは一体何かというのは、非常に難しい問いです。
色々な知識を身に付けたとか学問を修めたとして、何でも良く知っているというのが果たして教養と言えるのでしょうか。
私自身、知識と教養とは自ずと違うものだと捉えていますが、では教養のある人というのは一体どういう人を指して言うのでしょうか。
拙著『君子を目指せ小人になるな』の第2章の3『「君子」の定義』で御紹介した通り、大阪大学名誉教授の加地伸行先生は『論語』の中の「君子」を「教養人」というふうに訳され、教養人とは「家族のみならず、他者の幸福をも願う人」「知性を磨くだけでなく、徳性が加わった人」と定義されています。
加地先生の言われる教養人イコール君子とし、上記拙著にて述べた私の考える君子像イコール教養人かということですが、仮にそうであるとすれば教養人というのは、知識を積み重ねただけの人ではないということが分かってきます(参考:私が考える君子の六つの条件―①徳性を高める、②私利私欲を捨て、道義を重んじる、③常に人を愛し、人を敬する心を持つ、④信を貫き、行動を重んじる、⑤世のため人のために大きな志を抱く、⑥世の毀誉褒貶を意に介さず、不断の努力を続ける)。
ここで教養ある人とは、上述したような君子的人間であるということは理解出来ますが、次に考えねばならないのは、その教養を如何にして身に付けるのかということです。
知識は知識として勿論必要であり、取り分け自己の精神を磨き高める人間学に関わるものは、教養人を形成する上での大変重要なポイントの一つになってくると思います。
自由主義と理想主義を一以って貫いた日本の誇るべき知の巨人・河合栄治郎先生は、教養を身に付けるとは「自己により自己の人格を陶冶する」ことだというふうに定義されていますが、私の考える君子像イコール加地先生の言われる教養人とした時に、河合先生の言われる「自己により自己の人格を陶冶する」ということも同じではないかと思います(※1)。
要するに、教養人というものは知識の集積においても勿論優れた人が多いのですが、それにもまして人格が陶冶されているということこそが、教養人たる所以なのであろうと思います。
そして人格が陶冶されてきた時、世の中で生活して行く上で如何なる違いが生じてくるかと言えば、それは世のため人のためという志というものを持とうとしてくるということです。
更には、自らの意志で自らを鍛え創り上げて行く「自修の人」といったことなのであろうと思いますが、此の教養人の為り方としては誰かが助けてくれるようなものではなく、自らが自らを創り上げ築いて行く以外に道はありません(※2)。
自らが自らを創り上げる過程あるいは創り上げた結果として、片方では周囲を感化するという役目を担っており、之が「一燈照隅、万燈照国」という考え方にも繋がるというわけです。
以上、世のため人のために何かをしようという志を持つこと、そして人を感化し「一燈照隅、万燈照国」と持って行くこと、此の2つが教養人の生活態度の中に表れることだと私は考えています。
それからもう一つ、教養人の中には最早その域に達したと思い満足するような人は誰もいません。
教養人たる者は、益々自戒して未だ至らずと反省し、そして一層の努力を重ね常に己の精神を高めようとしている人です。
『論語』の「泰伯(たいはく)第八の七」で下記述べられていますが、正に「任重くして道遠し」ということが分かるのが教養人であって、人道を極め多くの人を感化し此の社会をより良くして行くべく、一生努力し続ける姿勢を持った人が教養人なのであろうと思います(※3)。

 書き下し文『曾子(そうし)曰く、士は以て弘毅(こうき)ならざるべからず。任重くして道遠し。仁以て己が任と為す。亦(また)重からずや。死して後已(や)む、亦遠からずや。』
 現代語訳『曾子が言った。「学徒たる者は度量があって、意志が強く、毅然としていなくてはならず、責任重大で道は遠い。仁道を推し進めるのが自らの責務であり、この任務は重大である。死んで初めて終わるとは、何と道程は遠いことではないか!」』

以上述べてきた教養人の生活態度の中に表れる3つのことは、陽明学流に言えば事上にして磨錬するということにもなりますし、知行合一ということにも繋がっていることだと私は考えています。

参考
※1:2011年2月15日『河合栄治郎「学生に与う」現代版―現代の学生に贈る』(桜美林大学北東アジア総合研究所)
※2:2011年10月6日北尾吉孝日記『師について
※3:2012年4月19日北尾吉孝日記『起業を志す方へ~人間学の重要性~




 

(任意/公開)
(任意/非公開)



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.