北尾吉孝日記

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「黒田異次元緩和」後の相場は想定通りの展開になっていますが、株価については先月も『日米相場展望』というブログでも指摘した通り日経平均が16,000円台から18,000円位まで上がる方向で動くだろうと見ており、為替については1ドル=100円を突破して105円程度まで円安進行が起こってくるのではないかと思い始めています。
そして仮に1ドル=105円になった時、日本経済に如何なる事態が生じてくるかというのが今私の一つ関心事ですが、先ず為替で見れば本日「旅行収支に円安が追い風 赤字3割減、外国人来日3割増」という日経新聞記事もあったように、やはり円安になれば海外からの旅行者が増え国内経済にとっては良い側面が出てくることにもなるでしょう。
他方、日本の「エネルギー自給率は4.8%(平成22年)と極めて低」く、況して原発停止という状況下、LNG輸入価格は上昇し続けて此の「2月の輸入価格は4年5カ月ぶりの高値をつけ」、そして輸入量についても東日本大震災前の規模よりも25%増加し(参考:輸入量―10年7001万トン、12年8731万トン)、今後震災前の「1.5倍程度に膨らむ可能性があること」も指摘されています(※1/※2/※3)。
勿論、過半は長期で売買契約を結んでいますから直ぐに大きな影響は出てこないとは思いますが、上述したように輸入価格も上がり輸入量も増えるという中で、仮に1ドル=105円になるとすれば益々貿易収支の足を引っ張ることになり、エネルギーの対外依存という部分で悪い側面が露呈されることでしょう。
また、昨年後半までの円高局面の間に創り上げた様々な事柄、例えば生産拠点の殆ど全てを海外に移すとか、海外から安価な部品を仕入れ日本で製造・販売を行うといったシステムを壊すことなく、スムーズに上手く運んで行き得るか否かという辺りを一つ心配しています。
「安倍ノミクス」が始まって以来、兎に角「気」が急激に変わってきており、百貨店売上高外食消費動向にも表れているように、デパートが活況を呈しているとか高級レストランもかなり混んできているとか、あるいは給与も少し上げて行こうかといった動きも色々な企業で出てきています。
また、日本では株式や投資信託を資産として保有する人の割合が少なく、米国のように資産効果が非常に働く国ではなく、資産増が消費増に結び付くような構図にはなってはいませんが、その内土地の価格も値上がりするでしょうからやはり個人や企業が金を消費や投資に動かす理由になることは間違いありません。また企業側においても利益増につながったところでは財布の紐が大分緩くなってきているという側面があるというのも事実です(※4)。
それ故、GDPの60%程度を占める消費を刺激することにもなって行き得るわけですから、そういう意味では日本経済の景気が本当に浮揚し、デフレからの脱却が出来るのではないかと私は期待しています(※5)。
日本のデフレ問題は極めて貨幣的な現象であり、そしてまた金融政策がワーカブルであるということは今年一月のブログ『「安倍ノミクス」への期待感~デフレ脱却と金融政策~』等でも指摘しましたが、それは貨幣だけで調節出来るということではなくまず投資家や消費者そして各企業の経営者の「気」がポジティブに変化していき、その中で基本的には「需給ギャップ」と称される総需要が総供給に満たない状況が改善され、解消されてくることになるということです(※6)。
それからもう一つ設備投資も増え行かねばなりませんが、之については過去幾度も日本に襲ってきた為替の嵐を思う時、旧来の所謂製造業関連の輸出企業は結構慎重ではないかと思われます。
即ち、例えば当時の固定相場制下において1ドル=360円から308円に大幅に切り上げられたスミソニアン体制への移行、それからまた1日で20円程度の円高進行が起こり僅か「1年で235円/$から150円/$台となった」プラザ合意といった歴史を必死の思いで耐えてきた日本の輸出企業を思えば、そうした歴史的記憶が未だ残っている状況において円安がずっと持続し今後更に円安になって行くと思う人は殆どいないのではないかということです(※7/※8)。
そしてまた、そもそも人口減少・少子高齢化社会に向かう日本において設備投資を実施して行くのかと言えば、伝統的なものづくりについてはクエッションマークであると私は思っています。
そういう中で当ブログで幾度も指摘してきた通り、日本は非常に生産性向上の遅れたサービスセクターを有しているわけですから、当該分野における生産性を如何に上げて行くのかという形で、サービス産業における設備投資というようなものを誘発して行く必要性があると思います(※9)。
之と同じように農業という一産業においても、TPPに加盟して動いて行くということになった以上、1952年に制定され日本農業の近代化を遅らせた大きな責任がある法律、「農地法」(法令番号:昭和二十七年七月十五日法律第二百二十九号)を大幅に見直し抜本的改正に踏み切って、農業の生産性を上げられるようにして行かねばなりません(※10)。
昨年7月のブログ『「長寿企業大国にっぽん」のこれまでとこれから』でも述べた通り、例えば単に米を作るということではなく加工して米のパンを作るとか、あるいは先進性を有する日本の缶詰技術を用いて付加価値を加えて行くといったように、農業から出発した加工業というようなものを新たに創って行く、ということが今後必要ではないかと私は考えています。

参考
※1:2013年3月13日MSN産経ニュース「海洋でガス産出 国産エネルギー実用化期待
※2:2013年3月21日日本経済新聞「LNG輸入価格が4年5カ月ぶり高値 2月、円安反映
※3:2013年3月10日毎日jp「LNG:輸入、震災前比1.5倍に 原発停止で急増
※4:2012年5月24日北尾吉孝日記『デフレ脱却の処方箋
※5:2013年2月1日北尾吉孝日記『貯蓄税・消費税・日本版ISAに対する私の考え方
※6:2009年12月30日北尾吉孝日記『デフレの怖さ
※7:2008年4月23日北尾吉孝日記『BRICs通貨の行方
※8:2012年8月10日北尾吉孝日記『相場というもの
※9:2011年11月15日北尾吉孝日記『日本経済浮揚のために
※10:2011年11月14日北尾吉孝日記『TPPと日本





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  1. 賛成です
    日本人の海外旅行には不利ですが、例えば近場の旅行とか身近なところで楽しみを見つける事です、ね
    エネルギーは省エネルギーを務める事、日本人も賢くなっていると思います



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