北尾吉孝日記

『使用・任用・信用』

2013年4月16日 17:19
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江戸初期の天才官僚・松平信綱は「天下の仕置(しおき/統治・管理・処罰)は重箱を摺子木(すりこぎ)にて洗ふ様なるべしと。摺子木にては隅々までは洗へず、隅々まで能(よ)く為さんと思へば悪(あ)しゝと」述べたと言われていますが、やはり組織というのは上が枝葉末節にまで関与するとなると、却って治まり難くなるものです(※1)。
昔から人の使い方として、「使用(単に使うこと)」「任用(任せて用いること)」「信用(信じて任せて用いること)」とあるわけで、任せて用いた以上ぐちゃぐちゃと言うべきではありませんし、信じて任せて用いた以上なおさら細かいことを言うべきではありません(※2)。
そして任せて用いた後は、任せた結果を見てどう判断するかということ、つまり「人を見損なったなぁ」と思うのか「良い人を選んだなぁ」と思うのかという話であって結局は自分の選択の眼の問題だと言えるでしょう。
安岡正篤先生も『東洋宰相学』の中で、「リーダーとなるべき者が読んで実行すべきものとして」佐藤一斎の『重職心得箇条』(文末参照)を提示されているように、上には上の役目というものがあるわけです(※3)。
では、如何なる仕事を経営者や役員等の重職がせねばならないかと言うと、例えば企業で言えば、「これから10年・20年、如何なる舵取りをして行くのか」とか「此の激変する世の中でどのように生き残って行くのか」といったこと、あるいは「自分が営んでいる業を如何にして変化に対応させて行くのか」といった戦略を練って行くということです。
細かなことを部下に任せられない場合、トップはそうした大きな戦略を描く時間がなくなることになります。自分の本来の職責を限られた時間内に効率的に如何に果たすかという観点からも任せて用いるということが、非常に大事なポイントなのだと思います。

≪重職心得箇条―要約(※4)≫
一、小事に区々たらず、大事に抜目なし。重職の重たる字は肝要なり。
二、大度を以て寛容せよ。己に意あるもさしたる害無き時は他の意を用うべし。
三、祖先の法は重宝するも、慣習は時世によって変易して可なり。
四、自案無しに先例より入るは当今の通病なり。ただし先例も時宜に叶えば可なり。
五、機に従がうべし。
六、活眼にて視るべし。物事の内に入りては澄み見えず。
七、苛察は威厳ならず。人情を知るべし。
八、度量の大たること肝要なり。人を任用できぬが故に多事となる
九、刑賞与奪の権は大事の儀なりて軽々しくせぬ事。
十、大小軽重の弁を失うべからず。時宜を知るべし
十一、人を容るる気象と物を蓄る器量こそが大臣の体なり。
十二、貫徹すべき事と転化すべき事の視察あるべし。これ無くば我意の弊を免れ難し。
十三、信義の事、よくよく吟味あるべし。
十四、自然の顕れたるままにせよ。手数を省く事肝要なり。
十五、風儀は上より起こるものにして上下の風は一なり。
十六、打ち出してよきを隠すは悪し。物事を隠す風儀とならん。
十七、人君の初政は春の如し。人心新たに歓を発すべし。財務窮すも厳のみにては不可なり。

参考
※1:2012年10月29日WISDOM『松平信綱 -「知恵出づ」と呼ばれた江戸初期の天才官僚-
※2:2012年4月17日北尾吉孝日記『役員選任に関する私の考え方
※3:2006年6月1日「入門・安岡正篤の帝王学 解説 武田鏡村
※4:古今名言集~座右の銘にすべき言葉~ 語彙辞典「重職心得箇条




 

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