北尾吉孝日記

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2ヶ月程前のブログ『「安倍ノミクス」と成長戦略』の中で、私は「成長戦略に関しては、大きく言えば所謂新産業育成策というものと構造政策というものに分けられ(中略)構造政策に関しては更に規制緩和策と競争政策に分けられる」と言いましたが、本ブログでは此の構造政策と既得権益という観点から、以下述べて行きたいと思います。
先ず規制緩和策の成否について言うと、現況を見て率直に申し上げるならば、今の自民党体制の中で強力に推進して行くというのは、殆ど無理なことではないかというふうに感じています。
なぜ無理かと言えば、あらゆる分野に蔓延る族議員達の非常に激しい抵抗というものがあるからで、改革においては常に旧態依然としたものを守ろうとする人間が、スクラムを組んで必死に抵抗してきます。
凡そ4年前『改革の難しさ』というブログでも述べた通り、江戸時代の水野忠邦の改革や中国の王安石の改革等々、歴史上試みられた国の改革の多くは失敗に終わったわけですが、その改革を阻んだ主因は久しく続いた因習であったと私は解釈しています。
それ故、トップが余程強力なリーダーシップを発揮する以外、現自民党体制下では本当の意味で規制緩和を実現させる方向に持って行くのは大変難しいと見ていますが、例えば大衆薬のネット販売解禁などは全面解禁を実現すべく、今漸くそうした状況が打ち破られようとしているのは非常に良いことだと思います(※1)。
他方、先月19日の日本経済新聞『なぜ「特区」なのか(大機小機)』でも指摘されている通り、例えば「特区構想の問題は、厄介な規制改革に真正面から取り組むのではなく、地域を特定して規制の別枠にしようという点にある(中略)。一見、改革に動いているようにみえて既得権益は守られる妥協の産物ともいえる」といった状況もまたあります。
即ち、特区構想とは実質的には規制緩和されない部分をそのまま残して行こうという発想を孕んでおり意外と危険なものだということですが、つまりは族議員というのはあの手この手で知恵を絞って、「自分達に票を入れてくれる」「自分達を支援してくれる」既得権益を守る方向に何時も動いて行くということです。
従って、規制緩和推進チームを創設する上では、第一にトップが将来社会のために「こうした方が良いに違いない」「こうすべきだ」という理性、及び「何としても成し遂げるんだ」という強い意志を持って決意をし、そしてその改革を実現する陣容を先ずは閣僚の中にきちっと揃えねばなりません(※2)。
大臣自らが族議員の一人などということでは話が進むはずもなく、既得権益というものに囚われず真の意味で日本の国益を考え得る人を、有力官僚として配置するということが大変重要になるでしょう。
そしてその陣容を揃えた上で、今度は民間からも胆識を持った人達を引っ張り込み、そうした人の力をどんどん活用しながら、既得権益に左右されることなく国益を徹底追求し得るチームを編成せねばなりません。
評論家の見識の域を出ない人を登用するというのではなく、胆識を持った大いに物申せる人物を民間からも募り政府と一体となって推進して行くということが大事なのであって、その位の固い決意なくして、そう簡単に成就するような話ではありません。
それからまた、行政というのも自分達の天下り先等の権益を確保し続けようとする力学が常に働く大組織の一つですから、之に対しても行革ということを同時並行的に徹底推進し楔を打ち込んで行かねばなりません。
過去行革担当相というポストが設けられてきましたが、何か意義ある成果が収められたということは殆ど聞かれることもなかったわけで、やはり昔で言えば土光敏夫さんや加藤寛さんのような胆識を持った人が行革推進に務めねば、結局改革の中身が骨抜きにされて行くという可能性は十分にあるということです。
次に競争政策に関して言うと、之はある意味上述した規制緩和策と一体化して進めて行かねばならないことであり、その流れの中でTPPというものもあって結果として此の競争政策の推進に繋がって行くことが大変重要だ、というように私は上記ブログにおいて位置付けました。
此のTPPについて日本は交渉参加が遅すぎたが故、今後の交渉の中で何か成果らしい成果を得ることが出来るかと言えばほとんど不可能ではないかと見ていますが、そういう中で一番大事なポイントになるのは、相手国の立場も弁えながら誠意を持って交渉するということだと思います。
「巧詐(こうさ:上手く誤魔化すこと)は拙誠(せっせい:下手でも真面目)に如かず」という韓非子の言葉もありますが、要するに交渉というのは相手もあることですから、自身の利益だけを考えるのではなく誠実に交渉している、という誠実さが相手に伝わるということが何よりも大事なのだと思っています(※3)。
そういう意味でもTPPという多国間交渉において、農業分野という『「例外」を要求することは、相手に不利を受け入れさせることであり、その代償を与えねばならない』わけですし、そもそも国民の経済的利益ということを考える場合、グローバリゼーションという既成事実の中で農業の生き方を摸索して行く時代にあって、最早「日本の農業が壊滅する」などという議論はout of the questionです(※4/※5)。
日本の「総農家数は、1960年の606万戸から2010年には253万戸へと半分以下に、農業就業人口は60年1454万人から12年251万人へ実に83%も減少し」、そして「今では、GDPに占める農業の割合は1%に過ぎない」にも拘らず、農村地域の既得権益代表者である農水族議員等は国益という言葉を持ち出して、「TPPが食料安保を脅かす」と騒ぎ立てるという始末です(※6)。
また、日本の将来にとって重要な政策課題ということではエネルギー政策もその一つでありますが、例えば日本が食料とエネルギーの自給を迫られる場合を考えますと、食料は日本が国土を有する限りにおいてある意味日本でも何とかし得る問題と言える一方、エネルギーに関してはそうは行かないという状況もあるわけです(※7)。
そうした性質を帯びる「原油の99.6%を海外からの輸入に依存して」いるという中で、その供給停止リスクを叫ばずに食料に対し大騒ぎしている族議員は余りにも滑稽極まりなく、そしてまた日本という国が一体どれだけ多くの食料を無駄にしているのかという状況を十分に弁えることなく、彼らは軽々にものを言うべきではないでしょう(※8)。
ここぞとばかりに「黒船来襲」と脅威を煽り、妙に脅し掛けられたような話ばかり出してきては、39%とされる全くナンセンスなカロリーベースの食料自給率で以て、国民を可笑しな方向に揺さ振って行くのは怪しからん話であって、族議員の影響力というのは徹底的に排除されねばなりません(※7)。
上記農業分野のみならず、例えば日本医師会の見解通りにTPP参加によって「国民皆保険は崩壊すると訴える」族議員等もいるわけですが、皆保険を無くならせるか否かは国民が決めることであり全ては選挙に反映して行くのですから、そうしたことは起こり得ないということを私は強く訴えていきたいと思います(※9)。

参考
※1:2013年5月13日日刊工業新聞「厚労省、医薬品ネット販売を“条件付き”全面解禁も
※2:2009年4月2日北尾吉孝日記『改革の難しさ
※3:2011年6月8日北尾吉孝日記『成功する人、失敗する人
※4:2013年5月号選択『「交渉力」とはなにか
※5:2012年11月29日北尾吉孝日記『衆院選争点に対する私の考え方~原発、TPP、国防軍~
※6:2013年3月8日WEDGE Infinity「農協がTPPに反対する本当の理由 農業人口250万人なのに異様な政治力
※7:2013年2月26日北尾吉孝日記『「TPP共同声明」を受けて
※8:資源エネルギー庁_エネルギー白書2012 – 第2部 エネルギー動向「第1章 国内エネルギー動向 第3節 一次エネルギーの動向
※9:2013年5月10日ロイター「ブログ:日本人と死の覚悟





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  1. 北尾先生のご意見は、尤もだと思います。
    私なりに感じたことを述べさせていただきます。

    1、 安倍ノミクスの3本の矢は、景気対策としては良いのですが、財政出動による財政破綻と増税のジレンマを孕んでいます。
    2、 14年前の橋本内閣でのPFI法(民間資金等の活用による公共事業等の整備等に関する事業法)を思い出しました。
    3、 民間資金と民間のテクノロジー・ビジネスモデルで公共事業コンパクトシティを作ろうとしました。
    4、 それから10年後、東日本の大震災が発生し未体験の原発事故も起こりました。
    5、 活断層の無い山里・山河を妥協の産物ですが、復興特区にし、ニューディル政策としてスマートシティを作ることがベターだと思います。被災者を等価交換でタワーマンションに入居してもらいます。仮設住宅ではなく耐震構造の本格的なものです。
    6、 既存の住宅ローンも等価交換と一緒に移ります。二重ローンにはなりません。
    7、 被災地の官公有地(道路等)も等価交換し、権利床を売却すれば財政赤字も減ることでしょう。財政赤字を増やすどころか、減ることになります。今様での徳政令です。
    8、 全員ハッピーにすれば、族議員の既得権益の抵抗も少しは和らぐでしょう。
    9、 等価交換した湾岸地帯は、ソーラーパネルベルト地帯にしても良いでしょう。
    10、 建築資金の捻出は保留床を売却することになります。財政出動を伴わない資金計画は民間の重要旺盛な住宅ローン資金で賄います。
    11、 後は、林立したタワーマンションにイノベーション的付加価値を総合設計した金融商品たるリートを作ることになります。
    12、 このイノべーション付加価値として、太陽光パネル葺屋根のエネルギー技法とか、LED地下植物工場のバイオ農業技法・薬草医療技法が考えられ、少しはTPP開放を推進するとも感じます。
    13、 民間資金と民間のイノベーション金融商品で「民の町づくり」をすることになります。財政出動での「官の都市計画」では古すぎると思います。
    14、 スマートグリッド・スマートシティ・スマートコミ二ティなので、電子商取引のネット銀行・オンライン登記申請のワンストップで、設計・施行・監理することになるかと感じます。



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