北尾吉孝日記

『不安ということ』

2013年9月26日 17:45
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スタンフォード大学の心理学者、ケリー・マクゴニガルという人は「不安との向き合い方」として①『「脳は不安を感じるものだ」と意識する』、②「漠とした不安を感じても、その理由探しをしない」、③「不安を感じても、落ち着いて過ぎ去るのを待つ」ということを挙げ、早い話が不安を持つこと自体を止めてしまえば良いというふうに言っています。
以下この不安ということについて私見を申し上げたいと思いますが、先ず以て私は彼女の言うようには思っておらず、人間である以上当然ながら不安とか心配とかいった様々なことが付き物であると考えています。
但し、その時にいけないのは「杞憂」ということ、要するに「心配する必要のないことをあれこれ心配すること」であって、心配すべき事柄を心配しないのは、これまた問題だと言えましょう。
特に経営者の立場から言うと私は物事を判断する時、仮に失敗したとして最大限のリスクはどの程度なのかを先ず見て、我々の現況から考えてその程度であれば十分affordable(許容可能)となった場合、次に上手く行ったらどの程度のリターンが見込み得るかを見、そしてリスクとリターンを算盤勘定に掛けて判断を下します。
何かを判断する時、「失敗したらどうしよう・・・」というふうにああだこうだと悪い方ばかりに考える人もいますが、私の場合は基本的な考え方としてポジティブに物事を考えるということがあります(※1)。
即ち、上述したように最大限のリスクの程度等を常に頭に入れながら、be positiveであるべきだと思っており、私に言わせれば心配すべき対象はそこであって、初めから漠然と心配しているようでは一切の投資は出来なくなります。
2000年頃、私は1500億円を集めることを決心し、日本のインターネット業界だけに投資をするインターネットファンドを創設したわけですが、その時「北尾さん、インターネットだけに投資するのですか?未だ日本にインターネットの業界なんてありませんよ」と言われ馬鹿にされました。
ただ私の頭の中ではっきりしていたことは、米国と日本を比べるとインターネットの世界では5年日本が遅れているということであって、その確信は11年6月のブログ『「ドットコムバブル」再来か』等でも述べた通り、次のような米国の状況をウォッチしていたところに拠ります。
米国では1995年頃から所謂「ドットコムバブル」期へと入って行きましたが、米国でインターネット企業が雨後の筍のように出てきた1994~95年、私は毎月1回1週間程度ホテルに泊まり込み、朝から晩まで様々なベンチャー企業を呼んで精査をし、次々と投資をして行きました(※2)。
此の時期におけるインターネット企業というのは、売上や利益といったものが殆ど無くともコンセプトIPO、即ちビジネスモデルのコンセプトのみで公開をし、それに対して異常な値が付くというような極めて可笑しな状況でしたから、当然そうした異常なバブルは破裂することになりました(※3)。
ナスダック総合指数で見ると、2000年3月10日の5048.62をピークに急落して行くことになるわけですが、私自身は丁度バブルの絶頂期に資金集めが出来たが故1500億円というお金が集まり、そしてバブルが破裂して皆値下がりした中で、米国より5年遅れで育って行くであろう日本のインターネット業界に対する投資を始めるということが出来ました(※3)。
こうしたディシジョンメイキングに関しては、「北尾君、投資の世界しかもプライベートエクイティに投資をするようなビジネスというのは千三つの世界(1000件に3件程度しか成功しないような世界)なのだから、一つのインダストリーだけにそれだけの資金を投じれば損をするのは目に見えている。そんな馬鹿なことは止めておいた方が良い」というふうに心配してくれる向きが非常にありました(※4)。
あるいは、最早心配を通り越して狂人扱いされたりもしましたが、その結果がどうであったのかと言えば、事はちゃんと私の思う方に動いて行き、私どもは創業後8年目にして日本一のベンチャーキャピタルになったわけです(※4)。
之は偏に物事を見る目の問題だというふうに思われ、そういう意味では通常の人が心配することであっても、その分野において目を持っている人は必ずしも心配しないことがあるということを我々は深く認識しておかねばなりません。
自分が相手の力量をよく分かっているのならば兎も角、相手の力量が分からない時はくれぐれも余りに御節介を焼いて人のことをどうのこうの言うべきではない、ということも序でに述べて置きたいと思います。

参考
※1:2013年7月26日北尾吉孝日記『不確実な世界と共に生きる生き方
※2:2010年5月17日北尾吉孝日記『米国における投資事業の再開について
※3:2011年6月8日北尾吉孝日記『「ドットコムバブル」再来か
※4:2011年4月4日北尾吉孝日記『2011年度入社式訓示




 

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