北尾吉孝日記

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一昨日発表された米国の「9月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が14万8000人増にとどまり、市場予想の18万人増を大きく下回った」ということで、QE3(量的緩和第三弾)の縮小開始時期が遅れるのではないかという声が急速に出てきました(※1/※2)。
その結果もあって、昨日の東京市場では1ドル=97円台前半まで円高が進み、日経平均株価は前日比287円安(終値ベース)、そしてまた、昨夜3ヶ月ぶりに「米長期金利の指標である10年物国債の利回りが節目の2.5%を下回」るということになり、本日日経平均は100円超の下落となっています(※3)。
今月7日に『17年前と今~クリントン政権下での政府機関閉鎖を考える~』というブログを書きましたが、議会の「ねじれ」から起ってくる諸問題のために「年明けには米財政問題を巡る混乱が再び繰り返される恐れ」もあるわけで、米国経済については中々すんなり上手く行くという感じではないように思います(※4)。
そしてまた、中国経済については先月も『リーマンショックから5年を経て』及び『サマーダボスでの李克強首相の話を中心にした雑感』というブログで述べましたが、確かに「7-9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比7.8%増と4-6月(第2四半期)の同7.5%増を上回」ってはいるものの、このままどんどん盛り返して行くかと言うと何かそうでもなさそうな雰囲気もあります(※5)。
そういう中で今、確実な歩みを進めて行きそうな国は世界中で日本ぐらいになってきているわけですが、これまた2020年東京オリンピックが一つの頼みの綱であるだけで、これから2度に分けて消費税率を5%も上げて行くというのは、経済に対して明らかにマイナスに作用します(※6/※7)。
従って、日本の成功あるいは「安倍ノミクス」の成功といった部分は「3本の矢(金融政策・財政政策・成長戦略)」の三本目次第ということになるのですが、昨今の報道を見る限りにおいて、安倍首相が当初意図していたであろう改革の姿が、どんどん後退して行っているように思います(※8)。
例えば、安倍首相は「復興特別法人税の廃止は賃金の上昇につなげることが前提との認識」を示したり、また本日の日経新聞記事にもあるように、「一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売は、一部を解禁対象から外す方向。企業の農地所有の自由化も先送りする」といった具合です(※9/※10)。
あるいは、国家戦略特区における解雇規制の緩和や法人税率の引き下げ等についても何かまた全て中途半端になってきているわけですが、「こんなことまでやるのか!」というぐらい諸外国を圧倒して踏み込んで行かねば、「2020年までに海外勢による対日投資倍増という目標達成」は間違いなく不可能です(※11/※12)。
先週火曜日Facebookでも指摘したように、此の「第三の矢」ということが一番大事で、今臨時国会では産業競争力強化法案や国家戦略特区関連法案といったことが最大のポイントであって、その評価は直ぐに株式市場で現れてきます(※13)。
上述した程度の手しか打てないのであれば、「あぁ、やはり安倍も駄目なのか。安倍ノミクスも失敗か」というふうにもなりかねず、仮にそういう評価が下されたならば、日本のマーケットもどんどん元気がなくなって行く状況にもなりかねません。
つまり私が何を言いたいのかと言えば、大変なネガティブインパクトを齎すことになる5%の消費税率引き上げを実施しようとしている中、十二分な政策対応がなければマーケットは直ぐに売りに掛かるということであって、安倍内閣には是非その覚悟で成長戦略に取り組んで貰いたいと思う次第です。

参考
※1:2013年8月14日北尾吉孝日記『秋相場を左右する日米の重要政策について
※2:2013年10月23日ロイター「9月米雇用統計は予想下回る、FRB慎重姿勢強める公算
※3:2013年10月24日日本経済新聞「米長期金利が2.5%割れ 3カ月ぶり 緩和長期化観測と株安で
※4:2013年10月18日日本経済新聞「米財政、時間稼ぎの合意 年明けに攻防再び
※5:2013年10月18日ブルームバーグ「中国:7~9月GDPは前年同期比7.8%増-市場予想と一致
※6:2013年9月19日北尾吉孝日記『2020年東京オリンピック開催決定後の日本~消費増税判断および経済株式展望~
※7:2013年10月1日北尾吉孝日記『消費税率の引き上げ表明を前に~橋本龍太郎内閣と安倍晋三内閣の違い~
※8:2013年3月22日北尾吉孝日記『「安倍ノミクス」と成長戦略
※9:2013年10月16日ロイター「復興特別法人税廃止は賃金上昇が前提=安倍首相
※10:2013年10月24日日本経済新聞「規制緩和、足踏み 企業の農地所有自由化も先送り
※11:2013年10月15日ニューズウィーク日本版「アングル:対日投資倍増へ動き出した政府、戦略特区で法人税20%
※12:2013年10月24日日本経済新聞「法人減税で綱引き 14年度税制改正、議論始まる
※13:2013年10月15日北尾吉孝(SBIホールディングス) – Facebook




 

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