北尾吉孝日記

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昨今、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」論を巡る賑わいが各所で見られますが、先ず以て火山列島かつ地震大国の日本という国の何処であれ、再度の3.11級の地震や津波により甚大な原発事故が起こっても不思議ではないという認識を持つべきです(※1)。
そしてまた、一年程前のブログ『衆院選争点に対する私の考え方~原発、TPP、国防軍~』でも指摘したように、原発政策を巡っては上記前提に立ちながら、活断層の有無も含め大規模な天災に応じ得るかといった面からの安全性確認も求められると共に、高濃度の放射性廃棄物に対する処理の仕方に関して具体的な結論を得るということを根本で考えねばなりません(※2)。
私自身いまでこそ、此の六本木の執務室でHORIBAの「環境放射線モニタ PA-1000 Radi」という機械を使って放射能を測定しなくなりましたが、あの3.11以来毎日測り続けていました。
一昨日、現在の値がどうかと試しに測定してみたところ、2年半前に大体0.032程度だったものが0.046という数字になっていて、やはり確実に汚染物が蓄積されて行くという状況になっているのだろうと思います。そういう意味では大変な悪影響を及ぼし続けているのですから、小泉元首相のように「原発ゼロ」というふうに言う人がいるのは当然のことだと思います。
東京電力株式会社(以下、東電)の現状を見るに、民主党政権時に会社更生法を適用して国有化しないという愚かな決断が下された結果として、国民負担が最大化するような形となり、現在益々泥沼に入って行っているような気がします(※3/※4)。
例えば今、東電の福島第一原発での就業希望者は殆どいないという状況になってきているようですし、そこで実際に働いている人は疲労困憊し正に疲弊しているという状況で、その証拠に色々な現場作業の「管理能力が著しく低下して」きているようです(※5)。
例えば、政府や東電が「汚染水対策の柱の一つとして位置付けている」多核種除去設備「ALPS」を巡って、「9月に試運転を始めた1系統目はトラブルが続発、たびたび停止して」いるわけですが、それは「装置内にゴムシートを置き忘れたこと」に因る停止であったという具合に、ヒューマン・エラー(人為的ミス)というものが結構起ってきている部分があります(※5/※6/※7)。
そしてまた福島第一原発に対しては、例えば他原発からの応援部隊と言っても皆行きたがらないとか、あるいは縦割り行政の故か人を出したがらないというふうに、現場に行く人すら段々と減ってきている状況にあるようですが、伝え聞くところによると定年退職した人にもう一度戻ってきてくれないかという呼び掛けも行っているらしく、之は最早民間企業としての体を成さない状況になっているということです。
嘗ての優良企業であった東電に就職しようとする人など、殆どゼロに近い状況になって行くのではないかと思いますし、そこまで酷くないにしても、東電という会社が果たして利益を上げられるような形に持って行けるのかと大勢が疑問視しています。
例えば莫大な借金を抱えた一民間企業が有する様々な施設について、保険に入ろうにも日本の保険会社で応じる所もなく、また海外にも再保険をする所もないだろうと思われ、そうした状況の中であのような施設を持つということは考えられません。
更に言うと、例えば今月27日の朝日新聞にも「東電、除染費用支払い拒否 74億円、国は黙認」という記事がありましたが、金が無いから払えないという所にまた国民の税金から金を貸し続けるというのは大問題であって、最早国有化せねば仕方がないということなのだと思います。いずれ法的措置がとられざるを得ないということになるでしょう。先日の日経新聞によると今上半期(4~9月)の業績が経常利益1200億円前後ということですが、何故そんな利益が出るのか私には理解出来ません。会計検査院試算では、国の東電支援金の回収は最悪31年、国が負担する利払い負担が794億円にも達するのに何故すべての利益を国は回収しないのか、回収していけば東電に利益など出るはずはないのです。仮に、利益が出るようであれば電力料金を引き下げるべきではないでしょうか。
先ほど民主党政権は全く以て理解不能な仕方で東電を処理してしまったと指摘したように、あの時最終決定を下した民主党にも当然ながら責任はありますが、より非難されるべきは経済産業省だと私は考えていて、原子力行政を巡る政財官の癒着関係を利用して東電を国有化させぬよう、当該省がずっと動いてきたというふうにも思われるわけです。
あの時東電に対して法的処理を行い国営企業にしなかったことから、今此の問題が益々深刻化して行く可能性が出てきているということで、そういったことの責任も今でも一番擦った揉んだしている経産省という組織にあると言い得るのではないかと思います。
「脱原発」ということにおいては「電力料金が上昇する」とか「国際競争力が低下する」といった様々な議論があることも事実ではありますが、今見られる東電と同じ類の状況が今後さらに生じてこないとも限りません。
要するにこれまで私は、東電を破綻処理して国営企業にし国が全力を挙げて事態の収拾を図って行くというのであれば、3.11以前の原子力政策に継続性を見出し得るというふうに議論していたわけですが、何でも彼んでも経産省の言い成りになって国営化しないという時に、次々と東電同様のケースが生じたら一体どうして行くというのでしょうか。
そのように考えると、小泉元首相が「原発ゼロ」と言い出すのも無理もないことであって、本当に国が「アンダーコントロール」の状況に持って行けるのであれば、原子力発電というのもワークさせるべきで、もういっそのこと今の内に原子力関係は全て国が管理するというぐらいのことがあっても然るべきだと思います。
一度事故が起ったら民間で何とか出来る話ではなく、今の東電を見ていても国営処理なかりせば、問題は様々な放射性物質の半減期まで解決しないような気が遠くなる程の時間がかかる状況に直面しています。民間企業としての東電が、コスト意識と収益拡大化という中で安全対策が何時も疎かになっていたのは、今回の福島原発事故に全て現れているではありませんか。
従って、やはり東電国有化という本来なすべきを為すということを出発点として、国が断固たる姿勢で以て汚染水問題の解決に全力を挙げるとか、廃炉に向けて全力投球するということがなければ、「アンダーコントロール」と言っていた2020年東京オリンピック開催すらどうなるか分からないという事態にまで進展し得ると、私は大変な危惧の念を抱いています。
一般家庭でも大体10年経てば色々な物が傷んでくるにも拘らず、今回福島で問題化した原発は40年も前の陳腐化した技術で建設されたものであり、そうした陳腐化に対する対処も碌々なされぬまま運転されてきたわけで、今後は将来起こり得る危機に備えて徹底した国の管理の下、何から何まで国が責任を持って取り組んで行くべきです。またそんな遠くなく将来に建設されて40年以上経つ原子力発電所が続々と出てくる状況であり、こうしたものをどうするかということも深刻な問題です(※8)。
そもそもが電力行政そのものについても、予てより指摘し続けている東西分離の送電システム等々と、未だ矛盾だらけの事柄が沢山温存されたまま今日まできているわけで、此の際そうした問題全てを変えてしまわねばならないというふうに私は思っています。

参考
※1:2011年3月17日北尾吉孝日記『福島原発事故後の日本と米・独・仏の対応の違い
※2:2013年3月11日北尾吉孝日記『東日本大震災から二年~原発政策最大の問題解決に向けて~
※3:2011年12月30日北尾吉孝日記『今再び問われる東電処理の在るべき姿
※4:2012年3月1日北尾吉孝日記『「民間事故調報告書」を受けて
※5:2013年10月4日日テレNEWS24「規制庁が東電社長呼び出し 汚染水管理不備
※6:2013年10月9日日本経済新聞「汚染水処理、新設備ALPSで再開 福島第1
※7:2013年10月28日日本経済新聞「福島第1、汚染水浄化装置2系統目が稼働
※8:2012年3月21日北尾吉孝日記『思考の三原則~原発問題の考え方~




 

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