北尾吉孝日記

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今月4日の日経新聞記事「記録の申し子・イチロー 数字との向き合い方変化」では、ヤンキースのイチローが「マリナーズ時代とは記録の捉え方が変わった」ということが書かれていました。
上記記事にある通り、マリナーズ時代「オンリーワンの方がいいなんて言っている甘いやつが大嫌い」と言っていた彼は今、「数字はどうでもいい」というふうに発言しているようですが、彼が変わった最大の理由というのは今年40歳を迎え、自身の体力が衰えてきているということにあるのだろうと思います。
凡そ3年前、彼が「MLB史上初の10年連続200安打及び7度目の両リーグ最多安打を達成」した際に書いたブログで、私は「動体視力に関する様々な研究結果を見てみますと、彼の動体視力は40歳位から陰りが出てくると思われ、その歳が一つの節目になる」と述べましたが、取り分け彼のようなバッターの場合に問題となる此の動体視力が、当然のこととして衰えを見せ始めているのではないかと推察します。
過去毎年200本以上ヒットを打ってきたという一番脂の乗ったところから段々と遠ざかって行き、更には「戦力外」などというこれまで全く噂にもならなかったような噂までされるようになる中で、衰え行く自分を思った時にスター軍団ヤンキースの一員としてどうすべきか、自分の居場所はどうあるべきかという部分が陰に陽に発しているのはないでしょうか。
それ故そういう意味では彼の上述したようなコメントというのは、彼自身のコメントではあるものの彼の昔のようなコメントではないような気がしており、之は彼自身の意識の仕方が自然と変わってきていることの一つの表れではないかと思います。
嘗て野茂英雄氏や松井秀喜氏がそうであったように、彼も時間の問題で第一線から退いて行かねばならず、あと数年後には誰しもが迎える道を辿って行かねばならないわけで、彼にとっては寧ろこれから後どうするかというところが大事なのだと思います。
ヤンキースに所属しているからというだけでなく、やはり老い行く中で昔と同じスタンスでいたのでは仕方がありませんから、自分の来し方を振り返ると共に、今後どう生きて行くかを考え始める時期にきているのだろうと思います。
先月のブログで宋の朱新仲という人が唱え実践した「人生の五計」を御紹介しましたが、言ってみればその一つ、如何に老い行くかという「老計」を野球選手は一般人よりも少し早くに考え始め、それまでとは全く違う生活に入って行かねばなりません。
そしてまた、それをもっと早くに経験するのが相撲取りであって、現役時代に一定の成績を収め得なかった力士があの若さで一体どう生き行くのかということが重要問題になるわけですが、相撲以外のことで潰しが効くかと言えば中々効くものではありません。
親方として或いは解説者として引退後も角界で生きて行くことが出来るのは本の一部に過ぎず、例えば元力士がちゃんこ鍋屋を始めても成功するのは極僅かで殆どが消え去って行くような状況ですし、たとえ横綱まで上り詰めたとしても格闘家として負け続きだった曙太郎氏(第64代横綱)のような人もいるわけです。
之はサッカー選手にしても他のスポーツ選手にしても同じ類であって、皆その人生を懸けて選手になり中でも選び抜かれたような有名選手になろうと必死になって努力をし、そして仮に漸くそうなれたとしても、そこにはスポーツ選手としての年齢の壁という問題が横たわっています。
即ち、仕事によっては60歳であろうが70歳であろうがその全盛期がずっと続く人もいる中で、スポーツ選手というのは職業における全盛期が直ぐに終わってしまうというわけで、そういう意味では極めて若くして「第二の人生」をディシジョンせねばなりません。
また「マー君とハンカチ王子」を例に言うと、田中将大氏のように上手く行った人は良いですが、斎藤佑樹氏の方はひょっとしたら最早一軍に上がることすら出来ず、プロの世界から去って行かねば仕方がないかもしれないという状況に現実問題として直面してきており、こうした残酷な形でもっと早くに己の限界というものが見えてくる人も出てきています。
更に言うと、怪我により選手生命が突如として絶たれるというケースも多々あって、色々な面で全く潰しが効かないという非常に難しい部分もこれまたあるわけで、此の世を生き抜くということはタフですが、こうした状況を見るにスポーツ選手はある意味タフな中でも最もタフだと感じます。
現役時代もタフそして引退後もタフというタフな世界を敢えて行く人は結構いますが、スポーツを仕事にするのはそれだけ大変なことだということを十分認識し覚悟してその世界に踏み入らねば、「自分の人生って、どうなんだろう・・・」と後々心配するような状況になってしまうということなのだと思いますが、上記について皆様はどのような見解を御持ちでしょうか。




 

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