北尾吉孝日記

『2014年の日本経済展望』

2013年11月19日 11:05
この記事をシェアする

年末に近づき、経済誌や新聞を中心として様々な所から来年の日本経済の見通しに関する意見を求められることが多くなりましたので、本ブログにて私の現在の見方についてコメントをしておこうと思います。
現在の日本経済の足元を見るに、先週木曜日に発表された13年7~9月期GDP速報値の実質が年率換算で1.9%増だったわけで、3.8%増(年率換算)だった4~6月期のGDP改定値に比して伸び率はかなり縮小しております(※1)。
此の1.9%という伸びに寄与したのは公共投資と住宅投資でありますが、前者については「2月に成立した緊急経済対策に伴う公共事業が本格化し、7~9月期は前期比6.5%増と4~6月期の同4.8%増から一段と拡大」しました(※2)。
また、後者については住宅は大きな買い物ですから、消費増税を前にして駆け込み需要が当然出てくるという中で、7~9月期は前期比2.7%増と4~6月期の同0.4%増から拡大を見せました(※2/※3)。
他方、1.9%という数字にブレーキを掛けたのが個人消費と輸出であって、前者については4四半期連続のプラスであるものの7~9月期は前期比0.1%増ということで、どうも消費は尻すぼみの状況になってきているようです(※3)。
また、後者についても途中少し円高になった部分もあって前期比「0.6%減と、3四半期ぶりにマイナスに転じ」、更に「設備投資も0.2%増と(中略)3四半期連続のプラスとなった」ものの「伸び率は1.1%増だった前期に比べ鈍った」ということで、先行きに若干の不安を覚える7~9月期GDP速報値の発表となりました(※3)。
来春からの消費増税がなされた後に一番大事になるのは、如何にして消費を増やして行くかということですが、消費を増やすためには賃金の上昇ということが必要不可欠になります。
之に関して言うと、例えば「来春卒業予定の大学生の就職内定率は、10月1日時点で64.3%と3年連続で上昇した」とか「上場105社の3割、賃上げに前向き」や「冬のボーナス バブル期以来の伸び」といった報道があったり、あるいは「雇用者が受け取る賃金の総額にあたる名目雇用者報酬は前年同期比0.5%増」と「2四半期続けて増えた」という形で労働需給を見ても割合堅調です(※4/※5/※6)。
もっとも、労働時給や賃金水準の状況をみても割合順調です。日本の労働環境ということでは「企業数の99.7%、雇用の約7割」を中小企業が占めていますから、此の中小企業にまで賃上げが波及して行くか否かが非常に大きなポイントになります(※7)。
それから今後を占う上でもう一つ大事になるのは、オリンピック特需に向けて設備投資がどう動き出すかという部分ですが、之については例えば50年前の東京五輪の頃に建てられたホテル等で2020年の五輪開催前に間に合うように建替えを検討するといった活発な動きが見られるということもありますし、あるいは設備投資に先行する機械需要を見ても比較的底堅く推移しています(※8)。
そしてまた、原油価格を見ても「8月下旬に110ドル強にあったWTI(米国軽質原油)期近物先物価格は、10月下旬に入り、100ドルを割れた」ということで、恐らく100ドル割れ程度で安定するのではないかと見られています(※9)。
更に、バーナンキ後継のイエレン氏が随分ハト派的なスタンスつまり現状維持のスタンスというものをはっきりと全面に打ち出しつつある中、QE3(量的緩和第三弾)の縮小開始は暫く延びるという観測の下で、世界の株式市場も堅調に推移しており昨日の日経平均終値も15,164円と15,000円を突破しています。
従って、資産効果もある程度期待できるのだろうというふうに思われますし、また「10~12月以降は消費増税前の駆け込み購入が本格化する公算が大きい」ということもありますから、上記してきた事柄から総合的に判断するに、10~12月期のGDP指標については結構良いものが出てくるのではないかと今のところ考えています(※8)。
そうした状況の中で14年の日本経済や如何にということですが、今月15日の日経新聞に載っていた「民間調査機関11社が14日まとめた実質成長率」見通し(前年度比)を見ますと、例えば超強気派の野村證券1.6%や強気派のSMBC日興証券1.3%に対して、ニッセイ基礎研究所は0.2%と非常に弱気です(※6)。
上記11社平均では0.9%ということで私自身も1.0%近辺を予想していますが、此の1.0%近くになるかどうかは欧米の景気動向というもの、そしてまた、中国を中心としたアジア政治経済の動向がどうなるかという外的要因が強く影響することになると思います(※6)。
先ず中国については、今月1日に発表された「10月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は51.4となり、9月の51.1から上昇し(中略)1年6カ月ぶりの高水準」となりましたし、先日も「SBI-復旦日中バイオテクノロジーセミナー」参加のために出張し現地で色々な人の話を聞きましたが、先行きに対して強気な人が結構多くいました(※10/※11/※12)。
また、先々月に『サマーダボスでの李克強首相の話を中心にした雑感』や『リーマンショックから5年を経て』というブログで指摘した「シャドーバンキング(影の銀行:融資規制のある銀行を介さない金融取引全般)」の問題について言うと、解消していないことは勿論事実でありますが、それ程大きな問題にならず収束に向かうのではないかと見ています。
そして金融市場改革ということでは、先週火曜日に閉幕した三中全会の決定事項は非常に曖昧模糊としており、その実行性に関して余り評判は良くありませんが、昨日の日経新聞記事「中国、長期金利の上昇鮮明 金融政策引き締め観測」にもあるように、金利の自由化ということをある程度進めて行こうという意思は表れているように思います。
先月15日のブログ『陸家嘴集団、新希望集団との戦略的提携について』でも触れた上海自由貿易試験区(FTZ:中国政府が経済のグローバル化に合わせて積極的な対外開放政策として開設した特別地域)に関しては、今月16日にも産経新聞に「特区×ネット証券で中国の個人取り込め SBI、現地企業と合弁設立」という記事がありましたが、此の試験区に対して私は非常に強気です。
中国における金融市場として、今後は香港のプレゼンスが低下して行き上海の役割が高まってくるのではないかと思われますが、私どもとしては出来るだけ早くに上海の証券市場で株式を公開したいと考えています。
次に欧米について簡単に述べますと、欧州については今月7日、非常に有り難いことに「ECBが予想外の利下げ」を行ったわけですが、このように日欧が緩和強化に動く中、未だ力強さを取り戻していない米国は量的緩和縮小を先延ばしせざるを得なくなるでしょう。
そして先延ばし縮小であったとしても、イエレン氏はそれ程ドラスティックに縮小して行かないというふうに思われ、アジアの株式市場も強いという状況の中で、世界経済も全般的に一応上昇という形になるのだろうと思います。
一昨日の日経新聞記事にもあるように「リーマン危機後、(中略)日銀の総資産は08年4月から5年間の白川前総裁時代に、113兆円から164兆円へと、51兆円増え(中略)国内総生産(GDP)比の総資産残高で見ると、実は日銀はFRBやECBを上回っている」ものの「小出しの緩和」との印象がぬぐえず此の間殆ど緩和の効果が無かったわけですが、その一方で「今春総裁に就任した黒田東彦は2年で130兆円増やすと公言し」ており、先月末の会見でも「2%の物価安定目標に向けた道筋を順調にたどっている」と語っているように、日本経済について私はさほど心配していません(※13/※14)。
それから財政についても、日本政府は「企業業績の上振れに伴う法人税収の増加により、5兆円規模の経済対策の財源確保にほぼメドがたった」が故に「消費増税に伴う経済対策を柱とした2013年度の補正予算案で、国債を追加発行しない」というふうにしているわけで、税の自然増収に弾みがついてきた現況において、余り財政の引き締めに動くべきではないでしょう(※15/※16)。
消費税率の引き上げが大変なネガティブインパクトを齎すことになるのは言うまでもありませんが、消費増税による国民負担増が9兆円と言われる中、それを自然増収でどう埋めて行くかということに加え、オリンピック効果および「第三の矢」によって如何に埋めることが出来るかがキーになります。
今回の東京オリンピック招致による経済波及効果については、3兆円でも期待し過ぎという声がある中で、観光も含め日本全体に及ぶ広い意味で7年間で100兆円を超えるという声もあって、兎にも角にも之がプラスに作用することは確かです(※17/※18)。
他方、先日も医薬品のネット販売を巡って楽天社長の三木谷浩史氏が産業競争力会議の民間議員辞任を表明し(昨日撤回し)ていましたが、あのような形で薬一つで大幅な改革の後退が見られ、中途半端な形でしか為し得ないということでは御話になりません(※19/※20)。
もっと思い切って大胆な改革に踏み切るという覚悟なくして、来年度の日本経済の見通しは上記申し上げたように実質GDP成長率で1%程度とそれ程明るいものとならず、外的な不安定要因は様々あり、来年明るい経済を迎えるためには、「第三の矢」といわれる成長戦略に全てかかっていると思います(※21)。

参考
※1:2013年10月1日北尾吉孝日記『消費税率の引き上げ表明を前に~橋本龍太郎内閣と安倍晋三内閣の違い~
※2:2013年11月17日日経ヴェリタス「11月9日(土)~11月15日(金)(LastWeek)」
※3:2013年11月14日日本経済新聞夕刊「GDP実質1.9%増、7~9月年率、公共投資けん引――4期連続プラス」
※4:2013年11月16日日本経済新聞「合う会社は?見極め必死 内定率64%、15万人なお就活 大学生、中小企業に熱視線
※5:2013年11月14日NHK NEWSWEB「主要企業100社アンケ-ト ベアに慎重
※6:2013年11月15日日本経済新聞朝刊「GDP実質1.9%増、物価と賃金、好循環の芽、海外には不安材料」
※7:2013年11月16日SankeiBiz「経営支援へ全国に“よろず拠点” 経産省 中小企業の相談窓口拡充
※8:2013年11月14日日本経済新聞夕刊「政策で景気押し上げ、GDP実質1.9%増、民需主導には不安」
※9:2013年11月11日野村週報「原油価格は低下後、安定へ」
※10:2013年11月1日ロイター「10月の中国製造業PMIは51.4、予想上回る=国家統計局
※11:2013年11月11日yoshitaka_kitao – Twitter
※12:2013年11月11日yoshitaka_kitao – Twitter
※13:2013年11月17日日本経済新聞朝刊「シリーズ検証危機は去ったかリーマンショック5年(12)日本襲った円高デフレ」
※14:2013年11月9日朝日新聞朝刊「(経済気象台)不都合な三つの事実」
※15:2013年11月15日日本経済新聞「国債追加発行見送り 13年度の補正予算案で政府
※16:2013年7月24日北尾吉孝日記『デフレ脱却と財政再建~消費増税判断は如何に為されるべきか~
※17:2013年10月24日北尾吉孝日記『正念場を迎えた「安倍ノミクス」
※18:2013年9月19日北尾吉孝日記『2020年東京オリンピック開催決定後の日本~消費増税判断および経済株式展望~
※19:2013年11月18日Yomiuri Online「楽天・三木谷氏が民間議員辞任撤回…首相慰留で
※20:2013年11月18日日本経済新聞「三木谷氏の離反 規制改革、政権の覚悟問う
※21:2013年8月30日北尾吉孝日記『QE3縮小前の世界金融経済情勢




 

(任意/公開)
(任意/非公開)



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.