北尾吉孝日記

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11月も最終週に入り今年度も残り4ヶ月となりましたが、本ブログでは此の最後の四半期でまた一悶着ありそうな経済的懸念事項について、以下コメントして行きたいと思います。
第一に、先月7日『17年前と今~クリントン政権下での政府機関閉鎖を考える~』というブログを書きましたが、米国でまたぞろ「財政問題を巡る混乱が再び繰り返される恐れ」があります(※1)。
先月16日、米上下両院が「来年1月15日までの暫定予算と、同2月7日までの国債発行を認める法案を可決し、オバマ大統領はこれらの法案に署名」したことで深刻な事態に陥ることを一旦回避できましたが、之は基本的にそう簡単には解決し得ない大変根深い問題という印象を持っています(※2)。
その理由として挙げられるのは、共和党少数会派のティーパーティー(茶会党)言ってみれば極めて保守的な白人集団がオバマケア(医療保険改革)の廃止を強行に主張している一方で、同改革を推進している民主党議員の支持者が、ヒスパニックを含めた黒人を中心とした有色人種だということです(※3/※4)。
即ち、先月3日の日経新聞夕刊記事『今回の「崖」には要注意(十字路)』にもあるように「1980年代のレーガン政権時代は、南部の保守的な民主党員と、北部の穏健な共和党員が協力して数多くの超党派法案が成立した。しかし最近は、両党の支持基盤と議会勢力が左右両極に分断され、妥協の余地がな」く、上記した人種的な問題も絡み合って両党議員が兎に角頑として動かないということが此の問題の難しいところです。
当該問題を巡って毎回ギリギリまで擦った揉んだを続けているということは皆さんも御承知の通りで、最終的に米国がデフォルトすることはないだろうというふうに多くの人が考え期待するわけですが、次に起こる混乱はこれまでのように簡単には行かない可能性も意外とあり得るということだけは、我々も懸念事項の一つとして頭に入れておく必要があるでしょう。
第二に、QE3(量的緩和第三弾)縮小開始に関する懸念事項であって、バーナンキ後継が随分ハト派的なイエレン氏であればQE3縮小に当面踏み切られない、というふうに当初言われマーケットは再び元気づいたわけですが、果たして本当にそうなのかということがまたぞろ言われ始めています。
そういう中で、12月17,18日開催のFOMCにおいて縮小の方向性が示されるのではないかという話も出てきているわけですが、此のQE3縮小が資金の流出、為替安といったリスクにつながりかねない新興諸国、取り分けBRICsや東南アジアの国々が今後また注目を集めることになるでしょう。
これまでQE3の縮小観測が出てくる度に新興国は大変なネガティブインパクトを被ってきたわけで、現実問題として新興国からの資金流出が生じ資金を引き揚げられた国の通貨が安くなったということは、今年8月のブログ『QE3縮小前の世界金融経済情勢』でも指摘した通りです。
そしてQE3縮小の余波は日本にも及んでき、日本のマーケットも下がったりすることも出てくると思いますが、片一方で量的緩和縮小が米国経済が良くなって行くという自信の現れであるならば、基本的には世界経済にとってプラスの話です。
もしそうなってきて米国の長期金利が上がり始めた時、日本の「異次元緩和」継続という中で日米長期金利差が拡大して行く限りにおいて基本的に円安基調を辿って行くことになりますから、日本の輸出が拡大して株高に繋がる可能性があります(※5/※6)。
もっとも、エネルギー価格が高騰し輸入インフレ的な状況になるリスクもありますが、何れにせよQE3は何れイグジットして行くことになろうとは思いますが、日本経済にとってそれ程大きなマイナス要因にはならないというふうに私は考えています(※5)。
それから第三の懸念事項は「第三の矢」と言われる成長戦略であり、先週火曜日のブログ『2014年の日本経済展望』でも指摘しましたが、兎に角すぱっとしたものが未だ以て出てこないということが最大の問題で、一刻も早く「なるほどなぁ~」というものが打ち出されねばなりません。
言うまでもなく、此の「第三の矢」の一角を示せるのがTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)でありますが、あれだけ「年内妥結」を訴えるオバマ大統領自身が議会から様々な制約を付けられるような現況です。レイムダックとまでは言わずとも、オバマ大統領の指導力は随分落ちてきているように感じられ、TPPが早急に纏まるかについては依然懐疑的です。
第四に、異次元金融緩和が設備投資や消費等に如何なるポジティブインパクトを与え得るかということですが、之は個人の所得および企業の所得がどうなるかということに関わっていることです。
個人の所得について言うと、大企業は賃上げに割合ポジティブですが「賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)」までは中々行かず、今の状況を見るに大体がボーナスで済ませておこうということで「慎重な姿勢は根強い」ようです(※7)。
今回の本格的な金融緩和によって変化した人々のマインドが、消費と投資に結び付くためには所得増ということがどうしても必要になるわけで、況して日本の「企業数の99.7%、雇用の約7割」を占める中小企業の状況がどうなるかは更なる懸念事項です(※8)。
そして最後の懸案事項としては、中国が『尖閣諸島上空などを含む東シナ海の広い範囲に、戦闘機による緊急発進(スクランブル)の基準となる「防空識別圏(ADIZ)」を設定した』ということです(※9)。
之については、やはり両国の軍用機がニアミスになって暴発的な軍事衝突が起こり得るということがあります。此の辺りのことも今年度最後の四半期で懸案すべきだと思います。

参考
※1:2013年10月24日北尾吉孝日記『正念場を迎えた「安倍ノミクス」
※2:JPモルガン・アセット・マネジメント「米国はデフォルトの危機を回避:財政問題に関する今後の見通し(2013年10月)
※3:2013年11月14日株式会社富士通総研「2013・2014 年度経済見通し(2013年11月改訂)
※4:2012年7月19日北尾吉孝日記『オバマ再選の行方
※5:2013年8月30日北尾吉孝日記『QE3縮小前の世界金融経済情勢
※6:2013年7月11日北尾吉孝日記『バイロン・ウィーンの「日本びっくり5大予想」について
※7:2013年11月25日朝日新聞『「賃上げに協力を」経産副大臣が関西経済界に要請
※8:2013年11月19日北尾吉孝日記『2014年の日本経済展望
※9:2013年11月23日ハフィントンポスト『中国が設定した「防空識別圏」は何が問題なのか【争点:安全保障】




 

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