北尾吉孝日記

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日銀の市場とのコミュニケーションの在り方について、日銀審議委員の宮尾龍蔵氏が「まだまだ工夫、改善の余地があると私自身も感じている」と述べたことが、先月13日の日経新聞に載っていました(※1)。
此の発言を元に先ず以て日米の現況を比較してみるに、米国の場合はQE3(量的緩和第三弾)縮小を如何に実施して行くかということが世界経済にも大変な影響を及ぼすことになりますから、マーケットに対するガイダンスをある意味非常に慎重にやって行くことが大事になります(※2)。
他方で取り敢えず「異次元の金融緩和」と称して始まった日本の場合は、本年4月4日「量的・質的緩和の下でのフォーワードガイダンス」として、①『日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する』(第一のフォーワードガイダンス)、及び②『「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う』(第二のフォーワードガイダンス)、ということを示しました(※3/※4/※5)。
そしてそれ以来、ずっと代わり映えのしない話を続けているわけですから、米国とは違って未だそのレベルには到達していないということですが、当初想定していたような状況に今なりつつある中で私が思うのは、あの程度のガイダンスをあの程度の頻度で行うということで、当面は良いのだろうということです。
一昨日の経済教室「アベノミクスの1年(下)」で慶応義塾大学教授の池尾和人氏が述べている通り、事態は『第1の「大胆な金融緩和」と第2の「機動的な財政出動」が同時に実施されることによって、意図はどうであれ、中央銀行の信用によってファイナンスされた財政支出の拡大という財政ファイナンス的な政策(ヘリコプター・マネー政策とも呼ばれる)がとられているとみられる』ものであり、基本的に「金融緩和それ自体の効果についてみると、かなり限定的なものにとどまっていると評価せざるを得」ません。もっとも、財政ファイナンス的な政策運営を続けることによって、将来的には「金利急騰かインフレ高進かを余儀なくされるリスクが危惧される」わけですから、タイミングによっては状況次第で上手くガイダンスを使って行かねばなりません。
私がガイダンスと言うのは、市場とコミュニケーションを図りながら効率的な政策運営に務める工夫のことですが、之については今年6月のブログ『「安倍ノミクス」は失敗に終わったか』でも指摘した通り、日本は米国のexit scenario(出口戦略)を生きた模範として或いは反面教師として、よく研究する必要があるでしょう。

参考
※1:2013年11月13日日本経済新聞『宮尾委員、金融政策「正常化に向けた議論は全く考えていない」
※2:2013年11月25日北尾吉孝日記『今年度最後の四半期で懸案すべき5つの経済的事項
※3:2013年9月20日日本銀行『【講演】白井審議委員「我が国の金融政策とフォーワードガイダンス ―金融政策運営についてのコミュニケーション政策―」
※4:2013年4月4日日本銀行『「量的・質的金融緩和」の導入について
※5:2013年12月3日国立国会図書館ISSUE BRIEF NUMBER 809「量的・質的金融緩和の効果とその評価




 

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