北尾吉孝日記

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来週木曜日にまとめられる予定の14年度与党税制改正大綱において、今回もまた「法人実効税率引き下げを見送る方針」が報じられており、非常に残念なことだと思っています。
此の法人税改革こそが「安倍ノミクス」の「第三の矢」と言われる成長戦略の中でも、第一の柱になって行かねばならないものだと私は認識しています。
月刊誌『WEDGE』(2013年12月号)に『国にも個人にも利益 法人税改革を「第3の矢」の試金石に』という記事がありますが、その中で中央大学法科大学院教授の森信茂樹氏は「復興特別法人税終了後のわが国の法人表面実効税率(表面税率の地方税損金算入を調整したもの)は、現在の40.7%から5%下がり35.6%となるが、いまだ先進諸外国と比べて数%高い」と指摘しています(添付画像参照:法人所得課税の実効税率の国際比較―2013年1月現在)。
此の「グローバル化の時代、一国だけが高い法人実効税率を維持できるほど世の中は甘くない」のは言うまでもなく、之が国際競争力の低下に結び付くことに繋がって行き「放置すれば、国内企業の海外投資はますます加速され、地方経済は空洞化」してしまうことになるでしょう(※1)。
更に日本の現況を考えてみると、あの3.11以来やはり電力料金がずっと上がってきているという中で、之が上記税率の高さと相俟って製造業においては設備投資が中々増えて行きません。
例えば、今月2日に発表された2013年7~9月期の法人企業統計調査を見ても、「全産業(金融業・保険業を除く)の設備投資額は前年同期比1.5%増の8兆9,429億円となり、2四半期連続で増加した」ものの「業種別に見ると、製造業の設備投資額は前年同期比6.7%減の3兆1,076億円で、4四半期連続の減少。一方、非製造業は同6.6%増の5兆8,348億円で、2四半期連続で増加した」というわけです(※2)。
片一方で消費税の増税を行い、そして今度また公共投資で税金を使うということになると、何をしているのか分からないような部分もありますが、では此の法人税減税を実施するとした場合、どのようにしてその財源を確保すべきでしょうか。
それについては3年前のブログ『日米の税制政策を巡る昨今の動きについて』でも、私は「基本的には法人税率の引き下げについては賛成で、日本の場合はやはりタックスベースを拡大して税収ニュートラルの状況を作って置く必要性はあると思っています」と述べましたが、課税ベースの拡大によって確保すべきだと考えます。
より具体的には、上記した森信氏が「いわゆる政・官・財(業界団体)のトライアングルで形成されてきた既得権益の結晶」と指摘する「租税特別措置の抜本的な整理縮小があげられ」ます(※3)。
大体が日本では、「租税特別措置法」(昭和三十二年三月三十一日法律第二十六号)という形で「特定の企業行動について課税を軽減・免除している特別措置」が多過ぎるのであって、そういうものを全て御破算にした上で今一度その全てを徹底的に見直して行き、そしてその中でタックスベース拡大による税収増を図ると同時に、一方で本格的な法人税改革を実現することが重要です(※1)。
嘗て私は『待望せられる一国の指導者としての人物』(2011年5月11日)というブログにおいて、米国が大変な苦境に陥って、ある意味国家混乱した状況の中で大統領職を務め上げたロナルド・レーガンを御紹介しました。
彼は所謂「サプライサイド・エコノミックス」というものを使いながら、米国の伝統的なケイジアン的なものも否定し、税制についてもマーガレット・サッチャーの税制改革(「所得税における高率累進税制の見直し、フラット税率への移行、法人税を利益課税からキャッシュベース課税に移行させる試み」等)に影響を受けて抜本的転換を断行し、そして米国の再活性化を導いて行きました(※4)。
これまた森信氏も言われるように、「世界で最も評価の高いレーガン第2期の税制改革は、所得税と法人税全般にわたって課税ベースを見直し、その財源で法人税率を12%引き下げた。これが、ベンチャー企業の起業家精神を鼓舞し、シリコンバレーの誕生や米国IT産業興隆につながった」という史実は、日本の法人税改革の文脈においても一考に値するものです(※3)。
更に言うと、欧州諸国でも所謂「法人税パラドックス」ということ、つまり「1980年代以降一貫して法人表面税率は下がってきたが、法人税収の対GDP比は上昇しており、税収の低下は起きていないということ」がずっと指摘され続け研究が行われています(※3)。
これ即ち「わが国の法人税改革も、課税ベースの拡大や成長戦略とセットで行われれば、経済成長と財政再建の2つが達成できるということを物語っている」とも言い得るわけで、自民税調のある幹部は「来年やるかもしれないし、10年たってもやらないかもしれない」などと悠長なことを言っておられるようですが、正に之こそが「第三の矢」の中で一番先に掲げられるべきものだと私は思っています(※5/※6)。

参考
※1:2013年10月2日ダイヤモンド・オンライン「消費税率引き上げ決定の背後で 三つ巴の対立がもたらす法人税減税の迷走
※2:2013年12月2日マイナビニュース「7~9月期の”企業設備投資”、2期連続増–法人企業統計、製造業では4期連続減
※3:2013年12月1日更新ジャパン・タックス・インスティチュート『法人税改革を第3の矢の試金石に「ウエッジ」12月号
※4:2011年5月11日北尾吉孝日記『待望せられる一国の指導者としての人物
※5:2013年6月20日ダイヤモンド・オンライン「拙速な投資減税はバラマキの懸念 本格的な法人税改革に必要な視点とは
※6:2013年12月3日日本経済新聞「法人実効税率下げ、自民税調が結論先送り 慎重論根強く




 

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