北尾吉孝日記

『TPPと生産性』

2013年12月19日 15:47
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本日「安倍晋三首相が政策提言機関の日本アカデメイアが主催する交流会で講演する」予定で「新たな成長戦略についての発言が出てくるとの期待」もあるようですが、此の「第三の矢」に関しては今月号の『フォーリン・アフェアーズ・リポート』に『日本経済を左右する規制緩和と労働市場改革―― ネオリベラリズムと「第3の矢」』(ノア・スミス・ストーニーブルック大学准教授)という記事がありました(※1/※2)。
当該記事では、日本経済の長期停滞の主因の一つとして「生産性が低いこと」を挙げ「1990年の時点では、日米の全要素生産性(労働力と資本投入の効率を示す指標)はほぼ同じレベルにあったが、いまやアメリカ経済と比べると、日本経済のそれは70%程度の効率しかない」と指摘した上で、その「主犯」として「メガバンクとの関係が深いことで破綻を免れているだけのゾンビ企業のせいではないかという仮説」を紹介すると共に、「企業を内外の競争から守る厳格な規制も(中略)特に日本のサービス部門の労働生産性を低下させている」という経済協力開発機構(OECD)の研究結果(2008年)に触れています(※2)。
そして「第3の矢が折れれば、生産性の低い会社本位主義を中核とする日本の社会モデルが温存され、結局、日本は経済的にさらに取り残されていく」と警鐘を鳴らしているわけですが、実際問題として近年のサービス産業の労働生産性の伸びというのは『「国民経済計算確報」(内閣府)によると(中略)、1994~2011年で年率マイナス0.25%となって』いて「まさにサービス産業が日本経済の足を引っ張っている格好』です(※2/※3)。
此のサービスセクターの生産性改善は競争を阻害する様々な規制を緩和することにより成し遂げられるのだと思われますが、之と同じように他産業と比して著しく生産性が低い農業を中心とした部分においても(添付画像参照)、生産性を高める上で規制緩和を推進することが有意なのだと考えます(※4)。
そういう意味では「目標としていた年内の交渉妥結を断念」したTPPを一刻も早く決着させ、そしてそれを農業分野等の生産性向上に結び付けて行くことが大事なのであって、此のTPPを機に日本経済の生産性を如何に改善して行くことが出来るのか、今正に考えねばならない時です(※5)。
此の農業とTPPということについては、当ブログでも『TPPと日本』(2011年11月14日)等々で幾度となく指摘し続けてきましたが、基本的には1952年に制定され日本農業の近代化を遅らせた大きな責任がある法律「農地法」(法令番号:昭和二十七年七月十五日法律第二百二十九号)を大幅に見直し、抜本的改正に踏み切るというところからスタートすべきだと思います。
そして更に、「TPPと生産性」ということに関して医療分野では如何に捉えるべきかで言うと、例えば先月27日の経済教室『サービス産業の生産性、消費者の評価考慮を 社会的価値も重要 一概に「低い」と断定は乱暴』で中島隆信・慶応義塾大学教授が行っている「医療による健康が生む価値の計測が必要」といった議論も分からないでもないですが、此のTPPによって当該分野においても生産性改善の余地というのはあり得るわけで、やはりある意味での生産性というのは医療であっても追求すべきだと考えます(※6)。
また、私は今年5月のブログ『「安倍ノミクス」と構造政策』で『日本医師会の見解通りにTPP参加によって「国民皆保険は崩壊すると訴える」族議員等もいるわけですが、皆保険を無くならせるか否かは国民が決めることであり全ては選挙に反映して行くのですから、そうしたことは起こり得ないということを私は強く訴えていきたいと思います』と述べましたが、今後の医療を考える上で此の皆保険は皆保険でやったら良いと思うと共に、欧米でも普通に行われている「混合診療」というのは絶対に解禁すべきで、何故これ程までに反対せねばならないのか私には理解できません(※7)。
それからもう一つ、安倍内閣は『「医療の成長産業化」を全面に押し出し、「外国人医師の診療」や「病床規制緩和」などを目玉とした「国家戦略特区」などによる規制緩和を進めて』おり、例えば先週月曜日にも『愛知県は、外国人医師の診療解禁などを盛り込んだ「あいち医療イノベーション推進特区」(中略)を国へ提案した』というニュースがありましたが、所謂「医療特区」の中で先進医療が出来るよう様々な規制を外して行くということも大いにあるべきだと思います(※8/※9)。
あの3.11から凡そ2ヵ月後、私は『「自由企業体制の資本主義の精髄」に関する考察』というブログの中で『より厳しい競争条件を作り出し夫々を競争させていたら、今回のような福島県での惨劇も起こらなかったかもしれないわけで、様々な面において競争がなかったからこそ人災が引き起こされたとも言えるのではないでしょうか。競争こそが色々な不合理やそれらの問題を解決して行く方法ですから、競争させないメカニズムにしていたからこそ、40年前に作られた原発がそのまま生き残ってしまうということになるわけです』と指摘したこともありますが、やはり競争こそが全てを変革する最大のポイントだと捉えていて、競争をきちっとしない・させないという状況に対して私は大反対です。
何れにしましても、今日本ではあらゆる分野において要らぬ規制が多過ぎるということで、日本経済の生産性向上を図るため上手く競争原理を加えて行くべく、此のTPPを機にその旧弊全てを改めて、あらゆる所で競争を強化して行くべきだと痛切に思っています。

参考
※1:2013年12月19日日本経済新聞「緩和縮小・円安、日経平均1万6000円視野 (先読み株式相場)
※2:2013年12月フォーリン・アフェアーズ・リポート『日本経済を左右する規制緩和と労働市場改革―― ネオリベラリズムと「第3の矢」
※3:2013年11月27日日本経済新聞朝刊「サービス産業の生産性、消費者の評価考慮を――慶応義塾大学教授中島隆信氏(経済教室)」
※4:2013年4月9日北尾吉孝日記『「黒田異次元緩和」後の日本経済
※5:2013年12月10日時事ドットコム「TPP、年内妥結断念=関税など対立解けず-閣僚会合閉幕・来年1月再協議
※6:2011年11月15日北尾吉孝日記『日本経済浮揚のために
※7:2013年11月9日PRESIDENT Online『TPP「混合診療解禁」で医療費はどうなる?
※8:2013年12月18日m3.com『医師数抑制は「減反政策」と同じ
※9:2013年12月10日つなごう医療 中日メディカルサイト「愛知県、医療改革特区を提案 外国人医師診療解禁盛る




 

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