北尾吉孝日記

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連日報道されているように、『マルハニチロホールディングス(HD)の子会社アクリフーズの群馬工場(群馬県大泉町)で、製造中の冷凍食品に農薬「マラチオン」を混入させたとして、群馬県警は二十五日、偽計業務妨害の疑いで、アクリ社契約社員の阿部利樹(としき)容疑者(49)を逮捕』し、昨日前橋地検に送検しました(※1/※2)。
阿部容疑者は逮捕当初から「覚えていない」と容疑を否認しているようで、なぜ犯行に踏み切ったのかは今後明らかになって行くのだろうと思いますが、周りの人の話では待遇面に強い不満を持っていたということで、その鬱積した不満があのような信じ難い形になって表れたのだろうと推測されます(※3/※4)。
今回の事件を受け、マルハニチロ「HDは奈良県立医科大学の今村知明教授を長とする第三者検証委員会を31日付で設置」して、「食品安全管理や危機対応体制の問題点を社外の立場から洗い出し、委員会がまとめる提言を受けて再発防止策を進める」ようですが、逮捕直後の記者会見で田辺裕・アクリフーズ社長が挙げていた「工場内に監視カメラを増やすこと」も、その一つとして検討されることだろうと思います(※5/※6)。
私見を述べるならば、勿論そうした観点からも改善策が講じられねばなりませんが、経営としてはやはり監視カメラ云々といった管理強化の側面だけでなく、田辺社長ご自身が「事件の重要な要素の一つと考えている」、待遇という観点から検討する姿勢も恐らく大事ではないかと思います(※4)。
今回の個別の事案詳細について実際のところは私にもよく分かりませんが、報道に拠ると「阿部容疑者の2012年度の給与は11年度と同水準」で、「去年から給与体系を年功序列から能力に応じたものに変更した結果」13年度は減額になったということで、これから同じ類の事件が繰り返されぬよう、此の部分について何らかの対処が求められるのかもしれません(※4/※7)。
それからもう一つ、例えば昨日のNNNニュースでは『工場で働く従業員は約300人。そのうち、約200人が契約社員として働いている。アクリフーズ群馬工場で働く従業員からは、「(時給)900円で考えると、手取りで15(万円)いくかいかないか。そういう理由で辞めていく人はやっぱり多いみたいです」』ということが報じられていましたが、やはり採用時に如何なる人物を迎え入れるのか、そしてまた、採用した後その人物をどうしていくのかは非常に重要だと思います。
例えば今回も、会社として所謂「正社員」でない人に関しては碌々把握しなくても良いと考え、決められた仕事を時間単位で言われたようにやって貰うといった程度で一応OKというような人の使い方になっていたのではないか、ということについても反省すべき点があるように思われます。
仮にパートタイムで働いている人であっても、採用後の働き振りがどうなのかということを常に吟味し続け、よく頑張って働いている人は正社員に持って行こうとするような姿勢をとるとか、あるいは一生懸命な人であればその人の働く動機付けを維持して行く方策を練るとか、そういったこともある意味考えて行かねばならないのだろうという気がします。
今回は阿部容疑者の不満が冷凍食品への農薬混入という形になって表れたようですが、上記ニュースにも「家庭持っている人だったら無理じゃないですか。自分みたいな立場の人が休憩室で、『もうこんなんじゃやっていられないから、自分から契約更新を断って辞めるんだ』という会話はよく聞こえてくるんですよ」という声があるように、待遇面での不満の声は彼に限らず至る所であったものと推測されます。
それが事実であるとするならば、採用前後における上記したような仕組みがきちっと整っていなかったが故、今回信じ難い事件が起こってしまったとも言い得るように思われ、一つの考え方として我々はそういう側面も見落としてはいけないのではないかと、当事件を通じて思いました。

参考
※1:2014年1月26日東京新聞「工場契約社員 逮捕 マルハニチロ社長辞任へ 冷凍食品農薬混入の疑い
※2:2014年1月27日Yomiuri Online「農薬混入、阿部容疑者を送検…偽計業務妨害容疑
※3:2014年1月26日日本経済新聞「農薬混入4回、49歳容疑者の動機は… 8年勤務
※4:2014年1月26日News i「マルハニチロHDとアクリフーズ 両社の社長が引責辞任へ
※5:2014年1月27日日刊工業新聞「マルハニチロ、久代社長が引責辞任-再発防止へ第三者検証委を設置
※6:2014年1月26日日本経済新聞『マルハニチロ社長、従業員逮捕「痛恨の極み」
※7:2014年1月27日Yomiuri Online『阿部容疑者、「給料安い」と口癖のように不満




 

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