北尾吉孝日記

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言うまでもなく、今週最大の注目材料はFOMCが如何なる声明を出すかということでしたが、「米国経済が堅調な中、多くの市場関係者は縮小継続を予想していた」中で、「FOMCは雇用の最大化と雇用情勢見通しの改善に向けて、証券購入のペースをさらに縮小することを決定」しました。つまり「2月から、現在1カ月あたり350億ドルとしている住宅ローン担保証券の購入額を300億ドルとし、現在1カ月あたり400億ドルとしている長期米国債購入額を350億ドルとして追加購入していくと決定」しました(※1/※2)。
今回のFOMCを最後に退任するバーナンキ氏は、「経済学者から中央銀行に転じ、未曽有の金融危機への対応の最前線に立った」議長でしたが、「FRBのバーナンキ議長、現代の中央銀行家の鑑」や「バーナンキ氏、型破りの措置で米国救う-FRBに独自の足跡」といった記事もあるように、当然ながら彼は合格点はもちろん極めて高い点数だと思います(※3)。
金融市場で100年に一度あるかないかの大変なturmoilのど真ん中で、バーナンキ氏は思い切ってQE1・QE2・QE3と大規模な量的緩和(Quantitative Easing)の拡大をどんどんと勇気を持って実施して行き、更には購入対象においても一番のポイントとなる住宅関連のところをきちっと押さえた形で取り組んできたわけです(※4)。
そして、ある種のイグジットの体制までつけて辞めて行くということで、危機的状況を封じ込めてきたバーナンキ氏は正に偉大な議長であり、彼がいなければ世界経済は本当に可笑しな状況に陥って行ったのではないかと今振り返っても思います(※4)。
来月「1日に新議長に就任するイエレン氏は現在の政策路線を引き継ぎ、縮小ペースを維持する構え」というふうに報じられていますが、例えば今回のFOMCの方針決定を受けてハイ・フリークエンシー・エコノミクス(HFE)のエコノミスト、ジム・オサリバン氏は『主要政策金利をめぐり、「2014年より後のフォワードガイダンス」に関するFRBの信頼性がより重要だ。市場は「15年と16年にもう少し引き締めに傾くこと」をいずれ織り込むだろう』とコメントしているようです(※5/※6)。
ここからのイエレン新体制下(副議長:スタンレー・フィッシャー前イスラエル中銀総裁)で大事になるのは、BRICSを初めとする新興諸国へのネガティブインパクトを出来るだけ小さくすべく此のフォワードガイダンスを上手く使いながら、米国経済の回復状況をよくフォローし世界全体の経済情勢を見極めつつ、慎重に出口戦略を更に推し進めて行くということです(※7)。
本日の日経新聞記事「米緩和縮小、手綱緩めず イエレンFRBが2月1日発足」では『このところ住宅投資はやや調整気味だが、個人消費や企業の設備投資は堅調さが続く。イエレン新議長も「今年の実質成長率は3%台になると期待している」と米景気の回復に自信を示す。雇用動向を映す非農業部門の新規雇用者数は昨年8月以降、20万人前後の伸びが続く。12月には10万人の大台を割り込んだが、FOMCは悪天候による一時的な要因が大きいと判断。極端な下振れ圧力がかからない限りは今後も緩和縮小ペースを崩しそうにない』と書かれており、また昨日発表された2013年10~12月期の米GDP速報値は年率換算で「前期比3.2%増えた。個人消費と輸出の伸びが高まり、政府部門などの不振を補った。(中略)昨年10~12月期の実質GDPの伸びは7~9月期の4.1%よりは減速したが、市場の事前予想である3%程度におおむね沿った水準だ。(中略)一方、11年後半から改善の足取りが強まっていた民間住宅投資は前期比で年率9.8%減と、13四半期ぶりのマイナスに転じた」ということで、米国における一喜一憂的状況一つとってもその舵取りは非常に難しい局面にありますが、私の基本的な見方として彼女はそれ程ドラスティックに縮小して行かないのではないかと考えます(※8/※9)。
ここへ来てQE3縮小で「経済基盤の弱い『F5:フラジャイル(もろい)・ファイブ』(トルコ、インド、インドネシア、南アフリカ、ブラジル)のような国から投資資金が引き揚げられる」との観測から新興国通貨の大変な下落が起こり、此のF5夫々は「南アフリカ中央銀行は29日、政策金利の据え置き予想に反し、50ベーシスポイント(bp)の利上げを決定した。トルコ中銀はこれに先立ち、市場予想を大幅に上回る利上げを決めている。インド中銀も今週25bpの利上げを決めたほか、ブラジルやインドネシアの中銀はすでに金融引き締めに動いている」という状況でしたが、様々な識者による色々な見方はあるもののその結果において、今回のFOMC声明では此の不安定な新興国通貨に対する言及は為されませんでした(※2/※10)。
これまた本日の日経新聞記事に、90年代の通貨「危機後の改革にはバラツキも:経常収支のGDP比」として韓国・ブラジル・インドネシア・インド・トルコの推移を図示したものがありますが、何れにしても昨年のあの世界的な上昇相場の後これから出口戦略を進めつつFRB議長が交替するという中で、先進諸国および新興諸国で多少の調整が今のタイミングで起こるということは当然あり得ることだと思われ、新興諸国からの欧米資本引き上げがインフレや利上げ等の形で実体経済に悪影響を及ぼすリスクについては今後注視して行く必要があると思います。
それからもう一つ、マクロ経済における懸念事項として中国経済に関して簡単に指摘しておきますと先ず以て此の1月、製造業PMIが景況の節目となる50を6ヶ月ぶりに下回ったこと、及び地方政府の不動産・インフラ開発向け理財商品のデフォルト懸念が顕在化したこと、の2つのニュースがあって之により中国経済への不安再燃といった向きの報道が一部で為されました(※11/※12)。
中国の金融が未だ以て多少がたがたしているのは勿論事実でありますが、昨年11月のブログ『2014年の日本経済展望』でも述べたように、「シャドーバンキング(影の銀行:融資規制のある銀行を介さない金融取引全般)」についてもそれ程大きな問題にならず収束に向かうのではないかと考えており、次に挙げる7.4%~7.5%の経済成長は今年達成できるものと思われ、今のところ中国経済について私は余り心配していません。
此の14年の世界全体における実質GDP成長率を各機関がどう見ているのかと言うと、例えば野村證券は13年の2.9%から3.5%に増えると予測し、IMFに至っては13年の3.0%から3.7%への増加を見込んでいるというわけで、14年の経済が13年より悪化すると考えている人は殆どおらず、そういう見方が世の大勢を占めているように思います(※13/※14)。
また各国個別で見ても、中国が13年の7.7%から若干下がって7.4%~7.5%になるぐらいで、例えば野村證券の予測では米国が1.8%から2.8%に、ユーロ圏が-0.4%から0.7%に、日本が1.7%から2.4%になるとしており、通年でみれば今年の経済成長率は世界的に上昇するのだろうと思います(※13/※14)。
昨日、日経平均株価は一時500円以上値下がり、本日の終値は92円安と昨年末から見れば8.5%の下落となってはいますが、上記してきたような世界的状況の中で今若干の調整局面を迎えてはいるものの、やがて落ち着きを取り戻し上昇相場に向かうであろうと私は見ています。
そしてその前提として、先週水曜日に『新成長戦略と国家戦略特区』というブログを書き、今週火曜日のブログでは法人税改革の国際公約化に触れましたが、安倍内閣はそうした改革を着実に断行して行かねばならないのだろうと思う次第です。

参考
※1:2014年1月30日日本経済新聞「米FOMCの声明全文
※2:2014年1月30日毎日新聞「株安連鎖:もろい新興国…東証もアジア主要株価指数も下落
※3:2014年1月31日日本経済新聞「バーナンキFRB議長、31日退任 異例の緩和で恐慌回避
※4:2013年3月11日北尾吉孝日記『日米相場展望
※5:2014年1月31日日本経済新聞「米緩和縮小、手綱緩めず イエレンFRBが2月1日発足
※6:2014年1月30日ブルームバーグ『FOMCは「自動操縦」で量的緩和縮小-市場関係者コメント
※7:2013年12月6日北尾吉孝日記『「安倍ノミクス」と出口戦略
※8:2013年11月19日北尾吉孝日記『2014年の日本経済展望
※9:2014年1月30日日本経済新聞「米GDP3.2%増 10~12月、個人消費・輸出伸びる
※10:2014年1月30日ロイター「新興国の経済成長率見通し、一段の下方修正迫られる可能性
※11:2014年1月23日ロイター「中国製造業PMI、1月速報値は6カ月ぶりの50割れ=HSBC
※12:2014年1月29日日本経済新聞「中国、理財商品の不履行回避 金融不安和らぐ
※13:2014年1月野村證券株式会社「世界の中の日本 デフレ決別に向けて正念場を迎える日本経済
※14:2014年1月International Monetary Fund「World Economic Outlook (WEO) Update:Is the Tide Rising?




 

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