北尾吉孝日記

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今週月曜日の日経新聞記事に書かれているように、「日本経済は2013年10~12月期まで2四半期続けて年率1%程度の実質成長率にとどまった」わけですが、当該要因の一つとして「4月の消費増税をにらんだ駆け込み消費が前回の増税時ほど出ていないこと」が挙げられます(参考:2013年10~12月期のGDP増減率の内訳)。
此の駆け込み需要が起こるか否かは、商品・サービスによって基本的には明確に区別されるもので、例えば住信SBIネット銀行株式会社(以下、住信SBIネット銀行)が先月実施した「値上げに関する消費者意識調査」を見てみると、「ガソリン(55.6%)」「食品・飲料(48.4%)」「電気(46.4%)」の順で「最近、値上がりが辛いと感じた」という結果が出ています(※1)。
上記した3位の電気に続いて「灯油(31.1%)」「ガス(29.4%)」という回答が為されていますが、之は此の寒さの中でマイナス5度になれば要らず、マイナス10度になればもっと要るという性質のものではありませんから、1位のガソリンを含め大体が常に減らすということが出来にくいものだと言えましょう(※1)。
また、2位の食品・飲料についても嘗て『「原発ゼロ」の日本に思う』(12年5月11日)の中でも指摘したように、「あれは値段が上がったから、もう食べるのは止めにしよう」というふうに、長い年月を掛けて形づくられた趣味嗜好を急に変えることには、中々ならないのだろうと思います。
そして電気ということで更に言うと、私は4ヶ月程前のブログ『日本の原子力政策~全ては東電の破綻処理から~』の中で、「先日の日経新聞によると今上半期(4~9月)の業績が経常利益1200億円前後ということですが、何故そんな利益が出るのか私には理解出来ません。会計検査院試算では、国の東電支援金の回収は最悪31年、国が負担する利払い負担が794億円にも達するのに何故すべての利益を国は回収しないのか、回収していけば東電に利益など出るはずはないのです。仮に、利益が出るようであれば電力料金を引き下げるべきではないでしょうか」と述べたことがあります。
にも拘らず、電気料金値上げを続ける東電が先月末に「発表した2013年4-12月の連結純利益は7729億円(中略)経常利益は1892億円」であり、「販売電力量は減少したが、電気料金値上げの影響で2200億円、燃料費調整制度による引き上げで1600億円のプラス効果があった」というわけで、残念ながら理解不能な状況が未だ以て続いています(※2)。
私に言わせれば、本来東電の収支というのは赤字からとんとんに持って行くべきものだと思っていて、そもそもが社会に対してあれだけの迷惑を掛けておきながら、電気代を上げて行き膨大な黒字まで確保することが許されるはずもないわけで、現況を継続するのはどう考えても可笑しいと言わざるを得ません。
此の電気は勿論のこと上記1~5位のどれを見ても、値段が上がろうが上がるまいが基本的に減らすわけには行かない性質のものであって、やはり一般の消費者にとっては生活に欠かせないものに対する値上がりこそが最も辛く感じられ、当然ながら一番困るということなのだろうと思います。
他方、上記した住信SBIネット銀行による意識調査において『「自動車」の増税前駆け込み購入予定者 7.8%、「パソコン」は11.7%』という結果も出ていますが、今回の「GDP1.0%成長」が示したのは、増税前の駆け込み需要は中々生じ難いということです(※3)。
先ず家電に関して言いますと、例えば内閣府は此の10~12月期において「GDPを7~9月期よりも押し上げたが、貢献度合いはわずか」とか、あるいは「前回の増税時と比べると駆け込みの動きが弱い」というふうに見ているようです(※4)。
家電製品が何年もつかという観点から考えますと、仮に10年間もつという製品が使用開始から5年目であるという場合、皆が「消費税が上がるから、今の内に買っておこう」とはならず「あと5年は、之で辛抱しよう」という話になるのではないでしょうか。
同じように自動車についても、ある程度の耐用年数がありますから、「もうこれだけ乗ったし、そろそろ新しい車を買おうかな」というふうに、その耐用年数との比較において増税前の購入が判断されて行くものです。
上記記事に書かれているように、「自動車は駆け込み購入が急増しており、昨年10~12月期のGDPでも個人消費を押し上げた」ようですが、その「駆け込み需要はピークを迎えたとの見方」もあって、此の耐用年数との関わりにおいて購買行動は基本規定されて行くということです(※5)。
それから住宅に関しても、此の10~12月期においては「前期比4.2%増と、前回の増税前にあたる1996年10~12月期の2.4%増よりも伸び率は大きい」ようですが、之について何時かマイホームを買いたいとずっと思っていた人が増税を前に購入に踏み切る、というのは今回に限らず発想として常にあり得ることで、住信SBIネット銀行やSBIモーゲージ株式会社の住宅ローン残高の動きを見ていても、そういう部分は確実にあるような気がします(※4)。
そしてまた、住宅の場合は「この家に合う家具を買いたい」といった形で、家との結び付きにおいて新たなディマンドというのが発生しますから、そういう意味ではそうした波及効果も考慮する必要があるのだろうと思います。
最後に先に述べた通り、『増税前駆け込み購入予定者「パソコン」は11.7%』という結果が出ているようですが、時代的にパソコンからスマホ・タブレットへという趨勢の中で、私自身も終ぞ会社以外で最早スマホばかりでパソコンを使うこともないといった状況ですから、そもそも駆け込み需要は生じ難いのではないかと思います。

参考
※1:2014年2月3日日経ウーマンオンライン「値上がりが辛い商品・サービス1位は?トップはガソリン、2位に食品・医療がランクイン
※2:2014年1月31日ブルームバーグ「東電:4-12月期の純利益は7729億円、電気料金上げなどで
※3:2014年2月1日財経新聞『値上がりがつらい商品は「ガソリン、食品、電気」 若年層は通信費=住信SBIネット銀行調査
※4:2014年2月17日日本経済新聞「増税前の駆け込み消費、緩やか 車・住宅に偏る傾向 GDP1.0%成長
※5:2014年2月4日日本経済新聞「1月の新車販売29.4%増 軽は最高、駆け込み需要




 

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