北尾吉孝日記

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1997年以来17年ぶりに消費税率が引き上げられ本日8%になったわけですが、此の消費増税のマイナスの影響に関して新聞各紙の報道等を見ると、「軽微」とか「一時的」といった論調が支配的になっています。
之に対する私見としては、日本経済に及ぼすネガティブインパクトは意外と大きいというように考えていて、年末安倍首相により最終判断が下される消費増税第二弾については、その時の経済状況をよく見ながら非常に慎重を期して為されるべきだと思っています。
と言いますのも、基本的に税負担を増やすということは国民の購買力を減じる方向でしかありませんので、現在のように減少したとはいえデフレギャップが未だ存在している場合であれば、消費税を更に引き上げて財政健全化を図るというような局面ではないと思うからです。
今回の増税を消費者がどう捉えているかという様々な調査結果が公表されていますが、例えば「共同通信の世論調査では、支出を減らすと答えたのは回答者の66%に上り、支出を変えない人は33%だった」ということで、やはり之こそが普通の人の感覚ではないかと思っています。
世は昨日まで「駆け込み、駆け込み」と一部で大騒ぎしていましたが、先々月21日も『「2013年10~12月期GDP速報値」と「値上げに関する消費者意識調査」』というブログで詳述したように、駆け込み需要があると言い得るのは基本的に住宅等の高額商品の場合だけであり、後は逆にトイレットペーパー等の安価な消耗品にだけ当て嵌まる話です。
例えば自動車で言うと、その耐用年数との比較において増税前の購入が判断されて行くものであり、更にはこれまで「エコカー減税」等の優遇措置を散々講じてきたという中で、今回結局は当初期待されていたような駆け込み需要は、殆ど生じなかったということでしょう。
そしてまた、全国の中小企業を対象にしたある調査によれば、『この春、従業員の賃金を引き上げたかという質問に対し「引き上げた」と答えた企業は16%にとどまり、「引き上げていない」と答えた企業が83%に上』ったということです。
つまり「ことしの春闘で、大手企業の間ではベースアップの動きが広がりましたが、多くの中小企業は依然として賃金の引き上げには慎重だという結果」となったということで、「安倍ノミクス」の余得は日本の「企業数の99.7%、雇用の約7割」を占める中小企業にまで、未だ波及してきてはいないのだろうと思います。
本日の経済教室は「異次元緩和から1年(上)」(浜田宏一 エール大学名誉教授)というものでしたが、ここのところ此の安倍ノミクスの状況を見るにつけ思うのは、結局雇用等の岩盤規制と言われる問題は如何ともし難く、「第三の矢」と言われるものが放たれずに終わって行くのではと多くの人が懸念している状況です。
そうなりますと此の安倍ノミクスというのは、日本全体の消費者・投資家のマインドに一時的に変化を齎しただけのものであり、そのマインドが冷えたならば今度は逆に、後遺症だけを残して終焉を迎えて行く可能性すらあると言えましょう。
昨年12月のブログ『「安倍ノミクス」と出口戦略』でも慶大教授・池尾和人氏の言も用いて指摘したように、「中央銀行の信用によってファイナンスされた財政支出の拡大という財政ファイナンス的な政策」運営を続けることにより、将来的には「金利急騰かインフレ高進かを余儀なくされるリスクが危惧される」というわけです。
安倍ノミクスを成就するために此の第三の矢を完遂すべく、国家戦略特区をその矢の要として旧弊を打破して行く突破口にするというなら意味はありますが、特区だけを指定してみても本当に岩盤規制を外して行くということにならなければ何のプラスにもなりません。
此の国家戦略特区は勿論のこと、成長戦略の中でも第一の柱に据えて行かねばならない法人税改革、あるいは日本経済の生産性向上を齎し得るTPP参加等々と、そうしたことを次から次に何が何でもやり抜いて行くという中で初めて国民は納得してくれるものなのです。
著名投資家のジム・ロジャーズ氏は最近ロイターのインタビューで、「これから20年後に振り返った時に、彼(安倍氏)が日本を崩壊させた人物だと皆が気づくことになるでしょう。アベノミクスには3本の矢がありますが3本目の矢は日本の背中に向かってくるでしょう」と話していたようですが、こうした見解は何もジム・ロジャーズ氏に限ったものではありません。
掛け声倒れで時間ばかりが経過し、未だ以て放たれてもいない矢の状況を見ていれば誰しもが段々とそういう気になってき、そして外国人投資家も日本を相手にしなくなって行くのは当たり前ではないでしょうか。
やれ票がどうだ、やれ自民党が割れるだのと、ぐだぐだと言う政治家が多いですが、最早そうしたことは関係なしに、日本のため勇気を持って、如何なる抵抗があろうとも何が何でも断行するんだ、という強い姿勢を有する人物が、今日本に求められます。安倍氏は、そういう人物であることをこれからの政策で証明して頂きたいと思います。




 

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