北尾吉孝日記

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御承知の通り、「田村憲久厚生労働相は22日付で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用委員会の運用委員に米沢康博・早大大学院教授ら7人を任命した」わけですが、近く開催される運用委員会では、此の米沢氏が新委員長に選出されるとの報道が相次いでいます(※1/※2)。
今年1月、安倍首相は「世界経済フォーラム年次会議冒頭演説~新しい日本から、新しいビジョン~」において、「日本の資産運用も、大きく変わるでしょう。1兆2000億ドルの運用資産をもつGPIFについては、そのポートフォリオの見直しを始め、フォーワード・ルッキングな改革を行います」と世界に対し発信されましたが、此の運用委員会委員名簿を見て「日本は一体何を考えているのだろう…」というふうに、世界中の運用の専門家が呆れるのではないでしょうか。
約130兆円という世界最大の運用資産を有するGPIFトップには、当然ながら運用に長けた人を持って行くのが普通だと思います。例えば、ウォーレン・バフェットのような人を委員長に起用するのであれば、誰しもが「あぁ、それは尤もだ」と言うことでしょう。逆に今回のように、運用経験が皆無(?)でその世界で無名の大学院教授などをトップにした場合は、「一体この人に何が出来るのかなぁ」と皆が思うのではないでしょうか。
野村證券時代、私が米国勤務していた時のエピソードを少し御紹介しますと、ある日一人の外国人が「日本の運用会社って、可笑しいんじゃないの」と言ってきましたので、「なぜ可笑しいと思うの?」と聞いたことがあります。
その時は、プライベート・エクイティ投資を行うジャフコという会社を対象にしていたわけですが、此の会社の役員というのは野村時代に良い営業成績を達成して役員になり、それを終えてから就任するような人が殆でした。
故に彼は、運用というものがそうした陣容で上手く出来るはずがないと考え、私にそうした話をしてきたのですが、何も之は彼に限ったことでなく、米国では機関投資家の誰もが同じように感じていた部分です。
あるいは、野村時代に営業において功成り名を遂げた人が野村アセットマネジメントの役員に就任していたということに関して、「何でそういう人事が為されるの?そこに一体どういう意味があるの?」とか、「野村證券という会社の人の選び方は可笑しいのでは?」というふうに、外国人投資家に不思議がられたこともありました。
と言いますのも、米国においては運用パフォーマンスを上げるべく、先ずはアナリストの経験を通じて広い形での分析ノウハウを醸成し、自分である程度ファンダメンタルズに対する分析が出来るようになった後に今度はポートフォリオマネジャーを経験し、高パフォーマンスの実績を積み、上の地位に就いて行くというのが至極当然だからです。
従って彼の疑問は尤もなことであり、営業成績が良かったから運用成績も良いだろうなどといった発想で違った職種を捉えることに関しては、彼に指摘されるまでもなく私自身も全く以て可笑しい、というふうに当時からずっと思っていました(※3)。
そういう意味ではGPIFを巡る今回の人事というのは、研究成績が良かったから運用成績も良いだろうなどといった発想で為されたものとも言えましょうが、こうした投資の世界での日本人的発想の人事を見て唖然とした次第です。

参考
※1:2014年4月22日日本経済新聞「GPIF運用委任命、相場はどう動く  市場関係者の見方
※2:2014年4月22日ロイター「政府、GPIFの運用委員に米沢氏ら7人任命
※3:2012年2月28日北尾吉孝日記『「AIJ問題」について




 

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