北尾吉孝日記

この記事をシェアする

今月8日、「3Dプリンタ製の殺傷能力のある拳銃を所持していたとして、川崎市の大学職員が銃刀法違反(所持)容疑で神奈川県警察に逮捕され」ました。
当該事件を巡っては各界で様々な反応が見られますが、各閣僚においては「取り締まりを求める議論もあり得るが、技術や産業の発展という観点からの問題もある」(谷垣禎一法務大臣)とか、「現時点で追加の規制は考えていない(中略)この事案で、ものづくりにおける3Dプリンターの重要性が否定されるものではない」(茂木敏充経済産業大臣)、あるいは「新しい形態の犯罪。現行法で十分対応できているかというと、必ずしもそうではない。法制上の問題も含めて対応する必要がある」(古屋圭司国家公安委員会委員長)といった発言が報じられています。
例えば11日付の読売社説では、「殺傷能力の高い銃が、ネット上のデータを基に、自宅で製造できる。治安上、ゆゆしき問題だ」という言い方もされていましたが、3Dプリンターというのは所謂「金型」が不要になるというぐらい驚異的な世界を創造します。
即ち、日本企業というのはこれまで精密な金型を上手く作り上げ、それを以て一つの競争力の源泉としてきたのでありますが、所謂「3Dプリンタ革命」は金型不要の世界の到来を齎すことに繋がって行き、これまで日本の強みとされてきたものが減じられて行くことになるのです。
こうした文脈において、「3Dプリンターが普及すると日本のものづくりが衰退する」や「匠の技が機械で模倣されるのは困る」といった議論を行う人もいるようですが、言うまでもなく此の3Dプリンターとは正に画期的で汎用性を有するものであり、結局その広がり次第では片方で不要になる産業や仕事というのが結構出てくることでしょう。
例えば、不動産の類に関してはCAD/CAMを使用しており、そうした仕事が3Dプリンターにより直ぐに無くなるという話ではないと思いますが、どちらかと言うと此の3Dプリンターのある意味での恐ろしさとは、銃も含め金型なしに殆ど全ての形成加工品が簡単に製造できてしまうということです。
今回の事件で押収されたプラスチック合成品の銃で言っても殺傷能力は確実にありますし、更には「3Dプリンターの性能や構造は年々進化しており、最近では金属粉末を利用した3Dプリンターも開発されている」等々とあるわけですから、最悪の結果を想定し少なくとも殺傷能力を有する物に対しては何らかの規制が必要だと思います。
之に関しては例えば、ある大学教授は「銃の設計データを流す行為を刑事罰の対象にすべきだ」と言い、また別の大学助教は「硬貨の偽造のほか、ブランドロゴやフィギュアなどの知的財産権侵害、携帯電話などに似せた樹脂製爆発物の製造など」を3Dプリンター悪用のケースとして挙げているようです。
他方、先週木曜日に日経新聞等の記事で「世界初、肺を反転移植 京大病院3Dプリンターでテスト」ということが報じられていましたが、マイナス面ばかりを指摘するのではなく3Dプリンターが創造し得るプラスの側面に関しても、我々はきちっと目を向けるべきだと思います。
報道等でよく使われる数字「2020年時点での経済波及効果は約21.8兆円」、之は『3Dプリンタが生み出す付加価値と、今後のものづくりの方向性を考察した「新ものづくり研究会」(中略)報告書』で出されたものでありますが、私としては此の数字は優に超えてもっと大きくなるのではと見ています。
即ち、3Dプリンターが開く世界は大変な派生もし大きくもなると思われ、故に既存物の代替的なものになって行く可能性が非常に高いと考えていて、その革命自体も未だ緒に就いたばかりであり、今後の広がりに関しては様々な観点から注視して行かねばと思っています。




 

(任意/公開)
(任意/非公開)



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.