北尾吉孝日記

この記事をシェアする

『フォーリン・アフェアーズ・リポート』掲載論文を私は毎月欠かさず読んでいますが、今月号においては「甦った地政学と欧米秩序の未来」という特集が組まれていました。
此の地政学というのは、ポスト冷戦世界で過去の遺物のように扱っていた専門家も多かったように思いますが、例えば「異なる目的と手段を通じて、中国、イラン、ロシアは冷戦終結時の政治的了解を覆そうと試みて」おり、知識人の間でまた嘗ての地政学的問題を考えさせるようになりつつあります。
先ずロシアという国に関しては、1982年にレオニード・ブレジネフが死去した後、1985年共産党書記長に就任したミハイル・ゴルバチョフが「ペレストロイカ」「グラスノスチ」を唱え、ソビエトという連邦国家における民主化を一気に実現へと導いて行き、そして彼が1991年に書記長を辞任し各連邦構成共和国が独立して行く中で、ソビエト連邦崩壊という革命が起こったわけですが、今クリミア半島という地政学的にも歴史的にも大変重要な場所は何時の間にやらプーチン大統領に乗っ取られ、更にはロシア系住民の多いウクライナ東部等の地域にも触手を伸ばし始めています。
また中国はと言うと、対日では尖閣諸島を巡って異常な対立が続くなか緊張状態が高まっているという状況でありますが、之に加え領有権を争う南シナ海での石油掘削を巡って「中越関係は中越戦争以来、最悪に」なっており、今にでも戦争が起こりそうな雰囲気になりつつあります。
そして相も変わらず内戦が続くシリア、あるいはアフガニスタンやパキスタン等々の嘗て地政学といった場合に然程重要視されてこなかった地域において、正に国際的な紛争が起こるような気配になってきているということで、此の「甦った地政学」というキーワードを基に昨今盛んな議論が行われています。
日中の問題を考えてみても、欧米では「現状の日中間の尖閣諸島問題をフォークランド紛争と比較して議論する専門家は多」く、日中間での偶発的な戦闘的行動が為されると考える人が非常に多くなってきています。
之に関しては、例えばローレンス・D・フリードマン(キングス・カレッジ教授)は上記雑誌の中で、『当時、フォークランド紛争は「二人のはげた男が櫛(くし)を奪い合っている」と揶揄されたものだ。島には何の価値もなかったからだ。(中略)あと一年、東シナ海や南シナ海で何も偶発事件が起きないとすれば、それは幸運に恵まれた場合だけだろう。衝突のリスクは非常に高い』という指摘を為しています。
一昨日のブログ『自らの国土と自らの国民は自らの軍隊で守る』でも警鐘を鳴らしたように、日本は極楽蜻蛉のようにのんびりし「平和憲法を守れ!」と連呼して未だ以て集団的自衛権に対しああだこうだとぐだぐだしていますが、世界の非常識を貫く人達は実際問題として「東シナ海で昨年1月、中国海軍艦船が海上自衛隊艦船に照射し、日中間で緊張が高まった」ことを何とも思ってはいないのでしょうか。
私に言わせれば、日本の船に中国が一度照準を合わせたということを以てして、米国はそれを対日攻撃と見做し日米安全保障条約の適用範囲とするぐらい重大な事象だと思われ、それだけ危機的な状況が何時何時現実のものとなるか分からないところにまできている、という現状認識を我々日本人はきちっと持たねばなりません。




 

(任意/公開)
(任意/非公開)



Copyright © SBI Holdings, inc. All rights reserved.