北尾吉孝日記

『日本政治経済概況』

2014年8月6日 15:50
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17年ぶりに消費税率が引き上げられた4か月程前、此の消費増税のマイナスの影響に関する報道は「軽微」や「一時的」等の論調が支配的で、政府やそれに同調する新聞社は此の間「大したことはない」と盛んに宣伝してきました。
之に対して私は上記実施日のブログでも、「日本経済に及ぼすネガティブインパクトは意外と大きい」と指摘していましたが、結果消費増税の影響は大きく来週水曜日発表の「14年4~6月期実質国内総生産(GDP)の1次速報値は、大幅なマイナスが予想されてい」ます(※1)。
先月30日の日経新聞記事にも、4~6月期実質GDPを「まとめた民間調査機関6社の予測の中央値は前期比2.0%減、年率換算で8.0%減だった」と書かれており、無論これは「大したことはない」レベルのダウンとは言えないマイナスであります。
次は7~9月期実質GDPの回復度合いや如何にということですが、例えば直近6月の「消費者態度指数(季節調整値)は41.1で前月比1.8ポイント上昇した。改善は2カ月連続で、2013年12月(41.3)以来6カ月ぶりの高い水準となった」ものの、先述の記事にもある通りその見方は分かれています(※2)。
こうした経済的な状況下、今月に入り読売新聞社が1日~3日に行った世論調査では、「安倍内閣の支持率は51%で、(中略)前回は6月調査の57%から9ポイント下落していたが、今回はやや持ち直した。一方、不支持率は41%(前回40%)となり、2012年の内閣発足以来、最も高」くなっています。
今回幾つかの要因によってこのような数字が出たのだと思いますが、之はやはり先に述べてきた増税がひしひしと国民に効いてきている部分があるということが一つ、それからもう一つ特に主因と考えられるのが、先月1日の「集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈変更の閣議決定」でありましょう(参考:「評価する」37%/「評価しない」53%)。
先月13日投開票の滋賀県知事選で自公推薦候補が敗北を喫し、更には国民の過半が原発再稼働に「反対」し「辺野古移設」では国民の賛否が分かれるという中で、自民党はこれから福島県知事選(10月26日)・沖縄県知事選(11月16日)と続く「重点知事選」を何としても勝ち抜かねばなりません。
そういう意味では昨日、安倍首相は「政府与党連絡会議で、9月第1週に党役員人事と内閣改造を行うことを明らかにした」わけですが、此の人事により新たな陣容で斬新・新鮮な雰囲気を出しながら、早急に様々な策を講じて行かねばなりません。そして色々な岩盤規制を打ち破るべく、勇気を持って断行して行くという姿勢なかりせば、現内閣の支持率も上がって行かないでしょうし、自民党としても此の先安泰だとは必ずしも思えません。
他方、野党第一党の民主党に関して言うと党内は相変わらず全く纏まりがなく、最近では「民主党海江田代表 展望欠いた安易な続投」(毎日8月1日付社説)とか、「海江田民主党 甘い総括で再建できるのか」(読売8月1日付社説)といった類の批評がよく伝えられます。
海江田代表は『昨年の参院選敗北後に、「目に見える成果」を1年で出せなければ辞任すると述べていた』わけですが、先月末の両院議員懇談会後の記者会見における彼の発言には思わず笑ってしまいました。
即ち、記者から「この1年間の最も大きな成果は何か」と問われた海江田代表は「民主党がまとまってここまで来たこと」だと答えたようですが(笑)、そもそも民主党というのは政道・政略の相違を無視して集まった烏合の衆化した政党であり、一たび政権を手放した後は取り分け顕著にその存続意義が全く見えません。
ちなみに此の政道・政略ということは、2年半前のブログ『日本政治の根本的な問題点』等でも述べたことがあります。中国古典流に言えば、政治というのは三つの要素に分かれます。一つは政治の政に道と書く「政道」というもので、時代劇などを見ると「天下の御政道」というようなことがよく出てきます。政道というのは正に政治の根本中の根本であり、その国の君主なり皇帝なりが行う政治の哲学思想に関わる最も根本的な部分です。そして政道の次は「政略」というもので、その政道を踏まえ活用しながら如何に具現化して行くのかということを政略と言います。政略となると具現化、具体化ということに繋がりますので、それが正に事務を要する仕事になるわけです。従って昔から事務をする主体が官僚というものであり、その官僚により行われるのが「政策」というものです。
以上が政治の三要素「政道・政略・政策」というもので、此の政道の違いをある意味象徴しているのが政党の違いというものでありますが、民主党含む野党は何時までもごちゃごちゃと揉めていないですっきりした形に再編成し、政略・政策等の一致点を見出して強固にそれを推進して行く力を有した組織体を一刻も早く作り出さねばなりません。
安倍内閣に対する支持・不支持の推移からは、ある意味今こそが野党の攻めのチャンスであるとも思われますが、例えば集団的自衛権を巡る状況を一つ見ても、「民主党にとっては党勢挽回のチャンスだったが、海江田代表はここでも党内の賛成反対双方を気遣ったために、中途半端な指揮になってしまった」わけで、安倍首相の方が経済の舵取りさえ上手くやって行けば、今のままの野党では今後もこうしたチャンスに何も出来はしないでしょう。
私は「年末安倍首相により最終判断が下される消費増税第二弾については、その時の経済状況をよく見ながら非常に慎重を期して為されるべきだ」と、消費税率が8%になった本年4月1日のブログ『未だ放たれない「第三の矢」~安倍首相は「日本を崩壊させた人物」になるのか~』でも指摘しました。
此の消費税の経済的インパクトは多大なものがあって、今回の8%時のように幾ら政府やそれに同調する新聞社が「大したことはない」と宣伝していても、場合によっては結果「大したことがあったではないか」という話にもまたなりかねません。
従って既定路線であるかのような形で再び増税実施に踏み切るのでなく、当該局面を相当注意深く点検し余程慎重に処して行かねば、安倍内閣の支持率はだらだらと下がり始めるでしょうし今何となくそういう雰囲気が出てきているようにも思われ、やはり経済に確かな落ち着きが見られるまで少し先延ばしにした方が良いのでは、と私は思っています。
黒田「日銀は昨年4月4日の量的・質的金融緩和の導入時に、金融緩和策の一環としてマネタリーベースの残高を13年末に200兆円、14年末に270兆円まで増やす目標を掲げて」おり、先月末の残高は243兆1864億円で「現在のペースのまま増えれば、11月末にも270兆円を突破する見通し」とも言われます。
このように日銀のアセットが膨んでいるだけの状況が今後も続いたところで、日本経済が良くなるというようなことは何時までも続かないわけですから、三本目の矢(成長戦略)が折れて行くようなら異次元緩和の後遺症ばかりが出てきて、近い将来日本経済は大変な副作用に悩まされることになるでしょう。
最初のある意味での「デモンストレーション効果(個人の消費が、自己の所得だけでなく、周囲の人々の消費水準や消費行動によって影響を受けること)」は既に終わっており、次から次へとどんどんと真の第三の矢を打って行かねば、日本経済は最早続かない状況だということをきちっと認識せねばなりません。
一本目(金融政策)・二本目(財政政策)はその役割を終えこれ以上何も動くことが出来ないという中で、此の三本目が足踏みをしていたら時間の問題で日本経済は本当に可笑しくなるのでは、と私は憂いを感じざるを得ません。これから後その舵取りは非常に難しい局面を迎えますが、一つ確実に言えるのは安倍政権が国民の支持を得続けるには、蛮勇とも思える勇気を持って三本目の矢を打ち放ち、岩盤規制を打ち壊すしかないということです。

参考
※1:2014年7月31日日本経済新聞朝刊「日本経済の視点(1)反動減後に持ち直しへ(夏季ゼミナール)」
※2:2014年8月4日野村週報「消費増税後の家計のマインドは確り回復」




 

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