北尾吉孝日記

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今から40年程前の本田宗一郎さんのインタビュー記事、『「不景気だと騒ぐより、このチャンスに自分を磨け」』が『経済界』のサイトに載っています。
本田さんはその中で、『僕たちは常に「見学」でなくて「観学」する姿勢が必要だと思うな』と述べられた後、松下幸之助さんとの次のエピソードを紹介されておられます。

『昔の話になるけど、昭和28年にホンダが埼玉工場を建設した直後に松下幸之助さんが「見せてくださいよ」と言うのでご案内したことがある。この時は一般の人のように機械のこと、クルマ製造の技術などを説明してあげたんだ。この時、松下さんは「私は技術者じゃないから、よく分かりませんな」と言っていましたよ。ところが、じっくり見て回った後、たった一言、「本田さん、この商売は儲かりますね」とハッキリ言ったんですよ。
これはね、松下さんは確かに車のことは分からないだろうけど、機械の配列、人員、作業工程の流れなんかを素早く読み取った言葉だったんだね。この態度は、僕たちも見習うべきだと思う。』

関西では人に会えば大体が「もうかりまっか」と挨拶するのがごく普通の世界ですから、松下さんが如何なる意味合いで「本田さん、この商売は儲かりますね」と言われたのか、率直に申し上げて私にはよく分かりません。
上記した本田さんの言にあるように「機械の配列、人員、作業工程の流れなんかを素早く読み取った」結果として、「この商売は儲かりますね」と松下さんが言われた側面も勿論あるのだろうとは思います。
私として何ゆえ松下さんが儲かると思われたかと推測してみるに、恐らく「自動車のような高付加価値品を製造するにも拘らず、働いている人の数が物凄く少ないなぁ」といった視点をより強く持たれていたからではないかと考えます。
そもそも此の話で儲かるというのは次の2通り、①自動車という物がこれからの時代に売れて行くであろうこと、②更にその自動車という高い付加価値を有する物が相対的に低コストで作られていること、あるいはそのコンビネーションでしか有り得ません。
従って私が思うに、ものづくりをずっと見てこられた松下さんの目に映ったのは、一つは大量需要を予測した効率的な大量生産工場であるということ、そしてもう一つはオートメーション化という徹底的に人手を省いた効率的な生産システムであるということ、ではないでしょうか。
何れにせよ事の真意は探り得ませんが、少なくとも『見て学ぶことを「見学」という。しかし、ただ見るだけの見学ではいけない。つぶさに、真剣に観察してはじめて、新たな知恵も出てくる。「見学」ではなく、じっくり観察する「観学」を心がけたい』というだけのではなく、松下さんの慧眼を示すエピソードだと思います。




 

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