北尾吉孝日記

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昨年10月末「日本郵政上場の主幹事選定に異議あり」と公言して後、BLOGOSや『週刊金融財政事情』あるいは『ネットマネー』等に小生の見解が載せられました。
上記選定から僅か3か月後、今度は「持ち株会社単独での上場から、金融子会社のゆうちょ銀行とかんぽ生命保険とともに3社同時親子上場する方針に転換した」のは周知の通りです。
今年に入ってキャピタル・アイより当該事項も含め取材を受けたわけですが、そのインタビュー記事が一昨日配信されましたので、以下本ブログにて全文を転載し皆様と共有致しておきます。
 

SBI北尾社長が語る郵政上場:主幹事選定は第三者の手に、東証の判断にも注目

今秋の上場を予定している日本郵政グループ。財務省は昨年10月に主幹事証券11社を選定したが、オンライン証券は全て選外だった。この結果に異議を唱えるSBIホールディングスの北尾吉孝社長に、主幹事選定プロセスの改善案や郵政上場に対する考えを聞いた。

―選定結果に対する疑問を自身のブログやメディアで公言しているが、これまでの反応は。
公的機関は常に説明責任を負う立場にあるはずだが、財務省からは何の回答もない。当社が応募した国内特定区分のうち、書類選考の段階で10提案から東海東京、岡三、SBI、いちよしの4提案に絞られ、口頭審査で岡三と東海東京が選ばれた。当社のIPO主幹事実績が2社を上回っているのは明らかで、納税額でも遥かに貢献しているので、落選の理由は見当が付かない。日本航空の再上場(2012年9月)でも当社の国内引受シェアは0.06%だったが、岡三は2.1%、東海東京は1.6%だった。

改正郵政民営化法(2012年成立)の付帯決議では「広く国民が所有できるよう努めること」と明記されている。にもかかわらず、オンライン専業大手5社で流通株式の80%以上を支配している事実を無視し、なぜ主幹事から排除したのか理解できない。そもそも募集の段階で選定基準や審査事項を細かく公表しているのだから、当落の理由や点数も明らかにすべきだ。

参考: 2014年度IPO国内+海外ブックランナー ランキング

―財務省が主幹事選定の権限を持つこと自体反対している。
金融庁ならまだしも、税金の歳入と歳出が主要業務の財務省に主幹事を選定できるほどの知識があるのか。今回の結果を見て疑問に思った。本来ならば主幹事は発行会社自身が決めるべきこと。一般企業の場合、売り出しを伴う親子上場でも最終決定権は当事者の子会社にある。企業と証券会社の関係は上場前の主幹事を選定する段階からスタートし、築き上げていくもの。上場後は関係が切れる財務省に権限があるのはおかしいのではないか。もし政府が選定に関与するならば、案件ごとに第三者委員会を組成して公明正大に主幹事を選ぶべきだ。

―第三者委員会の具体的な設置方法についてはどう考えるか。
政府の諮問機関や有識者会議と同じ要領で専門家を集めればよい。市場をより理解している日本証券業協会や金融庁などにメンバーの選定や運営を委託するのも一つの方法だ。委員会は結果だけではなく、説明責任を担う形で点数や選定理由を開示する。異議申し立てがあれば、それが釈明されるまで結果を発表すべきではない。主幹事の選定はこのくらいの手間と厳正さを持って臨むべきことであり、こうしたプロセスを踏むことで証券会社が切磋琢磨し、資本市場の発展につながる。公共事業には厳しい目が注がれているのに、主幹事選定には監視の目がなさすぎる。

―オンライン証券ではデイトレーダーなどが短期売買で売り抜けるイメージが強く、これが選に漏れた理由ではないかとの指摘がある。
たまたま当選した人が継続保有しなければならないという考えはおかしい。対面の証券会社で購入した富裕層が保有株式を動かさないかというと、投資信託のような長期の投資に向いている商品でさえ証券会社が短期売買を促すケースもある。

株は活発に売買されて流動性がないと妙味がない。そうでなければ投資家から忘れ去られてしまう。2008~2014年9月までに上場した255社の上場後1ヵ月のセカンダリーマーケットを見ると、オンライン証券が関与した案件の出来高は、対面証券のみでシ団を組んだ場合の6倍にのぼる。また株価の上昇率(対公募価格)は、オンライン証券参加の133%に対して、不参加では108%にとどまる。

―口頭審査では何をSBIの強みとしてアピールしたか。
SBIのIPO関与率は2014年度上半期で84.6%に達し、26社中22社が当社をシ団に加えている。ネット系とはいえ全国に400店舗以上のマネープラザを置き、専門資格を持った販売員を通じて対面で注文を出すこともできる。口座数は300万を超え、総口座ランキングでは3位だ。

当社は顧客の3分の2が20~40代の働く世代で、60~70代の富裕層が中心の対面証券とは対照的だ。NISA口座開設者のうち新規顧客は28%を超え、若い世代の財産形成を推進する政策にも貢献している。株式売買の委託手数料は対面証券の13~14分の1程度で、主要オンライン証券では最低水準だ。郵政グループの株式は若い世代に持ってもらうことが重要で、当社は投資単位が小さく対面証券では敷居が高い個人若年層の割合が高い。

引受手数料にしても、ネット証券の販売手数料の多寡ではなく、過去の財務省の案件の手数料を総合的に勘案し2%を提示した。決して高い水準とは思わない。

―日本郵政は昨年末に、持ち株会社単独での上場から、金融子会社のゆうちょ銀行とかんぽ生命保険とともに3社同時親子上場する方針に転換した。
主幹事選定から3ヵ月で方針を変更したことに驚いた。ビジネスモデルが変わるので、販売戦略もエクイティ・ストーリーも審査時とは全く違うものになる。親会社と子会社のビジネスモデルも異なるのに、スライド式に同じ主幹事というのは納得できない。親会社である持ち株会社の利益予想は、上場時の子会社株式の保有比率や売却のタイミングによって違ってくるので、成長シナリオや収益計画を明確にしなければ、投資家は株価の適正価値を計算できない。

そもそも親会社の道筋が見えない段階で、3社を同時に上場するべきではない。金融2社の経営に多少の不便が生じても、親会社の事業が軌道に乗ったうえで切り離す方が投資家には分かりやすい。日本郵政は子会社株式の売却益で、政府から自己株式を買い取る方針だが、成長戦略が明白でなければ、お金だけ持って何をするのか分からない会社になってしまう。子会社株式を売却するにしろ切り離すにしろ、継続保有する場合よりも収益性が高くなければ意味がない。仮に復興財源として売却益を最大化するのが目的としても、投資家に何の説明もなく売却益だけを指向するのは株式上場を軽く見ていることになる。政府は納税者や投資家に対して筋を通す義務がある。

―東京証券取引所の対応にも注目したいとか。
東証は従前から親子上場に批判的。当社も国内の上場子会社を非公開化し、株式公開を目指す子会社は香港や韓国といった海外市場で上場させた。国内で上場した方が高いバリューが付いたはずだが、東証の方針に従った。お上が押せば態度が変わるのか。東証が3社の親子上場を認めるなら、何を根拠に主張が変わったのか聞きたい。最近は親子上場が復活しているので、もし方針を変えたのならその旨を明確にすべきだ。

ただ一般的な親子上場と違って、郵政は極めて難しいケースで、親会社の収益に対する子会社の比重が大きすぎる。かんぽとゆうちょ銀を除いたら親会社に何が残るのか誰もが疑問に思っている。売却益を前提としたビジネスモデルでは、上場審査を通過するのも難しいはずだ。米国なら到底受け入れられないだろう。東証は上場する私企業だが、公に近い立場にあり、説明責任がある。

―オンライン証券の存在感を高めるための今後のアクションは。
今までは業界内の議論に口を出さなかったが、SBI証券の会長の立場で日証協のメンバーになり、会合にも出向いて物申す立場に就くつもりだ。

[聞き手:キャピタルアイ・ニュース池部渚]




 

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