北尾吉孝日記

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先週は、月曜日にフィッシャーFRB副議長がニューヨークで、金曜日にイエレンFRB議長がサンフランシスコで講演を行い、夫々が今後の政策金利の引き上げに関して言及されていました。
前者は「今年末までに金利引き上げが適切となる可能性が高い」「会合ごとに、FOMCのメンバーがその時に最善と考える金利を設定する」と、後者は「米経済の回復が続けば、今年後半にかけて利上げが適切になり得る」「決まったコースがあるわけではない。あくまで今後の情勢次第だ」と、語ったとされています。
今月18日に発表されたFOMC声明では予想されていた通り「忍耐強く(patient)」という文言が削除された上で、「前回の声明と同じように、政策金利の誘導目標を次の4月の会合で引き上げる可能性は低いと判断する…Consistent with its previous statement, the Committee judges that an increase in the target range for the federal funds rate remains unlikely at the April FOMC meeting」、及び「今回政策の指針(フォワードガイダンス)を修正したからといって、政策金利引き上げ開始の時期を決めたと示唆しているわけではない…This change in the forward guidance does not indicate that the Committee has decided on the timing of the initial increase in the target range」との表現が為されました。
之により最短6月16~17日のFOMCでの利上げ開始という可能性が出てきたわけですが、私としては前々から述べているように、此の6月の会合ではなく7~9月期の利上げ、多分9月が最有力ではないかと見ており、その上げ幅は僅かなものだと予想しています。
何故そう考えるかと言うと、原油価格が暴落している上にドルが非常に強いという状況下、輸入品が安くなり中々物価が上がってこないからで、イエレン議長はインフレの心配などする必要はなく、寧ろディスインフレを気にせねばならないのでは、と思っています。
之に関しては例えば、今月25日エバンス米シカゴ地区連銀総裁はロンドンでの講演で、「昨年の夏以来、ドルは主要通貨に対し23%近く上昇した」「ドル高は米輸入価格への影響を通じて明らかにディスインフレ圧力となる」と、語ったとされています。
また中国人民銀行の周小川総裁は昨日海南省で開かれたフォーラムで、「中国のインフレも鈍化しており、われわれはディスインフレのトレンドが続くのか、デフレが起きるかどうか警戒する必要がある」と述べたとされていますが、今このインフレ率は先進諸国のみならず中国等のアジア諸国でも低下傾向が続いています。
あるいは国際金融評論家の倉都康行さんは、「現実の各国の経済は様々なルートで結びついている。昨今の冴えない米国経済指標は、世界最大の経済国さえも新興国経済の低迷や世界的なディスインフレ傾向から完全に逃れられないことを示しているように思われる」との指摘を行っています。
世界中どこであれ中央銀行が政策金利を上げる理由に段々と乏しくなっているのが現況であり、上記講演でイエレンFRB議長が「今後数年間にわたって緩やかに利上げすることが適切だろう」と述べた方向で、これから後動いて行くのではないかと見ています。
即ち米国の政策金利は今後、原油価格あるいは為替水準等の行方次第で、大した上げ幅にしかならないか、ひょっとしたら当面上げないかもしれないという状況になり得るのではないかと思われる一方、現在の異常な金融状況をノーマライズ(正常化)させるべく、その時その時の経済情勢を織り込みながら僅かでも段階的に利上げして行くのだろうと思います。
翻って日本の現状を見るに、未だ相対的に出口戦略は早いように思われますが、『「2年で2%」というインフレ目標』の未達が濃厚となる中、「異次元の金融緩和」を何時までどのような形で続けるのか、そして如何にしてスムーズにゲットアウトするのかは非常に重要な問題です。
例えば今月行われたブルームバーグの調査(対象:エコノミスト34人)では、日銀により「年内に追加緩和があるとの予想は23人(68%)。うち4月は5人(15%)、7月が7人(21%)、9月が1人(3%)、そして10月が10人(29%)と緩和予想の中では最多だった。追加緩和なしは11人(32%)に上った」という結果が出たようです。
此れ以上の緩和が必要か否かは時の経済状況次第でありましょうが、金利は大変敏感なものですから一たび異次元金融緩和ストップと市場が意識したならば、金利急騰すなわち国債暴落に繋がって行き日本金融のシステミックリスクが危ぶまれる状況になりかねないとも言えません。
従って日銀は、FOMC声明文で一字一句にまで拘りながら次の手を考えつつマーケットに対するガイダンスを非常に慎重にやっているイエレン議長を生きた模範とし、あるいは時として反面教師としてよく研究すべきでしょう。慎重の上にも慎重を期して言葉を選んで政策誘導に当たらねば、難しい部分が出てくることだけは確かです。




 

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