北尾吉孝日記

『IoT時代の「走る凶器」』

2015年10月2日 21:50
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『野村週報』の15年9月14日号の記事「IoT時代の到来」に、「センサや通信機器を搭載したウェアラブル端末、各種家電等の消費者製品、製造機械、自動車等あらゆるモノがネットに接続されよう(中略)。今後は人、モノ、プロセス、データ等全てがデジタル化された世界が来る」との記述があります。
「情報通信白書平成27年版」で総務省は、「様々なモノをインターネットにつなぐIoT(インターネット・オブ・シングス)が10年で5倍に拡大するとの試算を初めて公表した(中略)。ネットにつながるモノの個数が20年に530億個になり、11年比で5.1倍になる(中略)。分野別で最も高い伸びが見込まれるのは自動車で、年平均30%の伸びが続く」との試算を7月下旬に出しました。
同時期に行われた「SoftBank World 2015 情報革命で、いま、次の世界へ」基調講演に集った聴衆を前に、孫正義さんは「40年には全世界で10兆個ものデバイスがインターネットに繋がる」と言われ、「IoT、AI、ロボットこそ成長分野」と説かれて「人類の生活に大きな影響を与え得る」と述べられたようです。
当該分野における私共の直近の取り組みとしては、先月24日のプレスリリース「自動車特化型サイバーセキュリティーソリューションを提供するイスラエルベンチャー、Argus Cyber Security Ltd.への出資に関するお知らせ」にある通りです(以下、「アルガス社」)。
当社子会社のSBIインベストメントが行った今回の出資は、「アルガス社が実施した総額26百万米ドルの資金調達に際し、売上高で世界第二位の自動車部品メーカーであるカナダのMagna International Inc.、世界最大手の保険会社であるドイツのAllianz SEを含めた数社と共同で引き受けたもの」であります。
上記プレスリリースでは当領域を巡る現況につき、次の通り御紹介しました--テクノロジーの進歩に伴い、近年製造される自動車には操縦部分、エンジン、ABS、エアバッグ、エンターテインメント等に多くのコンピューターが組み込まれ、それらは車内のネットワークを通じて相互接続されています。また、スマートフォン等の外部デバイスからの自動車への無線アクセスや、車両同士が情報をやり取りする無線通信によって安全運転を支援する車車間通信システム等、利便性を高めるため自動車が無線通信を活用する機会は増加しており、インターネット通信・多様な無線通信機能を付加したコネクテッドカーも急速に普及しています。しかしその一方で、無線通信等を通じて、車両に搭載されたコンピューターがハッキングされる等、自動車がサイバー攻撃を受けるリスクに対する懸念が高まっています。
我々が当該投資をテレビ会議で決めて直後、日本経済新聞朝刊(15年7月24日)に「自動車ハッキング対策着手、制御システム侵入、遠隔操作」と題された記事が偶々ありました。その記事中『インターネットに接続できる「つながる車」を巡る安全上の懸念が高まっている(中略)。ハッキング対策には専門の会社の知見も欠かせない』として、丁度このアルガス社が紹介されていたのです。私自身この件は近未来、人命に対するリスクに係わる大変重要な問題との認識をし、本決定を行ったものです。
此の私共の動きは昨今海外のメディア等でもかなりの反響を呼んでいて、先月ウォール・ストリート・ジャーナルやロイター等に掲載された記事では、我々の社名も新たな投資家として言及されていました。例えばまた前者の媒体記事では、「一年前まで必要性が理解されなかったソリューションが、現在彼らの最優先事項となっている」というアルガス社CEOの言葉も載せられていました。
昨今いわゆる「フォルクスワーゲン(VW)ショック」が自動車業界を震撼させているわけですが、将来的には此の「VWショック」以上に「業界を揺るがす“事件”」になり得る端緒が、実は今夏米国で既に起きていたのです。日経テクノロジーオンラインにも先月1日「Jeepハックの衝撃」という記事がありましたが、今年7月「サイバーセキュリティの専門家が実験の中でインターネットを使い走行中の車両を乗っ取る様子を公開したことを受け、フィアット・クライスラー社が、車両に搭載された無線通信ソフトウェアをサイバー攻撃予防に対応する形に更新するため米国で約140万台をリコールすると発表」したというのです。
そのハッキング動画「Hackers Remotely Kill a Jeep on the Highway—With Me in It」は先週金曜日ツイートしておきましたが、自動車に対するサイバー攻撃への対処は当業界での最優先対応事項として注視されているものです。先の総務省試算を挙げるまでもなく此の市場は今後拡大が見込まれている上に、「イスラエル防衛軍インテリジェンス部隊の最高峰とされる8200部隊の出身者を中心に2014年4月に設立され」たアルガス社は、中でも大変な事業成長が期待出来ると私は見ています。
アルガス社のソリューションというのは、一般乗用車に加え自動走行車やコネクテッドカー等その特性をより無線通信に依存する次世代型の車両も対象とし、多岐に渡るサイバー攻撃のゲート全てに対し包括的にセキュリティーを施すことが、その目的かつ特色です。既に発生している自動車へのサイバーハッキングは、自動走行車に対するものでなく通常の自動車に対して行われています。こうした切迫した現況を踏まえ、自動車メーカー各社は水面下でサイバーセキュリティー強化を推進しており、そうしたニーズに応ずべく同社ソリューションは、広く一般に流通する自動車を広範にカバーすることを念頭に置いているのです。
私共SBIグループとしても今回の出資を契機に、SBI損保の自動車保険事業では一方でITを駆使したテレマティクスを利用した保険料の設定、他方でアルガス社のソリューション活用によるセキュリティー事業展開を検討して行きたいと思っています。
現実問題として自動車という「走る凶器」とも称される「タイヤの付いたコンピューター」は、車内の人達のみならず通行人等の生命を脅かすことにも繋がりかねない重大なリスクを孕んでいます。我々人類は早急に此の問題に正面から向き合い、対応して行かねばなりません。




 

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