北尾吉孝日記

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脳神経研究で世界的に著名な医学者で第16代京大総長を務められた平澤興さん(1900年-1989年)は、「最善の努力をするについて第一に大切なことは、その目的を明らかにすることであります。一体目的は何かと」と言われているようです。
努力をして何をしたいかがなければ、誰も努力することはないでしょう。「無駄な努力」という言葉もありますが、目的なしに努力してみても徒労に終わることが殆どでしょう。やはり何か自分自身で目標または理想を掲げ、その目標・理想に近づけようと努力する時に、大きなことが成し遂げられたり真に社会に役立つことが出来るのだと思います。
例えば、業績を上げようと何時も悪戦苦闘している沢山のサラリーマンも、ある意味立派な努力を傾けていると言えましょう。それは本人自らが理想実現に向けて目標を掲げるケースもあるでしょうが、通常はそこまでは行かないものだと思います。
会社で言うと「売上目標ナンボ」「利益目標ナンボ」といった具合に、どちらかと言うと会社で上司が、そうした数字的目標を部下に与え、それに向けて部下が頑張るというのが通常の姿でしょう。
では、そうした目標の与え方について考えましょう。野村證券時代、私自身が営業チームを率いていた時に、目標を部下に対して常に与えてきました。それは時として度肝を抜くようなものでありました。
目標の与え方で私は韓非子が言うように、「形」と「名」が同じになるやり方が一番良いと思っています。それは「形(実績)」と「名(目標)」が同じになる「形名参同(けいめいさんどう)」の目標設定であって、目標が余りに低過ぎると簡単に目標を超えてしまい駄目です。
人間ギリギリの時にこそ知恵が様々出てくるもので、あらゆる知恵と工夫を振り絞り必死になって努力に努力を重ねた結果、何とかギリギリで達成できる目標こそがベストだと思います。そうやって目標を設定し挑戦し続ける中で、段々と誰も見たことのない高みへと到達することが出来るのではないでしょうか。
目標”は高くし過ぎても絶対ダメなんです。必死に頑張っても、その目標に届かなければどうなりますか?部下は何て理不尽な目標かと思ったり、諦めたり、挫折感を味わうでしょう。それは目標の設定ミスなんです。頑張れば何とか手が届くところに目標を設定すれば、ずっと諦めないでいられるのです。そういう設定の仕方が一番大事だと私は思います。
さて、こうした初め無理だと思っていた目標に到達できるようなった時、そこに自信が生まれるのです。此の自信をつけることに成功すれば、次に困難に直面しても「きっとまた次の壁も乗り越えられる」と、気持ちが揺らがないようになり、より大きな目標を達成して行く原動力になるのです。
尤も目標達成の後、全体の数字に関しては一度全てを御破算にした上で新たなる目標が与えられることになるのですが、数字がどんどん大きくなるに従って勿論そこには戦略・戦術、そして様々な知恵・汗といったものが必要になるわけです。
大切なのは苦労を厭わないこと、何が起こってもピンチだとは思わないことです。私自身これまで『詩経』の小雅(しょうが)・小旻(しょうびん)にある詩の一節、「戦々兢々として、深き淵に臨むが如く、薄き氷を履むが如」き、そろそろと一歩を踏み出すような体験を何度もしてきました。
それを潜り抜けてきたからこそ、自信が付いたのだと思います。自信とは自らに対する信頼であり、困難を克服できた時に初めて本物になるものです。「艱難汝を玉にす」という言葉がありますが、本物の自信を得たいと思うならば、敢えて困難な仕事を自ら買って出るのが一番でしょう。
自信がついてきますと、より大きなスケールで物事が考えられるようなってきます。ちっぽけな世界に生きている人は、ちっぽけな世界でしか物事を考えられないのです。之は「井の中の蛙(かわず)大海を知らず」という格言にある通りです。
自らへの信が大きくなり、世界はこんなにも広いものかと知れば知る程、未来へ向けた大きな絵(ビックピクチャー)を描けるようなってきます。之は考え方の問題かもしれませんが、このような考え方を習慣づけているならば、大局的な見方も段々と出来てくるのではないかと思います。
成長する人というのは、成功しても次の目標設定を行って、新しき何かに常に挑戦しようとしています。何時も新しい目標があり、それに挑戦しクリアする気持ちがあるわけです。決して、己の現在のレベルに満足することはありません。だから、どんどんと伸びて行くのです。
「つとめても なおつとめても つとめても つとめたらぬは つとめなりけり」という道歌があります。努力を止めたらば、成長はそこで止まります。常に努力し続ける姿勢を持つことが大事なのです。そうして努力し続けることが出来る人を社会は評価するのです。




 

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