北尾吉孝日記

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ネットマネー』2016年3月号の「巻頭インタビュー」に、タレントの加藤浩次さんの次のコメントが載っています--株で儲かる人と儲からない人、「この差」は知りたいですよね。ちなみに僕は、儲かってますよ(笑)。(中略)僕は個別銘柄も、自分が好きだなと思った企業の株を持ち続けるタイプ。結局、それが一番だと思います。
此のテーマで私見を申し上げますと、先ずは株で勝った負けたというのを短期で考えるか否かが一つあると思います。例えばウォーレン・バフェットの場合は時代の変化を先取りしたり、また時代の変化の本質を確実に捉えながら常にそうした「長期的に伸びると予想している企業」に対する運用を続けています。
「バークシャーはコカ・コーラやジレットの株主ですが、私たちはパートナーとして認識しています。投資に関する成功は、毎月の株価変動ではなく、長期的な成長で考えています」とはバフェットの言葉の一つです。彼にとって「今日や明日、来月に株価が上がろうが下がろうが、どうでもいい」話であり、「短期的な株価変動は、魅力的な価格で株を買い増せる以外に意味のないもの」です。一つの投資哲学の下、彼自身が信じられる会社をずっと探し続けて買い続け、そしてそれを持ち続けるということをやってきている彼の株式投資あるいは銘柄選択に関する考え方は、全くその通りだと思うことが多くあります。
当ブログでは嘗て、「長期投資と短期投資について」(07年6月11日)指摘したことがあります。投資期間を考えるに、それは「資金的余裕があるか」「経済情勢がマクロやセミマクロの視点からみて安定しているのか」「事業内容や経営者を見て、企業の成長性があるか」等に拠り判断する必要がありましょう。その結果長期保有できる株であれば、長期の方がパフォーマンスは高くなると思われますし、またある会社の事業や将来性に賭けるという意味での投資であれば、やはり必然的に長期にならざるを得ないと思います。私自身、自分で見て「これ!」と思った会社の株を早々売ろうとは考えません。そこに夢がありビジョンが鮮明に描かれていて、その成長可能性に対する揺るぎない自信があるならば、長期投資に越したことはないと思います。
此の長期的に伸びる企業の見定め方の一つとして、私は『IR通信』2016年3月号のインタビュー記事で次のように答えました--最も役に立つ情報は、経営者の資質が分かる情報でしょう。企業として「時間の関数」で売上が伸びて行く事業を展開していても、経営者が目先の利益を追っているようでは長続きしないからです。一方、長期的視野を持ち「世の中を良くして行きたい」といった“志”を持っている経営者は、じっくり腰を据えて事業を展開しようとします。投資家にとって最も大事なことは、経営者の資質を見極めることなのです。
金儲けしようと思って株に投資するというのでなく、結果として儲かるといった具合に考えた方が良いでしょう。例えば加齢黄斑変性(…加齢によって網膜の中心にある黄斑部が異常を来し、徐々に視力が低下して行く病気)を初めとする網膜疾患に対する治療薬開発を目的として、02年に米国シアトルで創業14年2月に東証マザーズへ上場したAcucela Inc.(以下「アキュセラ社」)という会社があります。私どもは此の創薬ベンチャーが未公開の時に投資に踏み切り2番手の大株主でありますが、その投資の決定はアキュセラ社の開発しているものの将来性とインパクト、そして窪田良という人物の経営者および開発者としての能力等々を様々見定めた上で行いました。
此の病気は欧米では失明原因の1位に位置付けられ、全世界で約1.3億人の患者がいると言われていますが、窪田さんはその治療薬の開発しかも飲み薬という形での挑戦をしています。本年6月には此の「夢の薬」のトップラインデータが発表されるということで、多くの人が失明から救われることになるかもしれない画期的な瞬間を我々は迎えられるかもしれません。脳に送られる情報の8割は目から得ていると言われており、視力を失うことで人間は悲劇的な状況に陥ってしまうかもしれないのです。我々人類を救うべく大志を抱いている窪田さんがトップの会社であるからこそ、私はアキュセラ社に投資することを決めたということであります。
私はこれからも投資分野ではサニーサイドを追い続けたいと考えています。時間の経過と共に余り伸びて行かないと思われる領域には一切投資したいとは思いません。例えば野村證券時代に私が鉄鋼のアナリストをやっていた時分この業界には沢山の会社がありましたが、今月1日の「新日鐵住金(株)による日新製鋼(株)の子会社化等の検討開始」という動きにも見られるように、当業界ではどんどんと勢力凝集が進んでいます。こうした動きが見られる業界では国際競争が苛烈を極めているもので、多くの会社が尻に火が付いているような状況にあるわけです。勿論この鉄鋼の会社に投資をしたとしても、株として儲けられるということはあるでしょう。但しそれは、私の投資哲学とは異なります。
「ミドリムシの将来性」に着目した私どもは以前、出雲充さんが創業されたユーグレナという会社の最大株主でありました。あるいは4年前ノーベル医学生理学賞を受賞された山中伸弥教授が世界初のヒトiPS細胞の樹立成功時に使用されていた培養液を扱うリプロセルという会社にも非常に早くから投資していました。つまりは未公開の内から、その前途に光明が見い出され時間の経過と共により輝いて行くと思われ、世のため人のためというを有する人がトップを務める会社に投資を行ってきましたし、これからもそうしたいのです。
私どもSBIはコーポレートミッションの一つに、「新産業クリエーターを目指す…21世紀の中核的産業の創造および育成を担うリーディング・カンパニーとなる」として、New Industry Creatorということを掲げています。これまでインターネットやバイオテクノロジー、オルタナティブエナジーやエナジーコンサベーション、あるいはアンチポリューションといった所謂「ポスト・インダストリアル・ソサエティ(脱工業化社会)」に相応しい新産業を興すべく我々は投資戦略を構築し、そういう領域を中心に据えた中で投資を実行してきました。そうすることで、我々SBIは日本の成長産業の創造および育成に貢献してきたという自負もあります。




 

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