北尾吉孝日記

『創業と守成』

2017年10月5日 19:30
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8年程前、朝日新聞出版より上梓した拙著『逆境を生き抜く名経営者、先哲の箴言』では、何人かの経営者の言を御紹介しました。偶然にもサラリーマン経営者の言は殆どなく、松下幸之助さんや本田宗一郎さんといった創業経営者の言が殆どでありました。
創業者とサラリーマン社長とは、私は全く異質なものだと思います。ゼロから業を起こし創り上げて行くプロセスと、既に出来上がったものをベースにしながら発展させて行くプロセスとでは、どちらが偉いとか偉くないとか良いとか悪いとかは別にして大きく異なるものだと思います。
創業社長は大抵10年以上の長きに亘って経営トップの任に当たっており、2期4年や3期6年といった任期で務めるサラリーマン社長とは全く違っています。サラリーマン社長の場合は、自分の任期中に恙無(つつがな)く、大過なく過ぎればよしということでしょう。綿々と受け継がれてきた経営を、少なくとも任期の間は失敗せぬように会社運営に当たるわけです。
片や創業者の場合、その創業から現在に至る迄のプロセスの大部分は、自らが知恵を出して事業の種を蒔き、リスクを引き受け汗をかきながら創り上げてきたのです。勿論、英知を結集するということも出来る範囲でやりますが、非常に限られた人材しかいない中でそれをやり、全責任を自分が背負いディシジョンメイキングして行かねばなりません。
サラリーマン経営者というのも沢山の役員がいて分担する中で最後のディシジョンメイカーとしては君臨していますが、言ってみれば未だ合議制の世界であり全権を持って会社を動かして行くような存在ではありません。上記した松下さんのみならず、例えば孫正義さんでも柳井正さんでも皆が、その手腕・才能・経験あるいは人物全てを総合した力で、それを成し遂げてきたわけです。
「創業と守成いずれが難きや」と『貞観政要』にある通り、創業には創業の難しさが守成には守成の難しさがあります。会社が成長期にあるのか成熟期にあるのか等、その発展段階に応じて夫々誰が適材かということになるのだと思います。トップに関しても勿論、創業経営者の類のタイプがずっと続くのが最良とは言い切れないでしょう。
徳川家康はしっかりと『貞観政要』を読み込んだ上、更にそれを講義させ研究していたと言われています。所謂「関ヶ原の戦い」迄の家来達とそれ以後「徳川三百年」の礎を創って行く家来達とでは当然能力・手腕の違う人間であるべきで、天下統一後は国づくりのステージに適した家来を自分の周りに置くようにしていたわけです。家康であれ誰であれ創業者は、創業と守成の難しさを認識し、違った毛色の人を集めるということが必要だと思います。




 

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