北尾吉孝日記

『一に人物、二に能力』

2020年7月9日 15:10

以前あるインターネット調査で、「あなたご自身やあなたの生活にとって、現在、必要でないと思うもの」を問うた結果、1位「学歴」(28.6%)・2位「資格」(22.2%)・3位「車」(20.7%)・4位「生命保険」(14.0%)、といったものがありました。「学歴」で言うと、「男性の全年代で1位~3位、女性の全年代で1位~2位(中略)男女とも年代が高くなるほど必要としないと回答して」いたようです。
例えば私どもSBIでは、学閥・門閥・閨閥・性別・国籍等この類の全てを問いません。ですから入社時の私の最終面接では、「学校の成績がどうだったか」や「大学の出身はどこか」、あるいは「大学を出ているか否か」等々に触れることはありません。私が多くの人を採用し登用する基準は、一に人物、二に能力や知識です。能力を見る場合は、その人の持つポテンシャルが極めて大切だと思っています。
これまで身に付けた知識・経験を重視するというよりも、その人間がどれ程の伸び代を有しているかを何時も見ようと心掛けているわけです。学歴というのは、過去のものです。此の学歴に頼って何かを示すとしたら、ある程度のIQの高低、及び勤勉家・努力家か否か、といった程度でしょう。
世の中には、全く勉強しなくてもIQがとても高く、大変な潜在力を持つ人がいます。彼等彼女等に様々な動機づけを行って、仕事に対する意欲を持たせると物凄く伸びるわけです。そういう意味で私は、此のポテンシャルが非常に大事だと思っています。更には、決まった仕事を熟(こな)すことに秀ずる人がいる一方で、決まった所からどんどん食(は)み出て行くような世界の中で力を発揮できる人もいます。色々ありますが、之も言ってみればポテンシャルということでしょう。
私が挙げた上記2点に比して、学歴・資格・車・生命保険といった類は殆ど意味を為しません。何故かと言うと、それら全ては成功すれば時間の問題で得られるからです。昔から「売り家と唐様で書く三代目…初代が苦心して財産を残しても、3代目にもなると没落してついに家を売りに出すようになるが、その売り家札の筆跡は唐様でしゃれている。遊芸にふけって、商いの道をないがしろにする人を皮肉ったもの」と言いますが、之は人物が出来ていないからです。
非常に裕福な家庭に生まれ莫大な相続財産もある人は、言うまでもなく車や生命保険など容易く手に入るでしょう。また学歴もお金で買うか、家庭教師を一生懸命雇う等して得られるかもしれません。そして資格に関しても、資金や時間に余裕があれば専門学校にも通え、楽に取得できると思われます。
しかし事の本質は、人間力と成長のポテンシャルにあるのです。それらが不十分だと、車や生命保険あるいは学歴や資格が満たされても、何時その家が没落して行くかといった話になるでしょう。此の本質を見極めることが求められます。私は之こそが、結婚相手としても一番大事ではないかと思っています。




 

『小善は徳をもたらす』

2020年7月3日 13:25

徳を持つことを望むなら、毎日善をしなければならない。一善をすると一悪が去る。毎日善をすれば、毎日悪は去る。昼が長くなれば夜が短くなるように善に励めば、すべての悪は消え去る――之は内村鑑三著『代表的日本人』で紹介されている日本の先哲・中江藤樹の言葉です。徳を積む、取り分け陰徳(…陰の徳、誰見ざる聞かざるの中で世に良いと思うことに対して一生懸命に取り組むということ)を積むのは、極めて難しいように思います。
松下幸之助さんも言われている通り、「技術は教えることができるし、習うこともできる。けれども、徳は教えることも習うこともでき」ません。徳を身に付けるのは修養に尽きるのであって「徳を高めるコツ」など有り得るはずもなく、自己向上への努力を惜しまず死ぬまで続けねばならないものです。
例えば一月程前、「松山英樹×石川遼 新型コロナウイルス感染拡大防止支援プロジェクト」が立ち上がりました。「ヤフオク!でチャリティオークションを開催、さらにスペシャル動画を配信!」とのことで、医療従事者に対する寄付等非常に気持ち良いニュースだと感じました。こうした取組みを彼らが何気なく出来るようになっているのは、やはりそれなりのある種の修養をしているからでしょう。こうした運動選手は本当に大変な毎日毎日の練習の結果で今日があるわけで、その中で人物が出来てき今回のような善行が何気なしに出来るということではないかと思います。
残念ながら、自宅の前だけを掃除し隣近所へそのゴミを持って行くようなもいます。そうではなくて自分が掃除する時に隣近所も序でに綺麗にしておく、位の親切心を有する人が人間として立派だと思います。このように自分だけでなく自分を取り巻く環境の中で、ちょっとした習慣的に様々な良いアクションを取って行ければ修養が足りていると言えましょう。
あるいは此のウィズコロナの時代において、マスクも着けずに歩いている人も散見されます。自分のことだけを考えて、人のことを全く以て考えないわけです。自分がもし感染していたら人にうつさないようにする、ということも立派な一つの善行であります。「人間の真価はなんでもない小事に現われる」とは安岡正篤先生の言葉ですが、人間の品性・品格といったものは、その日その時の何気ない立ち居振る舞いに全て現れてくるのです。
ですから我が子が小さい時に両親は、(しつけ…外見を美しくすることではなく、心とその心が表れた立ち居振る舞いを美しくすること)を出来るだけ身に付けさせねばなりません。そして自分自身は、平生のあらゆる社会生活を通じて、「昨日より今日、今日より明日、人間として立派になろう」という気持ちをつくって行く。「今日は何か世のためになることをしたか?」と寝る前に自分に問うてみ、朝起きたらば「今日は之だけ世のためになることをしよう」と考えながら生きる。此の習慣の中で、人物が鍛えられて行くのです。
七仏通戒の偈(しちぶつつうかいのげ…過去七仏が共通して受持したといわれる、釈迦の戒めの偈)の内2句、「諸悪莫作(しょあくまくさ)・衆善奉行(しゅぜんぶぎょう)」にあるように、そういうことが、善行を施すことが非常に大事にされている仏教の考え方にも繋がるのではないかと思います。最後に本ブログの締めとして、「積善」ということにつき中江藤樹の次の指摘を紹介しておきます。
――人は誰でも悪名を嫌い、名声を好む。小善が積もらなければ名はあらわれないが、小人は小善のことを考えない。だが、君子は日々自分に訪れる小善を疎かにしない。大善も出会えば行う。しかし、自分からは求めないだけである。大善は少なく小善は多い。大善は名声をもたらすが、小善は徳をもたらす。だが、世間では名を挙げるために大善を求める。すると、大善さえ小さくなる。君子は多くの小善から徳を生み出す者だ。徳にまさる善はない。徳はあらゆる大善の源である。




 

先週閉会した第201通常国会を経て、安倍晋三内閣に対する国民のサポートは大きく低下しました。各社世論調査では揃って低迷を続けており、緊急事態宣言の全面解除直前のもので支持率27%・不支持率64%(毎日新聞)というのまでありました。また18日公開された「文春オンライン6月調査」の結果を見ても、支持率21.6%・不支持率78.4%と散々でした。
これまで「安倍一強」とも言われる状況が長く続いてきたわけですが、私は「何れこうした時期は来る」と思っていました。色々な場面で、それは暗示されます。例えば、善かれと思ってやっているものの結果として、する事なす事裏目に出て中々上手く行かないような状況が続き、退陣が近づいて来ているのではないかという気がしていました。
例えば、「アベノマスク」や、「シンガーソングライターの星野源さんとのコラボ動画」にも大変な批判が巻き起こりました。あるいは「現金給付」や「検察庁法改正」、「9月入学」などは与党ともごたついた挙句、当初方針を転換せざるを得ない事態となりました。
更に、安倍さんが5月中の承認を目指すとしてきたアビガンは、税金を使って政府が買い取ったり、海外に無償供与したりしましたが、未だ承認を得られないといった有様です。先週木曜日「河井夫妻逮捕」となりました。もう何かに付けて悉くうまく行かないわけです。
昨年11月、安倍さんの通算在任日数は「明治、大正期に首相を3回務めた桂太郎の2886日を超えて憲政史上最長」となりました。そして再来月には、「大叔父である佐藤栄作の連続在任記録も上回ること」になります。来年9月までの自民党総裁任期を全うするかどうかは分かりませんが、一つの時期が来ているというふうには見ることが出来、また恐らく安倍さん御自身でも今ある意味辞め時を探しているのかもしれません。功成り名を遂げた安倍さんは、晩節を汚す前に辞めた方が良いと思います。
古代中国では天命が下った人が天の代理として、此の世界を支配すると考えられており、その代理が「王」であり「天子」であったわけです。その王が天意に沿わなく、今の政治は良くないと見ると、天は警告を発するわけです。当時はその警告は天変地異の形を取ると考えられていました。その警告にも拘らず政治を改めないと革命が起こり、政権が離れて行くのです。今回のコロナ禍とその問題への対処についての批判もこうした天の警告かもしれません。
ではポスト安倍が誰になるかと言えば、政治の世界は本当に一寸先は闇であり、思いも寄らぬ力学が働かないとも限りません。例えば今月6日リツイートした記事中にも、石破茂さんが「安倍色の強い議員以外の挙国一致内閣」を目指すとして、可成り穿った見方とは思われるものの次の通り書かれていました。
――二階(俊博)氏・菅(義偉)氏が、“選挙の顔”として石破氏を担ぐ。石破氏も、両氏を政権の中核として処遇し、官邸・党にグリップを利かせる。そして、次世代を担う人材を閣内で競わせる。小泉純一郎元首相のように、派閥の論理を超えた“適材適所”の内閣を作るだろう(ベテラン政治部記者)。
今月8日、二階幹事長は石破さんにつき「我が党でも最も古い政治家、最も経験豊かな政治家の一人であることには違いない。大いに期待をして、将来さらに高みをめざして進んでいただきたい期待の星の一人だ」と言われたようです。今、此の「8~9月に清新な党役員人事と内閣改造を行い、その直後の解散が考えられる」(自民党の若手議員)等々の見方も報じられますが、何れにせよ二階さんが引受けられた9月の石破派パーティーでの御講演内容が注目されます。
いわゆる良い状況であれば、「岸田禅譲」も有り得たかもしれません。しかし今のコロナの状況は、石破さんがダークホースとして出てくることも有り得る乱世に当たります。尤も、石破さんは各種メディアによる「次の総理に相応しいのは誰か」といった世論調査で、非常に根強い支持を得続けている人物です。ある程度大所帯の複数派閥の何処かが「石破で行こうか」というふうにでもなったらば、此の変わり目に石破内閣発足に導くような力学が働き得るのかもしれません。




 
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