北尾吉孝日記

大企業病について

2007年6月28日 15:35

組織が大きくなると大企業病に陥るとよく言われています。
大企業病とは組織が硬直化し、官僚的になっていくことを指します。
これは歴史的に言われていることであり、残念ながら人間が主体となって作られる組織における一つの特徴的傾向かもしれないですね。

大企業病になってしまうと、本来外に働くエネルギーが内に働いてしまいます。
具体的にはどういうことなのかというと、例えば企業内で社長派と会長派に分かれるとか、あるいは社長を狙う二人の副社長の間に派閥が出来るとか、そういったことですね。
明らかに外に向くべきはずのエネルギーが、内の派閥闘争に向いています。
あるいはセクショナリズムに陥って、「これはあなたの仕事、これは自分の仕事、これはまだ誰の仕事か決まってない、だからやらなくていい」というような状態になり、従業員それぞれが自分の領域以外のことはしないし、領域は絶対に脅かされないように守ろうとするのです。

そこで組織を作るときに、そういった大企業病に陥らないような形を考えましたが、それが企業生態系なのです。
SBIグループは全体で1,600人を超える組織体になりましたが、最大の事業を誇っているイー・トレード証券でも契約社員等を入れて200名超というような状況です。
一人の人間が管理できる範囲は200人から300人と言われていますが、全てその範囲に抑えているのです。
そしてさらに日々の業務を統括するCOOと全体的な戦略を司るCEOとの役割を明確にしていき、その中でグループの統一性ということも保たれるのです。

したがって多くの会社をグループ傘下におきながら、同じベクトルでシナジーを相互間に働かせることが出来ます。
そして大企業病に陥らないような状態、しっかりと管理が出来ているという状態で、コンプライアンスの徹底化を図り様々な問題やリスクを減らすということが出来るのです。
さらにグループ全体として金融業に従事しているということで、より高い倫理性が必要とされるということを僕は従業員達に常に言いながら成長を促しています。

大企業病にならない企業をつくるためにはこのようなことも非常に大事なのです。




 

コムスンやNOVAの話が新聞紙上やテレビを賑わしていますが、私はどちらもビジネスとしてもたないモデルだと考えております。
コムスンの場合は高齢化でお客様が増えていく状況下で、介護ホームとヘルパーが常に不足するという状態になり、そして介護ホームを作れば作るほどヘルパーが更に不足していきます。
恒常的にヘルパーが不足になるから、あのような形で虚偽の報告をし始めるのです。
一方、NOVAの場合も教室が増えれば増えるほど、講師の数が足らなくなる。
そして授業の予約が取れないということになり、消費者と事業者の間で必ず問題が起こるようなビジネスモデルになっているのです。
したがって、僕から見ればこうしたビジネスモデルの結果はもう分かっていたのです。

事業を拡大していこうとしたときにそのビジネスを遂行するための主役、あるいは主要素となる大きなものが欠如している場合があります。
例えば鉄を作るのに鉄鉱石以外のものが全部そろっていても鉱石がなければ鉄は作れません。
あるいは仮に鉄鉱石が揃っているとしてもコークスが足らなかったら、鉄の量はわずかしか出来ないのです。
規模が拡大するとこのような状態になる事業には致命的なボトルネックがあるということです。

コムスンの件に戻りますと、仮にヘルパーが足らないということになれば、ヘルパーの給料が上がるということになります。
そうすると国からの支援だけでは全然足らないということになります。
このように事業を遂行する中で一つの大きなボトルネックが出てくるというビジネスを、僕は駄目だと考えています。
よくある話ですが、小さな規模では上手く機能するけれども大きな規模になるとボトルネックが顕在化し、機能しなくなる。
昔から「屏風と事業は広げれば倒れる」、このように言われているのです。

このようにならない為には、考え方として規模が拡大しても、致命的なボトルネックが生じてこないようにしないといけないのです。
例えばネット証券で取引量が増えた場合、これはサーバーを増やせばいいだけです。
サーバーは無尽蔵に増やすことが可能なのです。
サーバーの数が増えても雇用はそんなに増加させなくていいです。例えばイー・トレード証券ではたった140人ぐらいの正社員でやっているのです。
それでもイー・トレード証券は野村證券を抜いてブローカレッジにおける日本一のシェアを誇る状況になっているのです。
したがって事業を始めるは、それが大きくなったときにその事業の主要なものや主要な構成を担うものが不足するなどの致命的なボトルネックが起こらないようにする。
それがまず前提となってくるのです。




 

昨日(6月26日)の日経新聞の一面に、三菱UFJフィナンシャル・グループが松井証券に15%超の出資をすると出ていました。
紙上には手数料競争や新興市場の低迷などによってネット証券の業績が頭打ちとなったことによるネット証券の再編と出ていますが、僕のとらえ方は下記のようなものです。

これは日本における「ユニバーサルバンキング」への移行をにらんだ動きだと思うのです。
ユニバーサルバンキングとは銀行、証券会社の垣根を無くした金融機関を言い、ヨーロッパでは基本的にユニバーサルバンキングが主流です。
今回の三菱UFJフィナンシャル・グループが松井証券に15%超の出資をするという記事は、日本におけるユニバーサルバンキング体制への流れを先取りしていこうというものであり、この制度を導入するために日本でも各審議会で議論がされているのです。
僕もこうした動きが近い将来に来るものと思っていて、その動きの前にSBIグループはネット銀行をつくり、制度が導入されるのに備えて早く銀行、証券会社のシナジー効果を発揮しなければならないと思っていたのです。
幸いネット銀行の準備は順調であり、おそらく上期のうちには開業できるものと思います。

本来、金融商品は全てリスクとリターンの関係で説明できるものであり、その観点からすれば銀行、証券会社、保険会社を別々に経営していく必要はありません。
むしろ、あらゆる金融商品は全て同一のところで扱い、「one stop」で提供することが顧客便益の向上という点では望ましいのです。
そうした基本的な考え方で、SBIグループでは新たに銀行、損保、生保を設立することを必要不可欠であると考え、それらの設立の準備にとりかかったのです。
今年度中には全て揃う見込みです。




 


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