北尾吉孝日記


先日9月14日でしたか、アメリカのCBSのインタビューにFRB前議長のグリーンスパン氏が出ていました。
その中で、彼は去年の1月末に辞める直前まで、サブプライムローン問題の重大性について、認識をしていなかったということを告白していました。

私としてはこの発言は非常に意外なことでした。
何故、グリーンスパン氏ほどの方がこの事の重大性を認識していなかったのでしょうか。
私が分析するに、彼は3つのことを見逃していたのではないのかと思います。
まず一つは、証券化“Securitization”。
あらゆるものが証券化される時代になってきていますが、このサブプライムローンについては、これが証券化されて一部が組み込まれた形で、例えば、ABCP・資産担保コマーシャルペーパー(asset backed Commercial Paper)あるいは、RMBS・住宅ローン証券化商品(Residential Mortgage Backed Securities)、あるいはCDO・資産担保証券(Collateralized Debt Obligation)、CDOもいくつかタイプがあるのですが、こういった証券化について、彼の認識が甘かったのではないかという気がします。
このサブプライムローンに関しては、言わば腐ったリンゴを一部組み入れたような証券化商品が生み出されていったのです。

CDOは80年代の末ぐらいに出てきた証券化商品の一つですが、この直近3年ぐらいで一兆ドルを超えるほど、急激に伸びてきたのです。
ですからグリーンスパン氏も「サブプライムローンなんて150兆円程度であり、全米の住宅ローン残高のたった14%しか占めていない。たいしたことないだろう」と考えていたのでしょう。
しかし、その150兆円のうち80%は加工されて証券化商品になり、そしてそれが二つ目のキーワードであるグローバルに拡散されてきたということなのです。
ですから、その証券化商品を持っている金融機関というのは、アメリカ国内はもちろんのこと、ヨーロッパ・アジア、中東、ありとあらゆる国々の金融機関だったのです。

そして、三つ目のキーワードがレバレッジです。
レバレッジというのは「てこ」のことです。
金融の世界では、これはエクイティだけではなくて、借金を利用して資産運用の効果をあげていく、というコンセプトです。
このレバレッジを盛んに利用して、銀行から借り入れをし、そういった証券化商品を買い、儲けていたのです。
日本の低金利もこういったサブプライムローンを含んだ証券化商品を買っていた金融機関に利用されていました。そして日本のようなほぼゼロ金利状態のところで円を借りてドルに換えて運用し、高い金利商品で儲け、清算の時にはまた円が安くなっているので為替からの差益もまた得ていました。
これが円のキャリー取引です。

あるいはABCP、これはコマーシャルペーパーです。
これは発行体が投資家に対して、基本的に短期で発行します。
ところが投資家はサブプライムローンがこのように問題になってくると誰も買いません。しかし、その背後でCPを出したときに銀行との間で「万が一のときは銀行さんが全部引き受けてください」というような契約を結んでいるのです。
通常は今回のようなサブプライムローン問題は起こらないので、銀行は簡単にそういう契約を結んでいたのです。
100億の契約を結んだら、100億全部の手数料を取れますが、事務的なミスなどで問題が起こるのは多くとも10%に満たなかったわけです。
したがって銀行とすれば、大きなリスクなしに大儲けできる話なのです。
だからABNアムロなんかは1000億ドル以上もそういったことをやっていたのです。
今回のような大問題が起こると、買い手が見つからないので、契約を結んでいる銀行に引き取ってくれということになります。
そして流動性が不足しだしますので、当然インターバンクのマーケットからお金を調達しなければいけなくなります。
しかし、その調達がまた出来ません。
こうなってくるとliquidity crisis(流動性の危機)という状況になるのです。
だから欧州は最初に中央銀行がお金をマーケットに入れるということをやりました。
アメリカでも同じです。
そういう意味ではレバレッジと、そしてもう一つ繰り返していうならばリクイディティの問題ですね。
格付け機関がAAAを出してもこういうことが起こると全く格付けの意味がありません。
AAAだから売れるだろうと思っていたものが途端に売れなくなります。
これが相場の怖いところなのです。

わがグループでは今回のことに関して1円の損もありません。
私はそういう投資は一切やらないからです。
やるとしても金利が下がっていく局面でしかやりませんし、少しでも上がりだしたら全部売却するでしょう。
今回の失敗を見ていますと、多くの金融機関の担当者に担当期間中に出来るだけ利益をあげたいという欲が見えます。
皆それぞれ教育をうけ、この世界で長い間経験を積んできた方々ですので、もう少し判断が出来ても然るべきだったと思うのですが、それができなかった。
何故か。
それが私利私欲なのです。
我々は、今回のことは他山の石として肝に銘じておくべきですね。




 

今後の政局について

2007年10月2日 9:12

先日福田内閣が組閣され、漸く国会の機能麻痺状態も正常化される目処が付いてきたようです。
国会の麻痺状態が終結してくれることは株式市場にとっても良いことですが、短期的とは言え、政治の空洞化を招いた安倍前総理に対して、私は健康の問題だから仕方ないとは簡単に割り切ることはできません。
ある種の憤りを感じました。
閣議も出席し、衆議院での投票もできたわけですから、あのタイミングでの責任放棄というのは、一国の総理として許されるべきではないと思います。
8月10日の日記に「出処進退について」と書かせていただきましたが、やはり安倍前総理は出処進退のタイミングを誤った結果として、このようなことになってしまったようです。
改めて出処進退の大切さを私自身も痛感致しました。

おそらく今後の政局の焦点になってくるのは、テロ対策特措法はさておき、年金問題と消費税問題を含めた税制全般についての問題、それから様々な格差の問題、そういったことではないか思います。
とりわけ消費税の問題は経済に与える影響がきわめて大きく、デフレというある種の病気からの病み上がりの日本経済にとって、消費税の税率アップはこたえるのではないか心配をしております。
アップの幅がどの程度になるのかという問題もありますが、たとえ僅かな増税であってもまだ回復途上の消費に与える心理的影響は非常に大きいと考えられます。

政府の財源確保のために増税は免れられないと言われておりますが、個人的にはまず始めに切るものを切るということが重要だと思います。
これまでは増え続ける国家経費を、国家経費膨張の原則に従ってそのままにしてきました。
しかし、これからは「入るを量って出るを制す」の大原則に立ち返り、余分な支出を出来るだけ省いていくという方針に切り替えていくべきだと思います。
耶律楚材の言葉にも「一利を興(おこ)すは一害を除くにしかず。一事を生(ふ)やすは一事を減らすにしかず」とありますように、省くことの意味を噛み締めていかなければなりません。

福田内閣の陣容を見ますと、派閥領袖を中心に据えており、自民党としては安定感のある陣容となったと思います。
自民党としては万全の体制を整え、宿敵である民主党との攻防戦に臨むことになります。
私としてもこの後どうなっていくのか大いに注目しております。




 

各国の金利政策の動向

2007年10月1日 18:03

今回のアメリカのサブプライムローンの影響を受けて、本来主体性を持つべき各国の金利政策も独自のものが打ち出せない状況になっています。
例えば、ユーロ市場においては局面下にあったにも関わらず、サブプライムローンの影響を受けて金利を上げることを断念しましたし、日本においても、上げたいのはやまやまであったが結局日銀は金利を上げませんでした。
そうした状況下で、アメリカはいよいよ公定歩合を下げることに踏み切りました。
しかも大幅に0.5%です。
そういった意味では、サブプライムローン問題は予想以上に大きな影響を世界各国に与え、その結果として各国の金利政策は少なくとも短期的にはその影響を受けざるを得ない局面になっているということです。

アメリカは、大幅な公定歩合の引き下げに踏み切りましたが、状況によれば再度の金利の引き下げも有り得るのではないかと思います。将来的には大きなインフレの種を撒いたことを意味すると思います。サブプライムローン問題の後遺症は世界的な過剰流動性とその結果としてのインフレとなって現れてくる可能性もあると思っています。
そして、それはやがて株式市場の活況へと繋がっていくと考えられます。ですから証券市場で商売をする者としては、これはある意味で我々のビジネス上プラスです。

こうした一時的な金融現象に対して一時的な効果をもたらすために中長期的には必ずしも経済全体に良くないと考えられる策が緊急措置として採られた場合、そのマイナスの影響が時間の問題で必ず出てくるというのが経験則です。




 


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